リヒャルト・シュトラウス :歌劇「ナクソス島のアリアドネ」
指揮:マレク・ヤノフスキ、演出:エライジャ・モシンスキー
リーゼ・ダーヴィッドセン(アリアドネ)、ブレンダ・レイ(ツェルビネッタ)、イザベル・レナード(作曲家)、ブランドン・ジョヴァノヴィッチ(バッカス)
シュトラウスの作品はこの数年よく観ているが、これは久しぶりというかこれだという印象があまり残っていない。
この前見たのはと探してみたら、数年前に最初の版と改訂版を続けて観ていた。
今回は通常の改訂版で、貴族の邸宅でオペラを上演する前のどたばたがあり、結局オペラに加え最初はなかったコメディが一緒に上演されるという、2幕からなるものである。
オペラとして楽しむには、それにメトロポリタンであればやはりこっちだろうか。
最初の幕ではここしか出ない作曲家の歌唱に焦点があたるが、イザベル・レナードは役にぴったりで、このさわぎからも本編のアリアドネを想像させ、聴かせる。女声で男性を演じるいわゆるズボン役だが、風貌もぴたり。シュトラウスはズボンが好きだなあと思う。
ナクソス島で生き延びたけれど一人になってしまい嘆いているアリアドネはリーゼ・ダーヴィッドセン、この長丁場の嘆きの歌が聴かせる。先入観で可憐な役かと思っていたが、これはワーグナーも歌うかと思わせる強い声とスタミナが必要で、これまでにもそういうソプラノ、ジェシー・ノーマン、モンセラ・カバリエなどが演じている。なおダーヴィッドセンによれば彼女のティアラはかってノーマンが使ったものだそうだ。
ツェルビネッタもその曲芸的で長いコロラトゥーラで聴かせるが、スピーディでコミカルな動作とも、ブレンダ・レイは見事だった。
この演出では、あえて二つの劇をひねった組み合わせで面白くみせようとはせず、あくまでアリアドネに焦点をあて、舞台の奥の大きなでも目立たない引き戸からツェルビネッタなどコミカルな連中を出入りさせ、観客の眼と耳がうまく作品を鑑賞できるようにしていた。だからといって変化に乏しいものではなく、そこが今回の収穫。
ツェルビネッタたちや、女三人の精たちの演技を見ていたら気がついたのだが、これって「魔笛」(モーツアルト)の巧みな引用(むしろ借用?)ではないだろうか。私が嫌いなザラストロがいないのもいい。
終わってみればヤノフスキの指揮は、小編成的な雰囲気で流れがよく、歌手たちが歌いやすそうなバックアップ、これはこの人ならではと思わせた。
それにしても、初版と改訂版の間には第1次世界大戦があったわけで、シュトラウスはどのような気持ちでこれを書いていたのだろうか。
指揮:マレク・ヤノフスキ、演出:エライジャ・モシンスキー
リーゼ・ダーヴィッドセン(アリアドネ)、ブレンダ・レイ(ツェルビネッタ)、イザベル・レナード(作曲家)、ブランドン・ジョヴァノヴィッチ(バッカス)
シュトラウスの作品はこの数年よく観ているが、これは久しぶりというかこれだという印象があまり残っていない。
この前見たのはと探してみたら、数年前に最初の版と改訂版を続けて観ていた。
今回は通常の改訂版で、貴族の邸宅でオペラを上演する前のどたばたがあり、結局オペラに加え最初はなかったコメディが一緒に上演されるという、2幕からなるものである。
オペラとして楽しむには、それにメトロポリタンであればやはりこっちだろうか。
最初の幕ではここしか出ない作曲家の歌唱に焦点があたるが、イザベル・レナードは役にぴったりで、このさわぎからも本編のアリアドネを想像させ、聴かせる。女声で男性を演じるいわゆるズボン役だが、風貌もぴたり。シュトラウスはズボンが好きだなあと思う。
ナクソス島で生き延びたけれど一人になってしまい嘆いているアリアドネはリーゼ・ダーヴィッドセン、この長丁場の嘆きの歌が聴かせる。先入観で可憐な役かと思っていたが、これはワーグナーも歌うかと思わせる強い声とスタミナが必要で、これまでにもそういうソプラノ、ジェシー・ノーマン、モンセラ・カバリエなどが演じている。なおダーヴィッドセンによれば彼女のティアラはかってノーマンが使ったものだそうだ。
ツェルビネッタもその曲芸的で長いコロラトゥーラで聴かせるが、スピーディでコミカルな動作とも、ブレンダ・レイは見事だった。
この演出では、あえて二つの劇をひねった組み合わせで面白くみせようとはせず、あくまでアリアドネに焦点をあて、舞台の奥の大きなでも目立たない引き戸からツェルビネッタなどコミカルな連中を出入りさせ、観客の眼と耳がうまく作品を鑑賞できるようにしていた。だからといって変化に乏しいものではなく、そこが今回の収穫。
ツェルビネッタたちや、女三人の精たちの演技を見ていたら気がついたのだが、これって「魔笛」(モーツアルト)の巧みな引用(むしろ借用?)ではないだろうか。私が嫌いなザラストロがいないのもいい。
終わってみればヤノフスキの指揮は、小編成的な雰囲気で流れがよく、歌手たちが歌いやすそうなバックアップ、これはこの人ならではと思わせた。
それにしても、初版と改訂版の間には第1次世界大戦があったわけで、シュトラウスはどのような気持ちでこれを書いていたのだろうか。