マシュー・ボーン演出の「白鳥の湖」を観るのは今回で3度目。
初めて観たときは、白鳥を男性が踊ることはもとより、その優美でしかも逞しい踊りとモード感いっぱいの衣装に感動!強い母親に抑圧された王子様の心情も伝わり、「白鳥の湖」のストーリーが把握できた(それまでは曲の調べにのって何となく見ているだけだったもの)。
今回も現代風にアレンジされているが、どのシーンでも出演者の表情や演技が素晴らしく、街のBarで踊る人達もモダンでスタイリッシュ。
最前列の中央席(!)だったこともあって、王子様や白鳥、あわよくば王子様をゲットしようとするガールフレンド(もう、”姫”は出てこない)はいかにも蓮っ葉ななイメージで、女王様と一緒にバレエを鑑賞している最中に大きな音でi-phoneが鳴り響いたり(一瞬、自分のか?とビックリ!)、マナーも礼儀もない(でもピンクのランタン風のミニドレスが可愛いかった)。。。
母親である女王様の暖かい愛情を求めながらも拒絶され、絶望する心を抱えて夜の街を彷徨い歩き、とある公園の湖の畔のベンチに座って自殺するべく遺書を書く王子様。。。切なくてウルウルきました。
そこで白鳥と出会い、その中の一羽の白鳥に魅入られ(ホントに吸い込まれるような強さがあった!)、絶望の淵から再び生きる希望と力をもらう王子様の表情は、観ている側も心の底から「良かった良かった!」。
その後、舞踏会にやってきた黒い服を着た男性(白鳥にうり二つの”元バージョンでいう”黒鳥)は、見せつけるようにその場にいる女性達の気を引き、女王を誘い、王子様の心はさらに深く傷付く。傷心の王子様は病気とされてベッドに。。。
最後のシーンでは、そのベッドを切り裂いて白鳥が現れ(見れば他の白鳥にいたぶられて傷を負っている)、夥しい白鳥が王子様と白鳥を襲う。。。マシュー・ボーンの舞台では、悲劇の主役は王子様。強く抑圧的な母親に愛を求め続けて得られず、痛ましい結果を迎えて幕は下りた。
今回の舞台では、(最前列だったせいか)白鳥たちが踊るシーンで「ハッ!」、「ハッ!」と威嚇するような息遣いをしていることが聞こえた。
従来の「白鳥の湖」は、白鳥はあくまでも優美で淑やかで清楚なイメージだが、白鳥って、結構凶暴な面もあるよね。観光地の湖にいる白鳥は近寄ると怒るし、つい先日は、生えそろった稲の葉を片端から食べてしまい追い払おうとすると「ハァッ!」と脅している迷惑白鳥のニュースが流れていた。終演後、混雑した通路で前を歩く二人連れの女性が「この舞台観たら、もう女の白鳥は見られないね」と語り合っていたが、同感同感!でありました。
大分以前に、バレエ教室で教える先生が「霧に包まれた湖を思い浮かべて・・、って言ったって、今の子はそんな光景を見たことないからムリ。。」と言っていたが、そうだろうな〜。。。
マシュー・ボーンの白鳥は、まさに現代感覚にマッチしている舞台。バレエを越えて一級の舞台演劇を観ている気分でありました。
(ワタシ的には王子様の執事役も良かった!いかにもイギリスの執事らしい謹厳さと、ふとしたユーモアとか女好きっぽい様子がセクシーだ)
前回の来日公演では「眠れる森の美女」を観たのだけど、やっぱりマシュー・ボーンは「白鳥の湖」が最高!
珍しく、記念グッズのTシャツまで買っちゃいました。