続・トコモカリス無法地帯

うんざりするほど長文です。

映画感想「オオカミ狩り」2023年の大量流血映画

2023-05-28 19:48:58 | 映画の感想

GWの血塗れ映画ハシゴ2本目「オオカミ狩り」を観ました。過激なバイオレンス描写でR15指定受けてます。大勢の韓国人犯罪者と監視の警官を船に詰めて、フィリピンから韓国まで輸送する途中で壮絶な殺し合いが起きる、というあらすじなんだが、その単純なバイオレンス映画なのに上映時間2時間以上あります。アクション映画にしちゃ長くないですか?しかし、胸焼けするほどバイオレンス描写を通り越した、残酷ゴア場面が満喫できるのは間違いないとの前評判です。期待しましょう。


1.残忍で狡猾な犯罪者チームVS残念で迂闊な警察チーム

舞台の準備と伏線を撒くパートです。でかい貨物船に連行されていく犯罪者達と荒っぽい警察官達に加えて医者が顔見せしていきます。ここで観客へ主要人物を覚えてもらう場面ですが、重要人物とモブの映し方が上手い。登場人物はほとんどおっさんばかりが50人以上ぞろぞろと出てくるけど、キーパーソンには目立つ言動させて強く印象付けしてくれるおかげで、大人数の殺し合い場面でも誰が何の意図で動いているのか、視点が迷子になることはありませんでした。

主要人物1.ジョンドウ


全身に蛇の入墨をいれた常軌を逸した残虐性を持つ男。頻繁にナイフを人の首に刺す。おっさん揃いのなかでアイドル顔のお兄さんだが、三白眼の迫力で圧倒的な悪役振りを披露してくれます。


主要人物2.ドイル


もう一人のアイドル顔お兄さん。ジョンドウ曰く「久しぶりだなナイフ使いのドイル、10年前からぜんぜん変わってないな」とのことですが、これが後半の大きな伏線でした。前半はあまり行動しません。


主要人物3.婦人警官ダヨン


婦人警官2人いるけど優秀な方の婦人警官。船内の異変にいち早く気づいたり、勘が良く行動力もある。警察側の主人公ポジション。

犯罪者を収容した監獄船が出港した頃に、船の航行を管理する管制室が謎の集団に乗っ取られたりするけど、まだ大きな動きはありません。
一方で船内では、ジョンドウが小さな針金を吐き出しこっそりと手錠の鍵を外していました。さらに船の乗組員にも内通者が居り、銃火器を持ち込んで操縦室を制圧してしまいます。そこから始まる大虐殺タイム。犯罪者達は乗組員を銃で脅して従わせるとか面倒なことはしません。片っ端から殺してしまいます。通信機器や救命装置も壊してしまいます。え、誰が操縦すんの?遭難するよ?漂流するよ?大丈夫?と心配になるくらい、彼らは後先考えず片っ端から人を殺します。船のスタッフに監視の刑事もバンバン殺し始めます。そのたびに派手に血飛沫が飛び散ります。銃で撃ったり、ナイフで何度も刺したり、特に多いのが喉をナイフで一突きする殺し方。一瞬で仕留めるので、刃物が人体に刺さっていく直接的な場面はありませんが、喉からナイフグリップを生やしたおっさん達が大量出血しながら倒れるシーンは頻発します。とはいえデカい船なので、犯罪者達が武器調達して反乱を起こしても、監視担当に付いていた刑事を始末しただけで、まだ控えの刑事達が残っています。少しづつ犯罪者側に有利な状況へ傾いていくのが前半の流れです。

これらと無関係に、医者が船底で隠されている謎のミイラへ投薬しています。ミイラ周辺にいる怪しい男たちは上で暴れているジョンドウ達とは無関係らしく、この船には犯罪者の移送以外にも何かの計画が仕込まれている様子です。

暴れまわるジョンドウ始め犯罪者集団に対し、いち早く異変に気づいたダヨン達警察チームも対抗して戦い始めました。紆余曲折あり、彼らは機関室で総員が銃火器を構えて睨み合う膠着状態に陥ります。誰かが引き金を引けば全員が一斉射撃を始めて何人生き残れるのかわからない至近距離での睨み合い。普通のアクション映画ならこれは最終決戦に持ってくる山場です。全員が最大火力を撃ち合うクライマックス手前の場面ですが、まだ映画上映時間の半分くらいほどしか経っていません。画面には誰も動けない緊張感が漲っています。

