※桜木紫乃(1965年北海道釧路市生まれ。高校卒業後、裁判所でタイピストとして勤めたが、24歳で結婚して退職し専業主婦に。2児を出産直後に小説を書き始め、42歳になる年に『氷平線』で単行本デビュー。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。「ホテルローヤル」で2013年直木賞受賞。趣味はストリップ鑑賞)
●ラストシーンが身にしみる
謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた――。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は道東に残り、理容師の道を歩み始めた……。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。
こんな不幸な展開をよく書けるなというくらい、不幸なお話が続く。まさに「愛がない」。幸せそうになっても長続きせず、結局、行きつくところは同じ。いや、もっと悪化する。なのに読み終わった後には満足感が漂う。ラストシーンが身にしみる。自分の人生は自分の人生。どこへ向かうも風まかせ。手前勝手に生きてりゃいいのさ。不幸だって幸福だって、なんでもかんでも考えようなんだよ。
時間軸があちこちし、さらに名前がややこしく、誰と誰が親子だっけ? と相関図が頭に入らない。実際は逆なのだが、小百合の娘は小夜子、里実の娘は理恵の方がしっくりくる。一気読みしないと混乱すること間違いなし。
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