151. コレクション的バリエーション投資法 (五十嵐玲二談 2017年11月)
少額の資金で、いかに低リスクで、株式投資を行なうための考え方です。一般的株式投資の手順は、上場企業の3600社の中から、3年後に最も上昇割合の大きな企業を予測し、選択するゲームと捉えることも可能です。
株式市場は、資本主義社会で発展してきました。なぜ、株価があがるのか。それは、当該企業が基盤となる技術や、ノウハウや、ビジネスモデルによって、利益をあげることによって、国に税金を納め株主に配当金を支払い、さらに、企業価値を高めることによります。
従って、過去三年間と今後三年間に少しづつ利益が増加することが、大切です。そのような企業を財務指標によって、スクリーニング(screening :選別)を行ないます。それらの指数とは、PER,PBR、配当率、ROA,自己資本比率などです。
PAR :price-earnings ratio (earn :利益) 株価収益率 、PBR :price book-value ratio (book-value :純資産) 株価資産倍率、ROA :return on asset (asset :資産) 総資産利益率。
スクリーニングによって、20~30社程度抽出し、次に、指数で直接絞り込めないもので、絞り込みます。過去三年間の利益、今年度末の予想利益、投資命題、基盤技術、五年後にその企業がどうなっているか、などです。
投資命題とは、アンソニー・ボルトンによって提唱されたもので、その銘柄を保有したいと望む理由を数行で表現したものです。基盤技術とは、当該企業が収益を上げるための本質的な技術です。
その技術が理解できなければ、徹底的に調べて、研究して勉強しなくてはなりません。理解できない企業には、投資すべきではありません。この絞り込みによって、2,3社に絞り込みます。
次に自分の資金と相談して、少しづつ丁寧に投資します。ウォーレン・バフェットによると「個人投資家は、バッターボックスに立ったまま、絶好球をいつまでも、待っていればよく、バッターアウトを宣告されることはない」と言っています。見送る時は、予備リストに登録し、経過を監視します。
1. 株式投資に関する書籍に於いて、まったく触れられてない一番重要なことは、資金を投入後、ゆっくりと待つことです。株式投資は、時間の関数であることは、間違いありません。
その単位は、三ヵ月ごとの四半期と決算の年単位です。企業の業績はこの単位で、発表されるため、三ヵ月~一年の期間を必要とします。従って、ゆっくりと待つことが、一番重要で、待つことが楽しいことがさらに重要です。
2. ある企業の株式を取得することは、わずかですがその企業の一部分を所有するため、一つのコレクションと捉えることができます。さらに、その企業活動そのものが、わくわくする感じがあることが、ベストです。
わくわくしながら、静かに待って、その企業の株を持っていることが誇れることが最高です。
3. 投資をするからには、配当も欲しい、株価も上がってほしい、将来性のある株であって欲しい、株価は大きく下落しない株であってほしい、……となります。一つの株でこれを実現することは、難しいかもしれません。
なぜなら未来は誰にも見通せないからです。しかし、たとえば18社の株を自分が想定するそれぞれのポジションに配置し、そのポジションを守り切れば、全体として理想に近づく確率が上がると考えます。
4. テーマによってバリエーションをつくる。未来に対して、どのテーマが主流になるかは、誰にもわかりませんが、私は以下のようなテーマを考えています。
エネルギー資源、銅・ニッケル資源、リチウムイオン電池、真空蒸着法、塗料関連、溶接関連、自動組み立て、自動調節弁、固体潤滑剤、切削技術関連、精密プレス関連、養鶏関連……などです。
テーマとその企業の基盤技術がしっかりしていて、経営陣と従業員が未来を見つめている企業は、明るい未来が開けるように感じます。
5. 持ち株企業の技術やビジネスモデルが、自分のコレクションになり、18社のバリエーションが、自分だけの持ち株モデルです。私の会社の18名のメンバーであると考えることもできます。
自分はまったく起業していなくても、18社の企業群のバランスは、私のオリジナルなものであり、私の個性であり、私の未来を拓くものであると信じてます。
6. 投資に於けるリスクをできる限り、少なくすることは重要なことです。投資の格言に「同じかごに卵を入れるな」がありますが、未来を見通すことが不可能ですので、投資の分野の多様性(バリエーション)を確保することによって、リスクを少なくすることが可能です。
7. 個々の株価が下がらない工夫をする。その一つが配当率の良い企業を選択すると、それが下落のストッパーになります。
純資産が多く(PBRが低い)、負債の少ない企業は、下落のストパーになりなす。その企業が利益をあげて、業績が伸びていれば、いずれ株価は上がります。
株価が下がらない株を選択すると、株価は上昇するしか道はなくなります。
8. 決算時期のバリエーションを持つ。基本的には3月決算ですが、5月、6月、11月、12月の決算株を持つと、中間決算や決算時期が分散され、3月決算で悪い結果であった場合、5月以降の決算で好業績が予想される株に乗り換える。また、配当金も分散される。
9. グループ別に管理を行なう。私の場合は、Aグループ6社、Bグループ6社、Cグループ6社に分、さらに、2社づつペアにして、管理しています。グループ別に、さらに全体として上昇基調であることが好ましいことです。
これら18社の動きを観察することによって、未来がどのように動くかを察知します。半年に1回程度、「投資命題」にそぐわない、基盤技術に陰りが見えた、利益水準が望ましくない、経営陣との相性が良くないなどの理由があるとき、予備リストまたは、持ち株の好成績のものと入れ替えます。
10. だれもが、その企業の株を持ちたいと考える企業の株価は上昇しますので、そのような株を少し早めにコレクションすることによって、株式のコレクションは充実し、誇りを持てるようになります。
現在も、将来も、利益をあげ続ける企業であり、その企業が社会に貢献することによって、株式投資はすばらしいコレクションになります。
私の失敗例その1。
10年ほど前に、海運株に投資したのですが、世界の船の需給指数であるバルチック海運指数を知らなかったため、大きく下落して、大きく損をしました。
私の失敗例その2。
二十五年ほど前に、ヨーロッパデズニーランド(フランス)を開くというので、その株を買いました。日本ではデズニーランドが大成功で、当然何倍にもなると思いましたが、ヨーロッパでは、まったくの失敗で、五年後に、一〇分の1以下で、手放しました。
そのとき日本のデズニーランドの株を買っていたら、何倍かになっていたはずです。(よく解らないものに、大切なお金を投資してはいけない。)
私の失敗例その3。
十数年前に未来のエネルギーとして、新聞や雑誌で、メタンハイドレートが、日本の近くの深海に豊富にあり、有望であるともてはやされてました。そこで私は、関連の企業の株を買いました。
三年ほど持って、数分の一で手放しました。現在でも実用化のメドさえ立っていません。インターフェロンの会社の株とか、よく騙されたものだと、感心します。実用化した後で、遅くはないのです。(第150回)