「007/カジノ・ロワイヤル」(1967、英、134分)
監督:ジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズ、ロバート・パリッシュ、ジョセフ・マクグラス、ヴァル・ゲスト、製作:チャールズ・フェルドマン、原作:イアン・フレミング、作詞:ハル・デヴィッド、音楽:バート・バカラック
ピーター・セラーズ、デヴィッド・ニーヴン、デボラ・カー、ウイリアム・ホールデン、ウディ・アレン、ウルスラ・アンドレス、テレンス・クーパー、ジョン・ヒューストン、シャルル・ボワイエ、オーソン・ウェルズ、ジャン=ポール・ベルモンド、ジャクリーヌ・ビセット、ジョアンナ・ペティット、ピーター・オトウール
先日見たカジノ・ロワイヤルに先立つこと約40年に作られた作品。見ればすぐにカジノ・ロワイヤルのそして007シリーズのパロディだとわかるが、こっちの方が先だったという奇妙な事情。どうも「007/ドクター・ノオ」(1962)から一連のシリーズを手がけた製作陣がカジノ・ロワイヤルの映画化権を取っていなかった、それはまずこのシリーズ第1作が米国でTV映画化されていたということらしいのだが、そこをついてこの製作者がイアン・フレミングから許可を取ったらしい。
今回のダニエル・クレイグのものを見た後で、改めてこの作品を見ると、それでも面白い。これかなりは、カジノ・ロワイヤル以外の007シリーズをパロディにしているんだろうし、またおそらくこのようなハチャメチャ映画の常道をいっているのだろう。
能天気に見れば暇つぶしにはなる。そして豪華キャスト。
マイク・マイヤーズがオースチン・パワーズで007パロディをやりたかった、そしてそのカメオ出演に有名俳優が出たがったのもわかろうというものである。
この俳優達がどんな人達で、どういう作品に出ていて、相互にどんな関係があったか、もっと知っていると面白いのだろうが。
ウディ・アレンはまだ若くて映画デビューに近いが、企画にもかんでいたらしい。
ウルスラ・アンドレスは映画第1作「007/ドクター・ノオ」のボンドガールであるというのも、えげつないといいえば、、、
この前に作られたシリーズは「007/ドクター・ノオ」(1962)、「007/ロシアより愛をこめて」(1963)、「007/ゴールドフィンガー」(1964)、「007/サンダーボール作戦」(1965)であり、これらのパロディ部分は気がつかない部分にもっとあるものと見られる。
感慨深いのは、あのデボラ・カーがここまでやるの? これはカメオではなくて、かなりそれまでのイメージと違うもので、、、
そしてジャクリーヌ・ビセットがミス・太ももという文字通り記憶よりはかなりふっくらした娘役、「ドミノ」の母親役と比べると、ああ、、、
そして、60年代のパリ・ファッションそのものの、衣装、ヘア、メイク、これはなかなか記録に値するものともいえる。
また、背景の美術はなかなか凝っていて、いろいろなアートの流派をちりばめているのも、遊びとして楽しい。
もちろんこの映画が現役なのは、何といってもバート・バカラックの音楽であり、このバカ騒ぎも、しっとりとしたラヴシーンもカヴァーできる天才の、一気に世に出てきた勢いは、際立っている。 演奏しているのはハープ・アルバートとティファナ・ブラスだし、「恋の面影」(The Look Of Love) を歌っているのは「この胸のときめきを」のダスティ・スプリングフィールドだし。
「007/カジノ・ロワイヤル(CASINO ROYALE)」(2006年、米・英、144分)
監督: マーティン・キャンベル、原作: イアン・フレミング、脚本: ニール・バーヴィス、ロバート・ウェイド、ポール・ハギス、音楽: デヴィッド・アーノルド、主題歌: クリス・コーネル
ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、ジャンカルロ・ジャンニーニ
こうしてジェームズ・ボンドは007となった、ということが初めて映画で描かれたということなのだろう。だから、冒頭の危機を咄嗟に乗り越えたあと、「007/ドクター・ノオ」(1962)のタイトル・シーンが出てくるのは、それを示すと同時に、これまでのシリーズの関係者に対するオマージュなのだろう、と受け取った。
全体としては、この2時間超を飽きさせずに見せており、アクション娯楽編としてよく出来ている。監督・編集のテンポもいい。
ダニエル・クレイグのニュー・ボンドも決まった時には非難ごうごうというのが、出来あがってみればみんな黙ったというのもよくわかる。
がしかし、彼は体は強そうだし、歳も30代なのだから、もう少し敏捷であってほしかった。最初のアフリカ、建設機械の中でチェイスを続けるシーン、どう見ても逃げる方の俳優の見事な体のこなしに比べるとあまりにも重い。
これまでもこんなに長いアクションシーンはなかったのではあるまいか。ヴェニスのところも長いし。
カジノのポーカーの場面。ポーカーはあまり知らないけれども、この長丁場に、休憩時間に行われるエピソードを挟んで展開するが、あの「シンシナティ・キッド」(1965)のスティーヴ・マックイーンを覚えている人は皆あれを思い出してしまうから、ちょとと甘いかな、ボンドもル・シッフルもと思ってしまう。
今回のプライム・ボンド・ガールのエヴァ・グリーンは、製作者の期待に応えているばかりか、ボンド、そして見るものに感情移入させるに充分な素材であり、演技である。
それにしても、ジェームズ・ボンドという役は、そしてストーリーはもう少しいいかげんな、例えばアクション、女たらしぶりが似合うのではないだろうか。「こんなことありえない、、、」というアクション映画でも、このごろのものは、妙に苦心して、CGなど使ってリアルにしたがる。
思えば、原作の東西冷戦という背景は、それがあまりにも圧倒的な力を持っていたために、そのパロディとしてのボンド・シリーズが可能であった、とは言えないだろうか。
今、東西冷戦を扱った小説がそのまま映画化されにくい、それは何なのか、よくわからないが。
マティス役のジャンカルロ・ジャンニーニ、どこかで見た顔と思って調べてみたら、ヴィスコンティの「イノセント」(1975)の主役だった。これはスクリーンで見ており、それ以来。(「ハンニバル」(2001)にも出ていたらしいのだが覚えていない)
ジュディ・デンチのM、今は彼女しかないだろう。みかけはともかく結構男が好きそうという匂いも漂わせて。
カジノからアストン・マーチンを飛ばして追いかけ、道に転がっているものをよけたもののひっくり返ったシーン、おそらく今の最高級日本車だったら、転がらないだろう。