メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

中野信子「サイコパス」

2017-08-07 14:57:22 | 本と雑誌
サイコパス 中野信子 著  2016年11月 文春新書
 
タイトルにあるサイコパスは、あの「羊たちの沈黙」などに出てくるキャラクターの関連で目にしてきたが、著者がよく出てくる「英雄たちの選択」(NHK BS)でも時々このタイプへの言及があった。
 
著者によれば、もともとこのサイコパス(psychopathy)とは連続殺人犯などの反社会的な人格を説明するために開発された診断上の概念なのだそうで、だから本書でそのさまざまな側面と脳の各部との関連、先天的なものか後天的なものかなども含めたいくつかの統計的なデータから推定される相関などをもとに、これについて語られるが、科学的な因果関係について確定的なところはまだこれから、ということのようだ。
 
したがって著者も、人間のいろんな面、タイプに関して、納得するところが多い説明は可能だが、これがあまり確定的に扱われると、差別、虐待などに流れることはよく認識している。
 
世の中には、あとで考えてみればこういうタイプの人たちがいて、あの人はそういところがあるのかもしれない判断すれば、リスク回避もできるし、あまりくよくよしない、という受け止め方が今はせいぜいだろう。
 
TV出演からも想定されるように、説明はわかりやすい。
まあ私もここでうかつなことは言えない。サイコパスと思われる人たちも、世の中で役立つ仕事に向いていることもあり、著者も「好むと好まざるとにかかわらず、サイコパスとは共存してゆく道を模索するのが人類にとっては最善の選択である」と言っている。


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