中世イタリア都市国家成立史研究
佐藤眞典 著
ミネルヴァ書房 発行
2001年2月25日 初版第1刷発行
この本の具体的な内容
・興隆してきた北イタリアのコムーネが、十二世紀後半、帝国の再建に粉骨砕身するフリードリッヒ=バルバロッサと戦いつつ、「政治的独立」を達成していく過程
・その政治的独立を確立した十三・四世紀の中部イタリアの都市コムーネがどのようにして農村領域(凡そ司教区の範囲)を集約し、地域に深く根を下ろしていったか、その領域支配の確率過程
序章 イタリアの中世都市と研究課題
イタリアは東ゴート人やロンバルド人が支配した時代も、ビザンツ人、フランク人、チュートン人、あるいはスペイン人、オーストリア人、ナポレオンやナチ政権などの外国人の支配下でも、さらには戦後の十か月ごとにコロコロ変わるイタリア人政府に代わっても、「都市の地」であり続けた。
中世の都市とは
・城壁で囲まれている、軍事的防備施設
・教会が中心になっている、精神的中心地
・市場が真ん中にある、商工業中心地
この本で扱った主な史料
・『オットー=フォン=フライジングとラーェウィンのフリードリッヒの事績』
バルバロッサ自身が、司教オットーに依頼して書かせる
・『ロンバルディア地方における皇帝フリードリッヒの事績』
常に反皇帝派であったミラノの無名市民による作品
・『フリードリッヒ一世の物語』
小都市のローディ市が帝国の助けを借りて、近隣の大都市の支配からいかに脱し、帝国の支配にも与しえず、結局、都市同盟に鞍替えしていく過程
Ⅰ 帝国内における都市コムーネ体制の成立
フリードリッヒ=バルバロッサとイタリア諸都市
第一章 『フリードリッヒの事績』に見るイタリア支配の論理
中世のイタリアで大きな権力政治的な枠組みを示す用語
・キリスト教共同体
・帝国
・王国
・都市国家
キリスト教共同体は教権と俗権の至上の権力者同士がそのヘゲモニーをめぐって争い、中世後期には、前者が多少優位に立つが、中世後期に君主国家の権力が確立してくるに従って、後退していく。
帝国はドイツ人による権力集中の努力で、都市国家がイタリア人による領域的地方権力の集中努力であった。
中世には増田四郎氏のバウムクーヘン論が伝える如く、多様な政治的・社会的な枠組みがそれぞれ一定の価値をもって存在したところに特色があると思う。
キリスト教共同体、帝国、王国、教皇領、都市国家、公領、伯領、辺境伯領、群小領主の支配圏、司教区、修道院、教区、小教区、市門区、ギルド等々
第二章 バルバロッサとミラノ市
第三章 バルバロッサに破壊された中・小都市
第一回遠征期
キェーリ、アスティ、トルトナ、スポレート、ヴェローナ
第二回遠征期
ブレーシャ、ピアチェンツァ、クレーマ
第四章 バルバロッサと小都市ローディ
小都市ローディの市民にとって、「皇帝」とか「帝国」とは何であったのか
・神聖なる支配者
・近隣の大都市ミラノからの解放者
・中・小都市に「名誉」と「繁栄」をもたらすもの
・安堵の証書を与え、人々を法秩序内に入れ、不正・不平を訴ええる上級裁判官
・しかし、これらは不平・不満を生み出す源にも、抑圧者にもなりうる。
第五章 バルバロッサに対抗するロンバルディア都市同盟
イタリアの諸都市は、強健なバルバロッサの統治下で殻を破って育ち、独特の都市コムーネ体制を確立した
バルバロッサが百年間の空白を埋めるがごとく、イタリアを再三訪れ、帝国の再建に努力し、そのため諸々の施策を講じた。
このため市民の間に実害が出始め、その実害が大きければ大きいほど、広く広がれば広がるほど、市民たちは手際よく織った都市関係の網の目で柔軟構造を作り出し、こうした上からの支配を下でソフトに捕えようとした。
党派争いの国でもあったイタリアには皇帝待望論的気質が常に存在した。
直面した近隣の都市や党派の強者の横暴から逃れたいために、外から支配者を招いて、一旦それから解放されるや、またその支配者の横暴に敏感となり、今度はそれを追放しようと苦心する。その繰り返しがイタリア通史を彩っている。
Ⅱ 領域内における都市コムーネ体制の確立
第六章 司教と都市 司教の世俗的支配権の実態
イタリアの地域・都市・教会のまとまりのよさ。都市にあった聖堂と市庁舎
ヨーロッパ世界の形成
・南欧的、地中海的要素の古典文化(ギリシャ・ローマの文化)
・北方的要素のゲルマン文化
・東方的要素のキリスト教文化
さらに、ケルト、スラヴ、ユダヤ、アラブ、ノルマンなどなどの多様な文化的要素
司教の俗権
・土地所有権
・財政的諸権利
・裁判権
・封建的行政組織
第七章 国王証書に見る司教と都市コムーネ
第八章 領域支配権の司教から都市コムーネへの移行
12・3世紀中部イタリアの中都市ピストイアの農村支配の分析から
第九章 中都市の都市条例にみるコムーネ体制
ピストイアの12世紀と1296年の都市条例の分析から
第十章 都市コムーネによる領域支配の確立
ピストイアの農村ポデスタ制
付録 フリードリッヒ=バルバロッサとイタリア諸都市に関する研究史
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