メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

踊る大紐育

2013-01-05 17:17:55 | 映画

踊る大紐育(On The Town 、1949米、98分)

監督:ジーン・ケリー、製作:アーサー・フリード、脚本:アドルフ・グリーン、ベティ・コムデン、作曲:レナード・バーンスタイン、ロジャー・イーデンス、ソウル・チャップリン、コンラッドサリンジャー

ジーン・ケリー(ギャビー)、ヴェラ=エレン(アイヴィ)、フランク・シナトラ(チップ)、ベティ・ギャレット(ブランヒルド)、ジェールス・マンシン(オジー)、アン・ミラー(クレア)、アリス・ピアース(ルーシー)

 

有名な映画だが、見るのは初めてである。このもとになったミュージカル「オン・ザ・タウン」(1944)の振付をやったジェローム・ロビンスについて津野海太郎が書いた「ジェローム・ロビンスが死んだ」で著者はこの映画が1951年に日本で公開されたときに夢中になり、ロビンスの訃報を知ってから、いくつかの謎に興味を持ち始め件の本を書いたようである。

 

実際には、映画化するときにミュージカルが持っていた問題意識、社会性は薄められたらしい。こうしてみると明るく楽しい映画であり、興業的にも成功したようである。

 

ニューヨークに寄港した軍艦の水兵が早朝に24時間の上陸休暇を与えられて飛び出してくる。その中の三人組ギャビー、チップ、オジーが街の見物をするうちに、張り紙で地下鉄でミス地下鉄(アイヴィ、実は見世物の踊り子)にギャビーが夢中になり、彼女を探そうとするうちにチップはタクシー運転手のブランヒルドに気に入られ、またオジーは博物館で学者のクレアと仲よくなる。女性3人の組み合わせはアメリカならではのとんでもないものだが、物語の展開上はこれが効いている。

話の最後は、とにかくいろいろあった挙句、3組の男女は互いに好意をもったまま翌朝の出港での別れとなる。

 

そしてダンスはたいていこの5~6人限定で、このサイズの映画で見るには適しているようだ。男も女も今の映画からすると小柄である。そしてなかでもやはりジーン・ケリーのダンス特にタップは見事で楽しめるし、歌もシナトラがソロになると聴きどころがある。若い時のシナトラは甘い高音できかせるいわゆるクルーナーというイメージもあるけれども、ここで聴くとむしろ地声(胸声)の領域の音色、味がいい。

 

ところで映画では、バーンスタインは音楽のクレジットの一部だし、振付としてロビンスの名前はない。特に音楽はずいぶん変えられたそうだ。

ミュージカルとしては優れていても、バーンスタインの音楽は大衆にはどうかとうことだったらしい。ミュージカル版の音楽を聴いていないでいうのも変だが、もしかすると彼の音楽はドラマ全体を支える劇音楽として優れたものでも、部分部分ですぐ耳につくところはあまりなかったのかもしれない。 

 

確かに「ウェストサイド物語」でも、「トゥナイト」や「アイ・フィール・プリティ」などは覚えやすく、一時期TVなどでもよく歌われた。しかし映画公開からかなりたって独立した曲として親しまれ、よくカヴァーされるということはないようである。ジャズ演奏の素材として使われることもあまりない(かのアンドレ・プレヴィンがまだクラシック指揮者としては知られておらず、映画音楽、ジャズピアノの分野で活躍していたころにこのウェストサイドの楽曲だけでピアノ・トリオのアルバムを作り、ヒットさせたのを例外として)。

 

ところで女性タクシー運転手の役名ブランヒルド、姓も含めドイツ読みにするとブリュンヒルデ・エステルハーツィ !

