中村です。
講師として研修の仕事をするようになって20年以上。
もともと講師志望だったわけではなく、講師=大勢の前
で喋る仕事はどちらかと言うとあまりやりたくない部類の
仕事だった。
そんな私が講師をするきっかけは、
ズバリ数字
前職は、研修や適性診断、教材開発などの営業。
あるコンサル会社から信用金庫の1泊2日の内定者研修
の講師を「やってみないか」と声をかけられ、管理職の給
料1ヶ月分は余裕であるだろうその数字欲しさに
「やります!」
勢いで受けたものの、当時の私は、自分が営業した研修
の事務局をすることはあっても、「講師を自分がやる」のは
初めて。しかも初めてがいきなり2日間。
さらに、私がもといた会社は内定者研修の依頼はあまり多
くなく、見本にするようなプログラムもなかった。
受けた以上やるしかない
自分でストーリー描き、自分でプログラムを考え、教材を作
り、当日は誰よりも緊張しながら震える手でマイクを握った
ことを覚えている。
あれから20年以上。今でも研修を担当する日は緊張感で早
く目が覚める。早めに自宅を出て1時間ぐらいイメージトレー
ニングしないと心穏やかにプログラム進行できない。
このプレッシャーから解放された~いと何度も思っ
たが、続けてくることができたのは、
仕事だから
と言ってしまえばそれまでだが、やっててよかった~
を実感できる瞬間があるから
それは、空気が変わる瞬間に立ち会えること
空気を変えるのは講師ではなく受講者
研修はトレーニングの場だと常々伝えている。特に内定者や
新入社員対象の研修は、まさに自分の苦手を克服し、自信
をつけるためのトレーニングそのもの。
人と話すのが苦手な人が頑張っていろんな人と話してみる。
積極的に行動することが苦手な人がリーダーに立候補して
みる。「いつもの自分でいる」「できることしかやらない」ので
はトレーニングに来ている意味がない。
上手くいかなくても、「やってみよう」と一歩踏み出すきっかけ
をつくるのが講師の役目。
先日もこんなことがあった。
あるIT企業の内定者研修。入社までに実施する3回の研修
の2回目でグループでリーダーを決める際、
「私にやらせてもらってもいいですか?」
1回目の研修で全内定者の中でも最も声が小さく、表情も硬く
「周りの圧に負けない」という行動目標に対して「全くできませ
んでした」と評価していた女子学生が手を挙げた。
おお~っつつつつつつ
という空気が流れた。
実際にはリーダーとしてグループを仕切るには難しい局面
が何度もあったが、一生懸命頑張ろうとする彼女に他のメン
バーが積極的に協力する・・・。いいチームができあがった。
研修の最後にグループで意見交換した際、リーダーに立候
補した彼女からはメンバーへの感謝の言葉が、メンバーから
は彼女の勇気ある行動に触発されたという言葉が聞かれた。
同じ研修でのこと。
研修の最終日(1月)のプレゼンテーションのテーマに関して
全体で意見を出し合っていた際、「これ!」という意見が出ず
議論が膠着化した場面で、
前で、進行役を務めていた私が、
「誰か。意見頂戴!」
と全体を見回した時、ある女子学生と目があった。
(いや、目があったと私が思っただけかもしれない)
が、次の瞬間、その彼女が
「はい」
と手を挙げて大きな声で自分の意見を言った。
おお~っつつつつつつ
という空気が流れた。先の例の彼女と1、2を争うほど消極的で
人見知りの彼女が、全体の前で、しかもこの意見を言いにくい
状況で、まさかの挙手
彼女につられて立て続けに意見が出て時間内に結論をつける
ことができた。
その日の振り返りシートに、
たかだか手を挙げるだけやん。と思うかもしれないが、彼女にとっては
自分史上初の快挙。勇気を持って一歩踏み出す。そのことが本人だけ
でなく、周りにもよい影響を及ぼす。
このプラスの連鎖を体感できるのが研修。