ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 作品77
クララ・シューマン:ヴァイオリンとピアノのための三つのロマンス 作品22
ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ
クリスチャン・ティーレマン指揮 シュターツカペレ・ドレスデン
ピアノ:アリス=沙良・オット
待望の彼女の新録音である。なにしろあのショスタコーヴィチ の印象、それもCDとその前のジンマン指揮N響のTV放送でひっくり返った彼女の協奏曲だから。
ポピュラーなレパートリーの中からブラームスというのは納得いく。美しいが第三楽章に向かっての盛り上がりは、激しい印象が強い。
が、しかし、その予想は見事に外れる、まあいい方向に。冒頭から繊細な音で、きわめてゆったりと(ゆったりとしたヴィヴラートをそなえ)、たっぷりと余裕ある器に音楽をたたえて進んでいく。だからフィナーレもちからが飽和したという感じではない。
それにはオーケストラも効いているのだろうか。すべてのパートがくっきりとよく聴こえ、全体としてソロによりそっている。指揮もいいのだろうが、ドレスデンのオーケストラは、西側に出始めたころのあのカラヤン指揮「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(ワーグナー)で驚かせたように、こういう性格を持っているし、録音もいいのだろう。
クララ・シューマンの「ロマンス」、ブラームスの曲にはクララへの憧れがあるのかもしれない、と勝手に想像させてくれる効果(?)は悪くない。
ピアノのアリス=沙良・オットは少し前からよくきく名前だが、実際に音を聴くのは初めて。いいデュオだった。
バティアシュヴィリはショスタコーヴィチのCDでも協奏曲にカップリングされた曲でエレーヌ・グリモー(ピアノ)と共演しているし、そのグリモーも先日カベッタ(チェロ)とデュオのアルバムを出している。
なにかこのところ音楽の「女子会」とでもいう動きが目立っている。面白いアルバムが出てくればこれは悪いことでなく楽しい。
そういえば彼女たちの2世代前くらい、今の音楽界の重鎮たちが気鋭のころ、なかよく公演したり録音したりしていて、「ロンドン・マフィア」と呼ばれていたことを思い出す。ロンドンがいいライブ市場で、いろんな出身国から集まってきていたからだが。