ナチスドイツと戦争中に作られたミュージカルで、、、

 

 


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楽器をはじめた

2013-01-01 18:37:25 | 音楽一般

ときどきヴォーカルの発表会について書いている。いわゆる大人の音楽レッスンというもので、この春でもう4年になる。

4年前、教室の新装にタイミングをあわせて目立った宣伝をしていて、その全容はなかなか面白そうだなとは思ったものの、年齢を考えるといまから楽器を始めても楽しむレベルには達しないだろうと思っていたら、ヴォーカルという言葉に目がとまり、なるほどそういう手があるかと、カラオケもそれほど熱心にやってないのにはずみで始めてしまった。

 

基本はポピュラー・ヴォーカル、ヴォイス・トレーニングと課題曲のおさらい、どちらというとロックやリズム・アンド・ブルース系の曲が教材には多いが、スタンダード・ジャズの曲をさらってもらうことも可能である。ジャズに特化しない形は今から考えるとよかったと思う。発声、リズムなどいくつかの点から。

 

発表会は一般ライト・ミュージック系、これが本来だが、トランペット、サックス主体のジャズ系発表会にも自主的ゲスト(?)出演が可能で、こっちにも出ている。そうしていたら、知り合いからライブ・スポットで定期的にやっている飛び入り可能ジャムセッションに出ない?といわれ、無謀にも楽譜を持って行き始めて1年たった。

 

予想とずいぶん違っていたのは、アマチュアの層の広さとそのレベルの高さで、だからジャムセッションというのは、その場にいると楽しい。ヴォーカルも毎回何人かいるけれど、多くは女性で男性は私だけということが多い。これもかえって気安く感じられてきた。 

 

そして、うまい人とそれほどでもない人がやっても、和やかに進んでいくのが、意外なことだが気持ちいい。むしろ間違っても、それを見せずに(相手はたいていわかっているのだが)、そのまま続ける、ミスも含めてジャズだという人も多い。楽しそうにやっているとそれをわかってくれる。

 

私の世代のジャズファン、といってもほとんどは聴くだけの人たちだが、気難しく自分の趣味に合わないものは寄せ付けない、といった雰囲気から、敬遠したいこともあった。もっともクラシック音楽ファンもそれとたいして変わらなかったが。 

 

そうやって、知り合いも多くなり、いろんなことを感覚的に知るにつれ、ジャムセッションに出られるようになるかどうかは別として、楽器もやってみようかと思いだした。それは教室でいろんな情報が入ってきて、バリアーが少なくなってきたせいもある。

 

話が長くなったけれど、それで昨秋からアルトサックスとジャズピアノを始めた。管は何かやりたいという気があったのと、サックスが一番簡単ときいていた。楽器が開発されてから200年たっていない、つまりかなり後に出てきた楽器だからよくできている。それと練習は中学のブラスバンドもこうなのだろうが、自分の楽器は持たず練習は教室のみ、つまりかなり高額だし自宅は練習環境にはなかなかならないということで、それでも1~2年である程度の曲は吹けるようになるらしい。これは発表会に出てくるメンバーにきいてもそうらしい。それなら時間もとらないしと始めてしまった。

 

ジャズピアノについては、ヴォーカルをやっていて、さてアドリブとかもう少しいろんなことをやろうとするとコードを理解したくなるけれど、そうなるとギターかキーボードをやるのがいいだろうと、これも単純に考え、ギターはどうもあまり向きそうでないが、若いころ自分勝手な独学でピアノ(クラシック)をちょっといじったことがあることから、教室で相談したら、全くはじめてのピアノコースを経ないでいきなりジャズピアノコースに入ってもいいのではといわれ、都合のいい時間帯に新規開講するものがあるというので、入ってしまった。 

 

クラシック系と全くちがい、コードの知識とリズム練習から始まる。想像するに、若い人がギターのコードを3種類くらい覚え、歌いながら伴奏することからはじめ、だんだん高度なコード、フィンガー・プレイを身につける(独学も多い)、という感じに近いのかもしれない。

 

とはいえ、やってみるとそうすぐにはできないが、幸い復習の練習時間はたっぷりある。それと、ジャズの名盤などに詳しくないので、クラシックの場合とちがい、不遜な言い方だが「教養が邪魔する」ことはない。教えられるとおり素直にやっていけると思っている。

とにかく続けてみて、自分の中で何か変わってくるか、何か生まれてくるか楽しみである。


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