メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

モーツアルト「皇帝ティートの慈悲」(メトロポリタン)

2014-05-02 22:37:00 | 音楽一般

モーツアルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」 K.621

指揮:ハリー・ビケット、演出:ジャン=ピエール・ポネル

エリーナ・ガランチャ(セスト)、バルバラ・フリットリ(ヴィッテリア)、ジュゼッペ・フィリアノーティ(ティート)、ケイト・リンジー(アンニオ)、ルーシー・クロウ(セルヴィリア)

2012年12月1日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2014年4月WOWOW

 

この作品、名前は知っているけれど全曲を見るのも聴くのも初めてである。メゾソプラノのオペラアリア集にアリア「私は行くが、君は平和で」はよく入っていて、聴いてはいたが全体の話がわからないから地味な印象だった。

 

さて、故ポネルの選出は、背景もシンプルで皇帝と二組の男女5人のやりとりに集中することができる。

 

皇帝ティートの皇紀にヴィッテリアがなりそうになったり、セルヴィリアがなりそうになったり、くるくるかわるのにあまり振り回されないほうがいいようだということはしばらくするとわかってくる。

この二人の女性の相手の男二人を演じるのは女性歌手である。そうズボン役(trousers role)、ここでティートの親友かつヴィッテリアと恋仲のセストはエリーナ・ガランチャで、カルメン(ビゼー)、シンデレラ(ロッシーニ)で素晴らしいパフォーマンスを見せた人、抜群のスタイルだからこういうものは合う。考えてみればシンデレラは自立した女性という性格もあったから、今回のような役はしっかりこなすのかもしれない。

 

ヴィッテリアはなんとあの「修道女アンジェリカ」のバルバラ・フリットリ、こういう極端に違うキャラクターを演じられる、やはり超一流のプリマ。彼女の衣装もすてき、特に黒っぽいものが。

 

してセストの親友でセルヴィリアの相手は、新鋭ながらケルビーノをはじめとしてズボン役では今一番のケイト・リンジー、2007年のMETオーディションから出てきたそうで、ここでも堪能できる。

 

こうしてみると宝塚じゃないが。

 

話はまとまってないというか、突然の変化が多いが、それはモーツアルト最晩年の円熟で、皇帝に献上するオペラという制限の中でもきかせるところは多い。

 

ケッヘル番号でいくと、魔笛が620、これが621。それでなるほどと思ったのは、第一幕の件のセストのアリアで、たっぷりと絡んでくるクラリネット、これまんまクラリネット協奏曲(K.622)のよう。

 

一方、第二幕のヴィッテリアのアリアで同じように絡むのはバセット・ホルンで、初演の時は同じ人が吹いたらしい。この映像ではそれぞれの奏者がクレジットされている。

 

最後の皇帝礼賛の場面は、同時期の「魔笛」のザラストロ礼賛と共通しているが、経過を記憶していると、「ティート」のほうがいやみがない。

 


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