メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

平子雄一 X 練馬区立美術館コレクション

2023-02-10 15:53:00 | 美術
平子雄一 X 練馬区立美術館コレクション
11月18日(金)ー 2月12日(日)
練馬区立美術館
 
練馬区在住の平子雄一(1982)が館コレクションから10点を選び、自らの巨大な一枚と共に一部屋に展示したというものなかなか珍しいしかけである。
この期間練馬区民の美術展を開催しているが、そこにこういうものを入れたのはおもしろい。
 
平子雄一は初めて知る画家で、ここにある大きい作品は現代社会における自然と人間との境界線を植物や壷、本、身の回りのものなど、色彩豊かに描きこんだもの。
展覧会はもうすぐ終わってしまうけれど、この一枚はいつでも見られる場所に置いておくという形態にするといい。
 
館コレクションから選んだ10点、区に縁がある画家だが、知っているのは靉光、野見山暁治、寺田政明、見てすぐ「あっこれは」となんとなくわかるのは、いろんなところで彼らの絵を見ているからだろう。ながいこと見ているとこういうこともある。
 
これらに平子が脇に落書き的に選定理由というかコメントをつけているのはおもしろい。
中でも野見山暁治は102歳で健在、ちょうどいま福岡県立美術館で画家自身の寄贈による展覧会をやっている。練馬で一点見て、いすれまとまった展覧会を見たくなってきた。

 

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ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」(メトロポリタン)

2023-02-08 14:48:30 | 音楽一般
ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」
指揮:リッカルド・フリッツア、演出:サイモン・ストーン
ネイディーン・シェラ(ルチア)、ハビエル・カマレナ(エドガルド)、アルトゥール・ルチンスキー(エンリーコ)、クリスチャン・ヴァン・ホーン(教父ライモンド)、エリック・フェリング(アルトゥーロ)
2022年5月21日 ニューヨーク・メトロポリタン・歌劇場 2023年1月 WOWOW
 
メトロポリタンでオペラを楽しむ人にドニゼッティというのはなくてはならない、聴く醍醐味がある作曲家だろう。ただこのルチアはこれまであまり聴いてこなかった。10年ちょっと前に同じメトでデセイが演じたものを見て感心し、持っていたカラスのLPをまた聴いてもよかったのだけれど。
 
今回の演出は舞台を現代アメリカのラストベルトに設定、すなわち過去には自動車産業などで栄えたが今は衰退を続け大統領選挙で話題になっている地域。
ここで事業をしているエンリーコは過去の繁栄から落ちてきて、金持ちのアルトゥーロに 妹ルチアを嫁がせ、勢いを取り戻そうとするが、ルチアには未来を誓った恋人エドガルドがいて、という設定。話の展開は「ロミオとジュリエット」みたいに想像がつくが、終盤に無理強いで結婚させられた相手を殺したルチアの狂乱の場が見せ場である。
 
現代に設定したということ、最初は違和感が少しあるが次第にそうでもなくなる。そしてこの演出では大スクリーンにルチアを中心とする過去のシーン、心象風景を映し出しているらしいが、生の舞台でなく映像だとあまりよくわからないうらみはある。またルチアの表情をカメラマンが前から追い、それがまたアップされたりする。これも一つのやり方ではあろう。
 
さて歌だが、ルチアはネイディーン・シェラ、先日のパリ祭コンサート2022で会場を完全に魅了してしまったが、それまで知らなかった。今回観るともうメトでも大変な人気のようである。
このルチアも歌も表情、動きも堪能させてくれる。いい意味でサービス精神があるようだ。
声は澄んで高いというよりはしっかり強いところがあり、変な言い方だがマライア・キャリーみたい。フロリダ出身でラテンの血も入っているらしい。これからも楽しみである。
 
エドガルドのハビエル・カマレナ、先に同じドニゼッティの「連隊の娘」でのハイCでパヴァロッティ以来のカーテンコールを得たが、ここでもとにかく損な役だし、身長が低くがっしりタイプだこれど、歌っているうちに見栄えがするシェラとも違和感がなくなってくる。
兄エンリーコのルチンスキー、この悪役に作曲家が振った歌をこちらに納得させる。
 
今回オーケストラ部分を聴いていて、あらためてドニゼッティのバック、のせ方、あおり方に感心した。プッチーニのような頭にすぐ入る旋律とはちがったタイプの流れ。
フリッツァの指揮も効果的だった。
 




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