雨に降り込められ、それ以上に、コロナ感染拡大の緊急事態宣言下で外出は「5割削減を」との尾見会長の声を枯らしての訴えにお応えして(?)、お楽しみ外出はガマンガマン😣の日々。
家の中ではYOU TUBE で陸 瑤先生の八段錦や健身気功十二法、陳式太極拳等々を見ながらお勉強。これにオンラインレッスンでの六字訣が始まって、ワタシはオンタイムでの参加はできず後から動画で自主練習。。アタマの中は太極拳で満杯気味である。
他のこともしたいから、本も読む。
8月に読んだ本、まずは高樹のぶ子さんの「伊勢物語」。昔教科書で習った在原業平の和歌の意味を読み解きながら、平安時代を生きた業平の一代記。
いくつかの和歌に添えられた平安時代の絵もいかにも穏やかでその都度読まれる和歌も、その意味を現代の言葉で書いた文章の美しさも、水の流れのように滑らかで美しい。平安の貴族達の自由奔放(?)な通い婚や、顔もハッキリ見えないような夜の情景など、今から見ればこの人たちはいつ仕事してるんだ?とか、心を寄せる女人のこと以外に考えることはないのか?等々、半分呆れながらも、この優美な時の流れ方は本来の日本人の性に合っているのではないだろうかと羨ましくも思えたり。
自然も穏やかで、ほんのり・秘やか・仄暗いと言った言葉や、霧や靄、露、といった穏やかな自然の移り変わりが描かれていて、ここ数年来の気象の激しさは気配もないことにも考えるところがあった。”日本の四季の美しさ”が、そこに確かにあるのだった。
もう一冊は、1964年に有吉佐和子が発表した小説「非色」。ブレイディみかこさんが帯に「人を分かつものは色ではない。では何なのか?この小説の新しさに驚いた」と紹介している言葉の通り、1964年にキング牧師が率いた黒人差別に抗議する公民権運動からBLACK LIVES MATTER(黒人の命も大事)運動まで、アメリカに延々の地下水脈のように流れる黒人差別。。。でも、50年以上も前に書かれたこの小説の中で、有吉佐和子はすでに、肌の色が差別を生むのではない、と喝破している。
日本の敗戦と同時に東京に溢れたアメリカ軍の兵士達は、白人だけでなく、黒人、イタリア人、プエルトリコ人・・いろいろな人種の兵士達がいた。
日本に駐留してきた彼らと結婚した日本女性達は”戦争花嫁”と呼ばれ、あるものは夫の住むアメリカに船でアメリカに向かった。そこで出会ったのは、日本では想像もつかなかった徹底的かつ過酷な差別。。。どうしようもない状況でも決して潰されることなく自分自身を見つめ、周囲を見つめ、考えを重ねる主人公には、次第にNYのハーレムで黒人の夫と子供と共に生きることへの強さと覚悟が生まれていく。
斉藤美奈子さんの解説にあるように「ニューヨーク編を読めば、有吉佐和子がこの小説で何を書こうとしたかが分かるはずです。彼女の構想は、戦争花嫁の人生ではなく、個人の人生を破壊する「差別の構造」を描くことだった」。
この小説が発表された1964年は、奇しくも東京オリンピックが開かれた年。2020年の東京オリンピックは延期されて今年8月8日に終了した。この小説が長い間の絶版を経て再発行されたのは2020年11月。56年も前に書かれたとは思えない新鮮さと、今もそのままあり続ける問題に驚かされる。