モーツアルト:ピアノソナタ 第8番イ短調 K.310
ベルク:ピアノソナタ op.1
リスト:ピアノソナタ ロ短調 S 178
バルトーク:ルーマニア・フォーク・ダンス BB 68
エレーヌ・グリモー (ピアノ)
2010年録音 DG
今度の録音は? K.310?! 期待したけれど心配でもあった。モーツアルトでこれを弾いてしまって変に出てしまうと、少なくとも私にとっては彼女のレパートリーとして台無しになってしまうのだけれど。この有名な傑作、大ピアニストもあんまり録音していない。
さて音が出てくると、最初のフレーズ、こんなに表情つけたっけ、でも進んでいくうちにピアニストの、変な言い方だが、内的なインテンポ、つまり聴いてるこっちに一度入ってきてから納得できるテンポ、それが続いていって、つかんで離さないという見事な進行、1楽章が繰り返しに入ってくると、、、そう1楽章で泣けてくるというのはめったにない。
こうなれば、もう作曲者が見事につなげた2楽章、3楽章が悪いはずはない。
この曲、もう40年近く前からしばらく、あの晩年のリパッティのモノラルが一番のお気に入りだった。さてとレコード棚を探して取り出し、かけてみると、まずかなり早いテンポ、そして繰り返しが省略されているのか、あっという間にフィナーレになってしまう。昔は録音媒体の時間を考えて録音ではこうしたんだろうか。それでも緊密にまとまった感じはあるけれど。
最近に発見されて発売されたグルダもいいけれど、全体の中でK.310だけテープの状態が悪いようで、グルダ本人もこれでいいと思ったのだろうかは疑問あるところ。
次のベルク、これをここに置いたのはセンスがいい。何か曲想も連続性を感じるし、こうしてみるとK.310は新しい。
そしてリスト、グリモーならこの曲を楽に弾くテクニックはあるだろう。この曲の技巧を全面に出すよりはむしろリリックな面をじっくり聴くことができる。それでいてことさら無理にロマンティックというのでもなく、30分近くある単一楽章のソナタを初めてといっていいくらい楽しんで聴いた。
この曲をベルクとバルトークで挟むというのも、地域性もさることながら、面白い。
年末までこのアルバムを何度も聴くだろう。贔屓ということもあるけれど、今回はそれだからいち早く楽しめたという恩恵。
ところでアルバムには「レゾナンス」というタイトルがついている。なるほど。
前に「リフレクション」とうのがあり、シューマン夫妻、ブラームスの曲からなっていて、こっちはちょっと意味深。