メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

運命のボタン

2011-07-14 12:29:42 | 映画
「運命のボタン」(THE BOX、2009年米、115分)
監督・脚本:リチャード・ケリー、原作リチャード・マシスン
ジェームズ・マースデン、キャメロン・ディアス、フランク・ランジェラ
 
人間としての判断に迷うヂレンマとおそらく地球外の何らかの意図と力、それらが絡まって進む話である。SF的なものをあまり見ないし、読まないので、これで面白い人もいるのかどうか、わからないが、ドラマとしてもなにか物足りない。原作は短編だそうだが、これだけ長い話にするとやはり無理があるのだろう。
 
NASAに勤める夫(ジェームズ・マースデン)と教師をしている妻(キャメロン・ディアス)、男の子が一人で、お金にかなり困っているということなのだが、共稼ぎだし、住んでる家から見ても、信じがたい。それはともかく、そこへ何かの事故で顔を壊されたように見える年配の男が訪ねてきて、ボタンが付いた箱をわたし、ボタンを押せば知らない誰かが死んで夫婦には百万ドルが手に入るという。悩んだあげく妻はボタンを押してしまう。案外簡単に押してしまうその映像的なタイミングはうまい。
 
途中までは興味が続くけれども、そのあとは疑問符が続く展開で、おそらくこれがこの種ものの常道ではあるのだろう。
 
キャメロン・ディアスは不思議な女優で、演技派とは見なされていないけれども、出演作品数は歳とそのポジションの割には多く、またおバカ映画から、難解なものまで、作品と役柄は多岐にわたる。それがこの映画でも意外と役にうまくはまり、出過ぎない程よい演技である。
そう、難解で変な映画といえば「マルコヴィッチの穴」、「バニラ・スカイ」にも出ている。今回の映画で夫た水の中から彼女の上に落ちてくるところなど「マルコヴィッチの穴」を思い出させるけれども、こっちはジョン・マルコヴィッチといいジョン・ジョンキューザックといい、情けないなかのユーモアといったところがあった。まあ、脚本がさすがチャーリー・カウフマンだからか。
 
箱を持ってくる謎の男はフランク・ランジェラ、どこかでと思ったら「フロストXニクソン」(2008)のニクソン元大統領、今回は別の意味で「かなわないなあ」という役。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アーカイブズが社会を変える(松岡 資明)

2011-07-01 10:28:03 | 本と雑誌
「アーカイブズが社会を変える 公文書管理法と情報革命」 (松岡資明、平凡社新書、2011年4月)
 
この10年近く、日本経済新聞に他では考えられないほど精力的に公文書関連の記事を書き続けている著者が、「日本の公文書」(ポット出版、2010年1月)に続き、まさに公文書管理法が施行される4月というグッドタイミングで書いたものである。
 
内容は前著と重複も多いが新書という体裁と出版形態からより多くの人に読まれると考えるし、またそうなることを望みたい。
公文書というもの、公文書の意義、我が国における公文書管理法の制定・施行までの動き、関係者の努力等が書かれており、特に関係者の話などは前著にもあったが、記録として貴重である。
 
またいわゆる公文書以外についても、この一年間にあらわれてきた公共図書館や地域活動におけるさまざまなアーカイブについて触れられており、同様なことを考え始めている方々には大いに参考になるだろう。
 
ただ私が最初にかかわったミュージアム関連のアーカイブ、デジタルアーカイブについては、著者の取材範囲からは少し外れており、ほとんど触れられていない。これはやむを得ないことである。 
 
あと一つ、195ページで、牟田昌平氏の講演記録から、デジタルアーカイブ推進協議会を中心とする当初の推進について、「、、、インターネットによる接続で見るという発想はない」としているが、これは間違いである。
デジタルアーカイブの先達の一人として私も尊敬し「デジタルアーカイブ白書2001」でも執筆されている牟田氏が2005年の講演でこのように話したのは、記録ミスでなければ、おそらく文脈の中で少しデフォルメをしたか、うっかりして他のことと混同したか、そう信じたい。故人であり確かめるすべはないのであるが。
 
すでにこの件については、やはりデジタルアーカイブの推進にかかわった方が「本読みな暮らし」でより具体的に書かれている。そのとおりだと考える。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする