今の時期いろんな企業や団体の新入社員研修を担当することが多い。研修はほとんどの場合1~2日。昨今は不況のあおりをうけて、1日であれもこれも盛り込んでほしいという要望が多い
新入社員研修は「社会人に求められる基本ルール」や「ビジネスマナー」を習得するのがねらい。正直6~7時間でこれら全てが伝えられるわけがない。当然、この時間の中で担当する講師が
「これは特に必要だ」
「これだけは知っておくべきだ」
と思う項目をチョイスし、優先的にかつ時間をとって伝えることになる。何をチョイスするか?何に重きをおくかは担当する講師の教育や研修に対する価値観(ポリシー)、研修スタイルによって異なる。
(先日のブログにも書いた)京都銀行のお得意先様に入社した新入社員対象の研修は全部で9コース。3名の講師が担当している。事務局からは、共通のテキストを使用することと必ず盛り込む必要のある項目は伝えられているが、これらをどのような順番でどのようなやり方で実施するかはそれぞれの講師に任されている。
おそらく3名3通りの研修スタイルで実施しているだろう。
中村スタイルは?
女性講師の出身で多いのが、元客室乗務員、あるいはホテルウーマン。または、大手企業で秘書歴十数年のベテランなど。ビジネスマナー = 仕事そのもの だった人が多い。いわゆるビジネスマナーのプロフェショナル中のプロフェッショナルだ。
私は?と言うと、アパレルや大学進学予備校勤務を経て人材の業界に入り、営業や講師の経験を重ね今に至る。ビジネスマナーそのものを仕事にしてきたわけではない。マナー講師としての経歴はどちらかと言うとpoorだ
しか~し!
だからこそ、営業で他社を訪問した際、また来客の訪問を受けた際、どのように対応すれば相手にいい印象を与えるか(失礼にならないか)必要かつ過度に丁寧すぎないマナーが伝えられると自負している。
今から15年ほど前、初めて新入社員研修の依頼を受けた際、こんなやりとりがあった
仕事を依頼してくれた会社の部長「中村さんに新入社員のマナー研修やってほしいんや?」
中村「私ですか~?私、ホテルや航空会社出身じゃないし『性格が大雑把』なんで、あんまり細かいマナーどうでもいいと思っている派なんで、やめたほうがいいですよ!」
それに対して、
部長「せやからええねんやん。あんたぐらいのマナーがちょうどええわ!あんまり丁寧すぎるの必要ないから」
あんたぐらいのマナーがちょうどええわ!というフレーズがちょと気にはなったが、なるほどね!!と思ってその仕事を受けたことを思い出す。
私らしいマナー研修をやればいいんだ!それ以降「私らしさ」を追及してきた。
今では結構な数のマナー研修や新入社員研修を担当し、いわゆる「ベテラン」と言われるようになった。指名してくれるお客様も多い。
私らしいマナー研修は、細かい手順の一つ一つにはこだわらない。その代わり以下の5点だけは徹底的に伝える。これが中村スタイル。
①あなたのマナー = 会社のイメージそのもの ⇒自分だけでの問題ではない!
②何のためにそれらが必要なのか?ということをまず押さえる
⇒たとえば「名刺の出し方」。細かい手順をレクチャーするのではなく、「名刺はなんのために出すのか」を考える。答えは「自分を理解してもらうため」。そのためには、名刺は「くれてやるもの」ではなく「もらっていただくもの」であるはず。ここまで考えれば、どちらの向きに出すのか?どのようなタイミングで?どの位置に?など細かく言わなくても自ずとわかってくるはず
③マナーの原点は、視点は相手。行動の主体は自分。相手の立場に立って自ら動くことである
④人間関係の基本は、「自分がされたらいやなことは他人にもしない」 ⇒ 周りに迷惑をかけるな!
⑤好かれる(可愛がられる)新入社員になるにはまず「笑顔から」
⇒表情の悪さが、顔つき・面構えの悪さにつながり、放置すると人相が悪くなる。
これらは、私の20年以上の社会人経験の中で「これは絶対必要」「これだけは絶対にわかっていた方が得する!」と思うことばかり。また小さいながら会社の役員という立場で自分宛の来客を受けたり、自社の社員達を見ていて実感することばかり。
私の研修はおそらく、好き嫌いがはっきりする。上品に手順を細かく丁寧には行わない。マイクも使わず、大きな声で、髪振り乱して、時には語気を荒げて、上記5点を徹底的に伝える。このような研修スタイルや価値観があうお客様には「感動しました」「その通りです」と賛同してもらえる。が、丁寧にきちんと指導して欲しいお客様には少々大雑把に映るだろう。
そこそこ無難な評価を得ると言うよりは、ムッチャ気に入ってもらえるか?敬遠されるか?
それでも、私にしかできないマナー研修を実践し続けていきたい。支持してくれるお客様がいる限り