メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

佐伯祐三 展 自画像としての風景

2023-02-18 09:51:17 | 美術
佐伯祐三 自画像としての風景
東京ステーションギャラリー 1月21日(土)ー 4月2日(日)
 
佐伯祐三の絵はもちろんいくつも見ているけれど、こうしてまとめて見るのははじめてかもしれない。東京では18年ぶりとなる回顧展だそうだ。
佐伯祐三(1898-2028)の絵を見た若い時、これがフランス風の洋画というものかと色がよくうまいなと思った反面、自分の年齢のせいかもっとどろどろした強いものを求める気持ちもあり、その後はちがった方向、画家に向かっていったように思う。
 
今回こうして全体をながめてみると、美術学校を卒業して在パリの期間を中心にわずか5年でこれだけの作品、変化をものにしたということである。その一方で生き急いだという感が絵にないのはいい。自画像も多く出ているが、構えすぎたものではない。
 
パリに行って、ヴラマンクに「このアカデミック!」といわれショックをうけて奮闘したということだが、パリなどの多くの様々な建物、風景はうまく切り取られ表現されている。ちょっと器用でうますぎるところが(まだ若いのに)アカデミックと言われてしまった所以なのか。
そうやって下落合風景、電線その他の線に焦点があてられたものなどがあったが、最後は有名なパリの壁、ポスターなど平面に集中したもの。これは決意のあとの集中なのだろうか。そう考えるこれまでとは別の感慨がある。
 
ところで、「立てる自画像」(1924)という顔の部分が上塗りで消されたようになっているものがある。見ていて思い出したのは松本竣介の「立てる像」で、松本は佐伯の絵を知っていたと想像する。この絵は松本を評価する人からもいろいろ言われるところがあって私もあまり好きではない。ちょっとぶってるというか立派すぎるというか。佐伯が自ら顔に手を加えたのは何を思ったのだろうか。



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