GINZA SIX内にある観世能楽堂で行われた「狂言風オペラ2018〜フィガロの結婚」。
モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」を、狂言風に仕立てた斬新な舞台。オペラと、能狂言と、文楽とがコラボレートした素晴らしい作品だった。
能楽堂の左手にはルツェルン音楽大学の教授陣からなる管楽八重奏団・クラングアート アンサンブルが座り、能舞台の右側は、三味線と太夫。
フィガロの結婚の序曲が演奏される中、客席後方から登場する随身 家路(=太郎、つまりはフィガロ)、演奏に負けず、会場いっぱいに台詞(?というのかな)が響く。
随身フィガロの結婚に乗じて、その相手の女房 梅が枝(=お花、スザンナである)を我が物にしようと口説く中将 在原平平(=殿様、アルマヴィーヴァ伯爵)は、何と、桐竹勘十郎操る浄瑠璃の人形だ!
さらに、伯爵夫人ロジーナにあたる奥方は、小面(若女?)の面をつけた能楽!さすがに風格が漂う。
管楽八重奏団が有名なアリアを演奏し、太夫と三味線が、関西言葉を交えて狂言を謡う。
セクハラ、だとか、森友問題を連想させるユーモアたっぷりで、今現在の風刺もピリッと効いているので、客席は大笑いの拍手喝采!
殿様が、「あんなに美しい奥方様がいらっしゃるのに・・・」と、浮気を突かれると、「確かに美しい。だがな、あの顔は、まるで能面のようではないか」(って、能楽の奥方だもの!これには観客は大笑いの拍手!)。
浄瑠璃の殿様がお花を口説く場面は、人間と人形の大きさの違いをまったく感じさせないエロさ十分。細かな足の動きや手の動作などや、狂言・能・浄瑠璃など伝統芸能を代表する出演者の、それぞれの芸の高さと他ジャンルと融合して新たなスケールを広げる柔軟な才能の見事さに、ただただ感歎した。
狂言は、言葉が分かりやすいし、笑いにも品がある。
能楽の奥方は、佇まいに風格と凜とした格調がある。
浄瑠璃は、人形なのに(というのも失礼かも)その表情や仕草にエロい殿様の性格がもろ出ていて、可愛げがある。
そこにクラングアート アンサンブルの(多分)普通の演奏会よりは抑えめの音で、聞き慣れたフィガロの結婚の曲目を洗練された軽やかな音で演奏し、狂言師の言葉や太夫の言葉とバランスが取れている。
ときは「平安時代・江戸時代・現代が坤山とした、ある春の一日」というのもいいよね〜。肩の力が抜けるし。
この殿様は、在原業平の血筋(らしい)が、和歌の才なし。もらった手紙になんと書いてあるのか分からない、という無学無教養セクハラパワハラ無自覚な輩、という設定も可笑しいのであった。
最後の大団円のラストでは、「高砂や〜」が、いつの間にか、聞き慣れたモーツァルトの結婚式の曲にのせての合唱になって、「たかさごや〜♪、たかさごや〜♪♪」と一瞬「えッ!!??」の展開に。いや〜、参りました!!
美しく、完成度の高い芸術文化の素晴らしさと楽しさに、涙が出るほど感動しました。