踊る大紐育(On The Town 、1949米、98分)
監督:ジーン・ケリー、製作:アーサー・フリード、脚本:アドルフ・グリーン、ベティ・コムデン、作曲:レナード・バーンスタイン、ロジャー・イーデンス、ソウル・チャップリン、コンラッドサリンジャー
ジーン・ケリー(ギャビー)、ヴェラ=エレン(アイヴィ)、フランク・シナトラ(チップ)、ベティ・ギャレット(ブランヒルド)、ジェールス・マンシン(オジー)、アン・ミラー(クレア)、アリス・ピアース(ルーシー)
有名な映画だが、見るのは初めてである。このもとになったミュージカル「オン・ザ・タウン」(1944)の振付をやったジェローム・ロビンスについて津野海太郎が書いた「ジェローム・ロビンスが死んだ」で著者はこの映画が1951年に日本で公開されたときに夢中になり、ロビンスの訃報を知ってから、いくつかの謎に興味を持ち始め件の本を書いたようである。
実際には、映画化するときにミュージカルが持っていた問題意識、社会性は薄められたらしい。こうしてみると明るく楽しい映画であり、興業的にも成功したようである。
ニューヨークに寄港した軍艦の水兵が早朝に24時間の上陸休暇を与えられて飛び出してくる。その中の三人組ギャビー、チップ、オジーが街の見物をするうちに、張り紙で地下鉄でミス地下鉄(アイヴィ、実は見世物の踊り子)にギャビーが夢中になり、彼女を探そうとするうちにチップはタクシー運転手のブランヒルドに気に入られ、またオジーは博物館で学者のクレアと仲よくなる。女性3人の組み合わせはアメリカならではのとんでもないものだが、物語の展開上はこれが効いている。
話の最後は、とにかくいろいろあった挙句、3組の男女は互いに好意をもったまま翌朝の出港での別れとなる。
そしてダンスはたいていこの5~6人限定で、このサイズの映画で見るには適しているようだ。男も女も今の映画からすると小柄である。そしてなかでもやはりジーン・ケリーのダンス特にタップは見事で楽しめるし、歌もシナトラがソロになると聴きどころがある。若い時のシナトラは甘い高音できかせるいわゆるクルーナーというイメージもあるけれども、ここで聴くとむしろ地声(胸声)の領域の音色、味がいい。
ところで映画では、バーンスタインは音楽のクレジットの一部だし、振付としてロビンスの名前はない。特に音楽はずいぶん変えられたそうだ。
ミュージカルとしては優れていても、バーンスタインの音楽は大衆にはどうかとうことだったらしい。ミュージカル版の音楽を聴いていないでいうのも変だが、もしかすると彼の音楽はドラマ全体を支える劇音楽として優れたものでも、部分部分ですぐ耳につくところはあまりなかったのかもしれない。
確かに「ウェストサイド物語」でも、「トゥナイト」や「アイ・フィール・プリティ」などは覚えやすく、一時期TVなどでもよく歌われた。しかし映画公開からかなりたって独立した曲として親しまれ、よくカヴァーされるということはないようである。ジャズ演奏の素材として使われることもあまりない(かのアンドレ・プレヴィンがまだクラシック指揮者としては知られておらず、映画音楽、ジャズピアノの分野で活躍していたころにこのウェストサイドの楽曲だけでピアノ・トリオのアルバムを作り、ヒットさせたのを例外として)。
ところで女性タクシー運転手の役名ブランヒルド、姓も含めドイツ読みにするとブリュンヒルデ・エステルハーツィ !
ナチスドイツと戦争中に作られたミュージカルで、、、