シュトルム: みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ
松永美穂 訳 光文社古典新訳文庫
ハンス・テーオドール・ウォルゼン・シュトルム(1817-1888) は北ドイツ出身の作家、名前くらいは知っていたが作品を読むのははじめてである。
この三つの中編、いずれも男女の出会いとなかなかうまくいかない、というかなぜためらったのか、というなりゆき、展開が丁寧な描写と落ち着いた進行で、気持ちのいい説得力のある結末となっている。
なぜかもうひといきが足りずしばらくの別離でもう一緒になれない二人が会い、どうにもならないが静かに思い出の地をたどる「みずうみ」、娘を残して妻を亡くし迎えた若い後妻と娘の葛藤のなりゆきを描いた「三色すみれ」、ドイツ職人の世界で子供の時に出会った少年と少女、時をへだてての「人形使いのポーレ」、いずれも中心となる話者に工夫が見られ、気持ちよく読んでいける。
ドイツにおいて青春が描かれた小説というと、シュトルムより後になるがヘルマン・ヘッセやトーマス・マンのいくつかしか知らないが、いずれも今回の三編よりもう少し社会あるいは世界への広がりの中でというものだったように思う。だからだろうか、このシュトルムの三編、なにかより個人の人生の真実を感じさせてくれる。
この三つ、結末の幸福感はずいぶん異なるけれど、いずれも人が生きていって「再生」する、ということを説得力をもって描いたといえる。
訳文は作品の調子によく合っていて読みやすい。
松永美穂 訳 光文社古典新訳文庫
ハンス・テーオドール・ウォルゼン・シュトルム(1817-1888) は北ドイツ出身の作家、名前くらいは知っていたが作品を読むのははじめてである。
この三つの中編、いずれも男女の出会いとなかなかうまくいかない、というかなぜためらったのか、というなりゆき、展開が丁寧な描写と落ち着いた進行で、気持ちのいい説得力のある結末となっている。
なぜかもうひといきが足りずしばらくの別離でもう一緒になれない二人が会い、どうにもならないが静かに思い出の地をたどる「みずうみ」、娘を残して妻を亡くし迎えた若い後妻と娘の葛藤のなりゆきを描いた「三色すみれ」、ドイツ職人の世界で子供の時に出会った少年と少女、時をへだてての「人形使いのポーレ」、いずれも中心となる話者に工夫が見られ、気持ちよく読んでいける。
ドイツにおいて青春が描かれた小説というと、シュトルムより後になるがヘルマン・ヘッセやトーマス・マンのいくつかしか知らないが、いずれも今回の三編よりもう少し社会あるいは世界への広がりの中でというものだったように思う。だからだろうか、このシュトルムの三編、なにかより個人の人生の真実を感じさせてくれる。
この三つ、結末の幸福感はずいぶん異なるけれど、いずれも人が生きていって「再生」する、ということを説得力をもって描いたといえる。
訳文は作品の調子によく合っていて読みやすい。