 


2.怪人乱入

全員が至近距離で銃火器を突き付け合う膠着状態に、突然乱入してきた奴がいます。その場にいる全員が「誰?」と戸惑っている間に、そいつは手近な者から惨殺し始めました。警察も犯罪者も相手構わず見境なしに片っ端から殺してしまう乱入者に向けて、両者が銃や刃物で反撃しますがまるで歯が立たず、死体が増えるだけでした。やがて何の予告もなく突然現れて大虐殺を始めた奴の容姿がハッキリ見えてきます。目はまぶたを縫い留められた異様な形相、歩く足音はやけに重く金属質な響きがあります。そして人体を素手でグシャグシャに破壊する馬鹿げた怪力と、銃で撃たれてもまったく怯まない頑丈な身体、これは怪人だ。宣伝にあった「怪人」がようやく登場です。あまりにやりたい放題の大暴れに、凶悪残虐ジョンドウ兄さんが絡みに行きました。前半に暴虐の限りを尽くし相手構わず大殺戮を働いたジョンドウ兄さんからすれば、後からしゃしゃり出てきた怪人にデカい顔されるのは面白くないでしょう。いつものようにオラ付きながら煽りますが、逆にボッコボコに叩きのめされました。今までの犯罪者や警察ならここで死んで終わりでしたが、怪人の凶暴性はさらに上なので、ボコられてダウンしているジョンドウ兄貴を機関室の機器に引っ掛けて立たせると、更に追い打ちを叩き込みます。服がはだけて全身の入墨丸出しになったジョンドウ兄貴は、三白眼の不敵な笑いを浮かべていましたが、怪人はその笑顔めがけてハンマー連打。何度も何度もハンマーを振り下ろし、ジョンドウの頭部は無くなってしまいました。画面でも血塗れなった胴の上には何も無いんだ。これは前半に大暴れしたジョンドウが粉々に破壊されて、後半はさらに凶暴性の高い怪人が引き続き大暴れする主役交代劇です。そしてジャンルも変更です。今までは出血量多めながらクライムアクションの延長でしたが、ここからはガチのモンスタースラッシャーです。

新主人公の怪人は素手で人体破壊できるうえに銃が効かないため、正面からずんずん歩いてきて、手当たり次第に人間を殺してしまいます。なぜ殺すのかはコイツが何も喋らないのでわかりません。
ここで前半は影の薄かった主要人物2のドイルが動き出します。ドイルさん強いんだ。怪人相手に対等に渡り合う超人的な戦闘力を発揮します。この人いったい何者?
乗員を一人残らず惨殺するのが目的なのか、怪人は人間離れした動きで船内を移動し殺戮を続けます。しかし、その間に数の絞られた主要人物達が集まり、この輸送船に仕込まれた謎を解いていきます。

怪人が着ていた囚人服がとても古い時期のものだと判明したり、船底でミイラを保管していた部屋へ向かうと、怪しげだったスタッフの男達は惨殺されており、ミイラが消えていたりと、状況証拠が増えていきます。怪人の正体は船底の部屋で保管されていたミイラが、人間の血を吸収して蘇ったものです。人間の血はジョンドウ達が散々殺した死体から排水溝などを通り、船底の部屋に流れ落ちていました。やっぱりジョンドウ達が殺されたのは自業自得だったな。

さらに、現場に残っていた資料から怪人の正体がわかりました。太平洋戦争中に日本軍が人体実験で作り出した改造人間でした。狼の遺伝子とかけあわせて改造人間を作ったけれど、彼は精神に異常をきたしてしまったらしく、常時激怒状態のうえに全身が改造手術のせいで痛みに苛まれてるそうで、理性が働かず無差別暴力怪人と化してしまいました。

この改造手術場面がいかにも韓国人の考えた日本軍イメージで、昭和特撮の悪の組織そのままです。しかし役者は韓国人なので日本語イントネーションがおかしい。手術を「チュジュチュ」と発音するので、外国人が日本人役を演ずるのはなかなかに難しいようです。
それはさておき、怪物の正体である「旧日本軍の改造人間」は一人ではなく、他に2人居ることが資料からわかります。そして改造人間の特徴として、胴体中央を縦に走る大きな縫合痕と、左肩に番号の焼印が押してあることです。つまりシャツなどがはだけると一目でバレます。

