和田秀樹 80歳を過ぎたら健康診断を卒業していいと主張しているワケ。毎年同じことを健診で調べ続けている国は日本と韓国くらい(婦人公論.jp) - Yahoo!ニュース
和田秀樹 80歳を過ぎたら健康診断を卒業していいと主張しているワケ。毎年同じことを健診で調べ続けている国は日本と韓国くらい
5/18(木) 6:32配信
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和田さんいわく「80歳を過ぎたら、健康診断は受ける必要がない」そうですが――(写真提供:PhotoAC)
厚生労働省が発表した「簡易生命表(令和3年)」によると男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年(2022年度)といずれも40年前から9歳程度伸び、80代となりました。一方「なぜ人は80歳を境にガクッと衰えるのか、あらためて考えてみた」と語るのは、老年医学を専門とする精神科医・和田秀樹さんです。
和田さんいわく「80歳を過ぎたら、健康診断は受ける必要がない」そうですが――。
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◆80歳を過ぎたら、「健康診断」を卒業してもよい 著書『80歳の壁』で、「80歳を過ぎたら、健康診断は受ける必要がない」と申し上げたところ、「先生、本当に受けなくていいのですか」という質問を、その後、よく受けました。
ここで、その理由をより詳しく述べておきます。
まず、医療界で、世界的に有名な「調査」についてお話しします。 フィンランドで、生活習慣病を持つ1200人を2つのグループに分け、15年間、追跡調査した結果です。
2グループのうち、
第1のグループは、15年間、健康診断を受けず、医者も指示しないという
「医療放置群」、
もう一方は、健診を定期的に受け、医者も指示を出すという「医療介入群」です。
すると、
15年間の死亡者数は、
放置群46人に対して、
医療介入群は、ほぼその5割増しの67人でした。
健康診断や医者の指示は、無意味どころか、むしろ死者を増やすという結果が出たのです。
『80歳の壁[実践篇]幸齢者で生きぬく80の工夫』(著:和田秀樹/幻冬舎)
◆「臓器別」の健診は病人を製造するシステム
この調査結果は、欧米の医療界に衝撃を与え、現在、欧米には、健康診断を国家的な医療・健康政策として採用している国は見当たりません。 とりわけ、毎年、同じことを健診で調べ続けている国は、世界に日本と韓国くらいしかないのです。 現在、わが国では、「臓器別」の健診が行われていますが、私はそれを「病人を製造するシステム」と見ています。
根拠薄弱な「正常値」を設けたうえ、その数字から逸脱すると「病気」と判定します。 そして「病気」と判定された人は、飲まなくていい薬を投与され、しなくてもいい手術をされ、健康寿命を縮めているのが現状というのが、私の見方です。
◆臓器の数値はよくなってもトータルでは不健康
そもそも、高齢になると、検査数値に多少の「異常」が出るのは当たり前のことです。 検査結果一覧表の上から下まで異常値が並んでいても、80代まで生きたということは、それで十分健康だったということなのです。 それなのに、一臓器の数値にこだわり、その上げ下げを目標にして生活すると、かえってトータルでみた健康状態をおかしくしてしまいます。
たとえば、高血圧と判定され、減塩食を食べるようになって、検査数値が多少よくなったとしましょう。 しかし、毎日、美味しいとはいえない減塩食を食べ、「食」という楽しみを奪われると、体全体の免疫力を落とす可能性が高まります。 むろん、心理面にもネガティブに働きます。
私は、「ひとつの臓器の数値はよくなったが、トータルでは不健康になった」というケースを、嫌というほど見てきました。 検査数値の正常化のみにこだわって、暗い生活を送らないように注意されたほうがいいと思います。
◆健診自体に有害な一面がある
さらに、健診自体が、有害な一面も持っています。 健診では、胸部エックス線撮影を受けますが、それは放射線を浴びることを意味します。 今や、そのリスクの高さは、世界的な共通認識です。 WHO(世界保健機関)は、60年近く前の1964年、すでに胸部エックス線撮影の中止勧告を出しています。 しかし、日本の厚生労働省は、残念ながら、世紀を超えた現在に至るまで、胸部エックス線撮影にストップをかけていないのです。
※本稿は、『80歳の壁[実践篇] 幸齢者で生きぬく80の工夫』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
和田秀樹