メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

カラヤンの「運命」(1957)

2019-12-23 09:08:51 | 音楽
カラヤン指揮ベルリン・フィルのベートーヴェン「運命」1957年11月3日 旧NHKホール
 
今年はカラヤン(1908-1989)没後30年、もうそんなに経ったかという思いがあるが、このところNHK交響楽団の定期演奏放映の一部で、1957年来日時の演奏が見聴きできる。これは12月15日のもの。
 
解説していた指揮者高関健はコンクールで優勝したのち数年カラヤンの助手としてその活動をつぶさに見たようで、そのもようは興味深かった。たとえば、「運命」は最初の四つの音の動機で全体ができているわけだが、その最初の一撃に非常に細かい指示があり、それは例のないものだったらしい。楽譜から見てこうならなければという分析、理解とそれを実現する信念というか、すさまじいものだったという。
 
そういう話しを聴くと、今回放送された第一楽章、第三第四楽章(残念ながら第二は入らなかった)の映像は本当に感動的なもので、その後よく言われた格好よさ、見栄えのよさ狙いなどとは全く違う、この音楽の解釈、実現に奉仕するまったく無駄のない動き、そうであるからこその美しさであった。あの両手が広がったときの大きな鳥のような動き、この時はまだ若かったからなおのことであったのだろうか。
 
今後、さらにいくつか見られたらと思う。12月22日には同日の「マイスタージンガー前奏曲」をやったらしい(これから録画を見る予定)。
 
上記の出だし、アインザッツで言えば、今まで聴いたもので印象的なものに、フィルハーモニアを指揮した「プロムナード・コンサート」(1960)の第一曲、ワルトトイフェルのあの「スケーターズ・ワルツ」で、頭のアインザッツ、オケの音が出る前に、なんとなく団員がすっと入っていく雰囲気が聴き取れる、こういう楽しみはなかなかない。
 
もう一つはベルリンフィルを指揮したメンデルスゾーンの交響曲第四番「イタリア」の最初、オーケストラの上に一瞬美しい音の雲がすっと浮かんだ感じがする。

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