それで新しくもう一人の改造人間の正体がバレました。ナイフ使いのドイルも改造人間でした。改造人間は年を取らないそうで、戦時中の怪人がそのまま暴れてるのも、ドイルの外見が10年前から変化しないのも、不老体質のせいです。

ならばドイルも戦時中から生きてるの?といえば違います。彼は現在進行系で行われている改造人間製作事業の被害者です。韓国では戦時中に日本軍が行った研究を引き継ぎ、現在でも身寄りの無い人間をかき集めては、人体改造実験を繰り返しています。それを指示しているのは、戦争を生き延び年を取らないまま社会的な高い地位に上り詰めた、別の改造人間だったりします。悪の大ボス的に指示を出している場面が映りますが、彼の胴体と肩には縫合痕と焼き印がガッツリ出ているからね。

そうこうしている間にも、船内の怪人は犯罪者チームの生き残り達を執拗に殺し続けています。警察が外部に救援を求めようにも、船の操縦室は破壊されて通信機器が使えません。犯罪者達が前半で真っ先に大事な装置を壊してまわってたからな。状況は絶望的です。

 


3.どうしてそんなに強いのですか?

ところが、連絡手段の無い洋上で遭難している船へヘリコプターが降りてきました。異常を察知して救助に来たのかと言えばさにあらず。彼らは前半パートで航行管制室を占拠した謎の集団に所属する戦闘チームでした。船の動きを監視していたら、通信機器破壊のせいでレーダーから消失し移動経路を追えなくなったため、周辺区域の航行データから位置を割り出し、制御から外れた船を鎮圧しに武装盛り盛りで駆けつけて来たわけです。
怪人から必死に逃げて来た、生き残り達が保護をお願いしても彼らの反応は冷たいものでした。冷たいどころか邪魔だとばかりに婦人警官ダヨンを射殺してしまいます。これには驚きました。ここまで危機に立ち向かい続け、劇中で最も頑張っていた主人公ポジションのキャラがあっけなく退場。てっきりダヨンが最後まで生き残ると予測していたので、観ていて混乱してしまいました。

そのまま鎮圧特殊部隊は生き残りを掃討しつつ怪人を探します。そしてついに怪人と遭遇。怪人の戦力を知ったうえで乗り込んで来ている連中なので、怪人相手でも引けを取らない強さです。というより、彼らも改造人間です。怪人のように精神に異常をきたしておらず、集団行動が取れる超人部隊です。到着前に変な薬をドーピングしてる場面あったし。このチームの所属する集団は、既に改造人間を製造し実用的に運用するノウハウを確立してると思われます。そして旧型改造人間の怪人は徐々に押されていき、ついに戦闘チームに倒されてしまいました。仕留めたのはチームを指揮するリーダーのおじさんです。

実はこのおじさんが、この映画最大の謎です。
途中でコンクリートの壁を素手で砕いたり、常人ではない描写こそあるけれど、改造人間ではありません。胴体に縫合痕も見えません。それなのに特に武装もせず普段着にナイフだけの格好で怪人を倒してしまいました。つまり周囲の全身防具+銃火器武装+ドーピング済の改造人間達より、素で圧倒的に強い。メチャクチャ強い。手がつけられないほどに強い。劇中最強キャラです。しかし劇中で強さに関する説明や根拠描写が皆無です。どうしてそんなに強いのですか?

怪人を倒した特殊部隊は、次に口封じのため生き残りの抹殺を始めます。せっかくここまで生き延びた、お人好しぽい医者や、犯罪者だけど温厚な老人なども死んでしまいます。彼らは殺伐とした物語内でコメディ部分の担当でもあり、この人達なら何とか生き残るのではとも予測していたのにまたハズレました。今作では登場人物が頑張っても(比較的)善人でも容赦なく死にます。物語進行のキャラクターへの突き放し具合が、なかなかお目にかかれないレベルで冷めています。精神の有り様と肉体ダメージになんの関連性は無く、銃で撃たれると善人悪人問わず皆死にます。

