セルビア紀行
日本人が知らない東欧の親日国
丸山純一 著
かまくら春秋社 発行
2022年11月1日 発行
セルビアの大使をされた著者による本です。
セルビアというと、やはり紛争のイメージが強いですが、その悪いイメージを払拭するかのごとく、観光名所や料理、セルビア語や日常生活まで、親しみやすいセルビアを叙述しているのには、セルビアに対する愛情を感じます。
それでも民族問題などの難しい問題にもちゃんと触れています。
はじめに
セルビアの黄色いバスは日本からの寄贈。ベオグラードの人々の生活が苦しかった2003年に寄贈されたので、セルビアの人々に感謝され、心に刺さったバスだった。
第一章 セルビアの概要と小史
身長二メートルの石器人/バルカン半島の先住民/18人のローマ皇帝/カトリックと東方正教会の境界/ラテン文字とキリル文字/中世セルビア王国の繁栄/オスマン・トルコの支配/キリスト教とイスラム教の境界/セルビア独立戦争/サラエヴォの銃声と第一次世界大戦/パルチザンとチトー/連邦の崩壊
第二章 ベオグラード セルビア最大の都市
カレメグダン公園/クネズ・ミハイロヴァ通りから共和国広場へ/聖サヴァ大聖堂周辺/旧ベオグラード鉄道中央駅と空爆通り/ウォーター・フロントとノヴィ・ベオグラード/ユーゴスラヴィア歴史博物館/ゼムン地区及びその他の郊外の見どころ
第三章 セルビア国内の観光名所 盛り沢山の知られざる名所
(一)ノヴィ・サドとセルビア北部(ヴォイヴォディナ)
カトリックの教会とセルビア正教会の聖堂の内部の違い
・カトリックは明るいが、セルビアはほの暗い
・カトリックはたくさんの椅子があるが、セルビアはほとんどない
・カトリックは遮るものがないが、セルビアはイコノスタシス(聖障)で仕切られている。p92
ペトロヴァラディンの要塞の時計塔
長針と短針が逆になっている。ひとまず「何時」というのがわかればよいという考え方
(二)セルビア中部(シュマディア)
(三)セルビア東部
(四)セルビア西部
ミレシェヴァ修道院の「白い天使」のフレスコ画
(五)セルビア南部
民族的、文化的、言語的にも多様で、ラシュカという中世セルビアが栄えた地域のため、由緒ある修道院も存在する
第四章 セルビアの修道院 珠玉のセルビア文化遺産
セルビアの修道院の建築様式「ラシュカ様式」
外壁はロマネスク様式だが、構えや内部の壁画の様式はビザンティン様式
セルビアの修道院のみどころはフレスコ画
第五章 セルビア料理 バルカンの伝統料理と周辺諸国料理とのハイブリッド料理
セルビアの二種類のヨーグルト
液体状の乳製品。日本でいう「飲むヨーグルト」がセルビアのヨーグルト
粘り気のあるヨーグルト。日本の「ギリシャ風ヨーグルト」に近いp193
第六章 セルビア語 立ちはだかった大きな迷路
固有名詞も変化する。つまり名前も丸山が「マルヤマ」「マルヤミ」「マルヤム」などと変化する。p203
名詞の性が出ていないセルビア語の辞書p212
第七章 ベオグラード日常生活雑感
セルビアでは」ほとんどの人が自国通貨のディナールとユーロ建ての二つの口座を持っている。80年代後半から90年代前半の猛烈なインフレの記憶からか?p225
第八章 バルカンの周辺国とセルビア なぜ「紛争国家」というイメージを完全に払拭できないのか?
セルビア人による「民族浄化」(ethnic cleansing)という用語にしても、あるアメリカのPR企業により考え出され、その後メディアで流行したものではないか?p249
スロヴェニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナという三つの共和国は独立し紛争は解決しているが、コソヴォに関しては、独立を承認していない国もあるため、現在進行形の問題である。p250-251
第九章 セルビアの直面する課題 バルカン半島の小さな国の抱える大きな課題
(一)EU加盟を目指して
(二)コソヴォ問題の処理
(三)二つの南北問題
・プレシェヴォ渓谷のアルバニア人
・コソヴォに住むセルビア系住民
・サンジャク地方のボシュニャク系住民(イスラム教徒)
・豊かなヴォイヴォディナ地方(北部)
第十章 セルビアのこれから
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