夏休みといえば、子どもの頃、徹夜してこさえた(作った)潜水艦のことを思い出す。
船体は製材所でそれらしく切り取ってもらった材木の切れっ端、子どもには高額過ぎるマブチのモーターに、新品の乾電池、川原で拾ってきた石の錘(おもり)。軍艦色のビニールテープでぐるぐる巻きにして、それはカッコよく仕上がった。ひと夏のお宝だった。小学校の用水池を友達らが取り囲んで、ぼくは晴れがましく眉上げて、恭(うやうや)しく両手で空にさし上げた。誇り高き進水式の始まり。
焦(じ)れる友人達の囃し声を制し、おもむろに水に浮かべ、そーっと手を離した。そのまま厳かに潜って行って…。そして、二度と潜水艦は浮かんでくれなかった。浮力と錘のバランスを学ぶには幼過ぎるぼくが居た。
母さん、ぼくのあの潜水艦、どうしたんでせうね?
自作マシンの分解修理を終わると、決まってネジが余る。壁に額を吊るせば水平にならない。どころか、落ちることもある。きっと引力のせいだろうが、どうにも腑に落ちない。およそDIYの世界とは外れたところにぼくは住んでいる。ノート・パソコンのCPUファンが回らないのをバラして治してあげた時、こう労(ねぎら)われた。
「ありがとう、きっと間違って治ったんやね」
「…。」
大都市に産まれた、都会育ちのひたむきルーキーさんは、主婦のプロである。心優しいお人柄で、傍に居るだけでまるで春の風に吹かれているかのような心持にさせてくれるお嬢様そのままの女性だが、カントリー・ライフを心底楽しんで居られる。庭の敷石や玄関のタイルを好みのものに張り替えるなんざ朝飯前で、金槌トントン出窓をこさえたり、タペストリーを自作するなど、自分のお家を思いのままに改造されている。聞けば棟梁の娘さんなんだそうで、納得するばかり。ぼくから見たら宇宙人のよう。
その彼女がこの度ブログ・デビューを果たした。ブログ名は、coco houseである。彼女の世界は特別のことでなく、誰しもきっと共感を覚えることだろう。ご覧いただきたい。それにしても、手作り、手間暇、手塩…、いい響きである。ぼくはじっと自分の手を見つめる。なまくらの手だ。"手加減"という言葉が思い浮かぶ。
今夜のBGMは、ORANGE RANGEの「花」。今さらシリーズ、復活!