誰も彼も死んでしまい、残っているのはドイルだけです。そしてドイルは怪人の死に怒っているようでした。残虐狂暴な殺人鬼でしたが彼はそもそも非人道的人体実験の犠牲者であり、今まで何十年と眠っていたのを起こされて、いつものように暴れていたら邪魔だとばかりに殺処分されてしまったわけです。自身が狂暴殺人鬼ではないにしろ、ナイフ使いのドイルと呼ばれるくらいには、暴力稼業に染まっていた自身から見ると、怪人は自分の境遇とよく似ていました。

だから、ドイルは特殊部隊へ戦いを挑みます。どのみちコイツらを倒さないと自分が殺されてしまいます。完全武装の特殊部隊達を圧倒的な速度のナイフ捌きで次々と片付け、リーダーへ迫るドイルですが、このリーダーが強い。めちゃくちゃに強い。さらにこのリーダーのおっさんはかつて任務として、ドイルの家族を始末していたことが判明しました。そもそもドイルが家族の復讐として戦い、逮捕されていたのもコイツのせいでした。激怒したドイルのナイフ捌きがさらに速く苛烈になっても、リーダーは平然と対処してきます。ここのナイフコンバット場面は、殺陣の速さとカメラアングルの巧さもあり、かなりの迫力があります。互いに逆手に持ったナイフを至近距離で振りまくるうえ、舞台が船内通路や狭い船室なため、一手ミスると大怪我する高速戦闘アクションが展開されました。そして両者は目まぐるしく戦場を変えながら、最後には2人とも甲板から海へドボン。
こうして船内に動く者は一人もいなくなりました。

最後は何処かの浜辺へ海から上がって来るドイルの姿。戦いには勝ったのでしょうか。そして続編を匂わす「ドイルの息子」の存在を映して映画は終わりました。

この映画のオオカミとは狼の能力を組み込まれた改造人間達のことでした。つまり「オオカミ狩り」とは、怪人やドイルを始末しようとする謎の組織と特殊部隊チームとの戦いでした。もちろん前半に暴れ狂った犯罪者集団をオオカミと揶揄する意味もあるのでしょうが。

それはともかく、2時間以上の上映時間はアクション映画として、かなり長い部類になります。しかし2時間内に並のアクション映画3本分の展開を詰め込んでいるため、鑑賞中に中だるみや冗長さをまったく感じませんでした。過激な暴力描写は多いけれど、ほとんどが一瞬で息の根を止めるスピード感のある暴力シーンであり、犠牲者を執拗に痛めつける粘着質な暴力シーンは少なく、画面上の出血量に対し意外なくらい見やすい映画でした。過激な暴力描写に注目されがちですが、観客への情報提示も上手で、主要人物の印象付けで注目するべきキャラと状況情報が理解しやすく、伏線回収もきっちり済ませる手堅い造りでした。混迷した反乱劇から三つ巴の戦いへ収束していく展開を情報過不足なしに、観客の集中力をを2時間維持させる構成はかなりハイレベルに思えます。

また、あれだけ登場人物がいながら1人しか生き残らない展開は新鮮でした。欧米映画や邦画だと婦人警官ダヨンは生き残っていたと思うので、女子供でも容赦なく死ぬのは甘っちょろい道徳観ルールへ忖度しない真剣な映画製作姿勢に感じて、個人的にはたいへん好印象です。だからホラーやモンスターパニック映画はもっと女子供がバリバリ死ぬ展開やってください。弱い者に手加減する脅威なんて興醒めすんだよ。

 

この日は「哭悲」「オオカミ狩り」を連続ハシゴ鑑賞したわけですが、双方とも前評判どおりの大量流血映画でした。「哭悲」では凶暴化ウィルスに感染発症した残虐暴徒の群れが大暴れしていましたが、一方の「オオカミ狩り」ではウィルスなんぞに頼らなくても素で獰猛狂暴な犯罪者集団が、手慣れた様子でバンバン人を殺していくので、もしも両者が衝突したならば・・・多分、オオカミ狩りの犯罪者チームが勝つ気がします。凶暴性が同レベルでも手際の良さが段違いというか、ジョンドウ兄貴はナイフ捌きだけじゃなく知恵もまわるので、あの犯罪者集団を哭悲パンデミックに放り込んでもいつも通りに片っ端からぶち殺して、なんなら感染発症しても元からあんな感じだから平常運行のまま勝っちまいそうでさ。



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