札幌にNPO法人「ラジオ少年」があり、アマチュア無線技士養成課程講習会やラジオキットなどを販売している。現在の青少年の育成をやりつつ、おやじ達が若いころ憧れていたが買えなかった真空管アンプやラジオキットを販売している。
この真空管キットなのだが、部品+加工済みシャーシ+回路図という構成で、プリント基板ではないし実態配線図も付属していないので、ある程度自作の経験のある人ではないと組み立ては難しい。以前、ここから購入した真空管の5球スーパーを製作し、現在も動作しています。
しかしながらスタッフの高齢化のため、2023年4月1日から事業を縮小するという情報が入ってきた。養成課程講習会は2023年3月で廃止となり、真空管キットも在庫限りとなり補充は行わない。真空管や部品も無くなったらおしまいということなので、小型の真空管アンプを1台買ってみようと思ったのである。
【購入理由】
①真空管アンプはエレキットの6L6GCシングルや、2A3シングルがあるのだが、ラジオをまったり聞くには仰々しい。
②小型アンプとして、中華製の6BQ5パラプッシュがあるのだが、電源トランスレスでスイッチングノイズが盛大に出て、アンプONだと短波帯のバンドが使い物にならなくなる。
③パワーはいらないし、安価で組み立てやすいアンプを探していたら、6414(米国レイセオン社)のキットが目に入った。
④6414という型番の球は初めて聞いたが、12AU6と12BH7Aの中間くらいの球ということで、12BH7Aと差し替えが可能ということ。出力は6414プッシュプル(p-p)で、約1Wである。双三極管なので、そんなものだろう。ドライバーも6414なので両チャンネルで4本使っている。
⑤回路図があれば組み立ては可能だろう。(真空管は高電圧・高温部分があるので組み立て・使用については自己責任です)
⑥ラジオ少年が事業縮小になれば、こういうニッチな商品は無くなるだろう。
【購入】
①札幌まで買いには行けないので、通販を利用する。
②郵便局から郵便振り込みを利用する。
③定価14,500円+送料1,500円=16,000円だった。
④郵便局で振り込み後、6日で到着。
【組み立て】
①まずは開封です。
②同梱物の確認です。
・シャーシはすでに穴あけ加工済みです。昔は、完全自作のアンプをアルミシャーシを金属加工して製作していたので、めっちゃ助かります。
・真空管は5本入っていた。ん、5本?? どうやら1本はおまけというか予備みたいだ。
・今や貴重な米国製真空管です。(オールドストック品)
・部品は定格を書いた厚紙にセットされており、カラー抵抗が読めなくても判断できる。
・参考に組み立て写真があるが、こんな感じかなという程度です。あくまで参考程度でしょう。
③回路図を見ながら部品を配置していきます。プリント基板ではないので、ラグ板や真空管のソケットを使った空中配線になります。(あまり上手くないのはご勘弁)
④いきなり真空管を挿して電源ONするのは危険です。まず真空管を抜いた状態で、各部の電圧を測定します。プレートには200V以上の電圧がかかっているので要注意です。感電するとかなり痛い!です。それと電源OFF後でも、ケミコンに電気がチャージされているので注意しましょう。回路をいじる時は、AC100Vの電源コードはコンセントから抜きましょう。
⑤組みあがったら、一息ついて回路のチャックをします。自分では合っていると思っていても、思わぬミスがあったりします。(OPTの配線をテレコにしていたのを後で発見した)
【動作確認】
①真空管を挿します。
②入力(なんでもいいです)、出力(スピーカー)を接続します。
③電源をONにします。その時、異音や焦げたにおいなど異常があればすぐに電源を切ります。
④真空管のヒーターが4本とも点いているのを確認します。
【動作評価】
①あれ、なんか歪を感じる。再度、回路をチェックするが間違いはない。
②手持ちの12BH7Aに挿し替えてみる。このアンプは、6414のヒーター中点からAC6.3Vを供給しており、ヒーター両端はアースに落としているので12BH7Aとそのまま挿し替えが可能です。
③歪は感じなくなりました。
④再度、6414に戻すと歪を感じる。どうも、動作点が若干ずれている感じがする。
⑤ドライバを6414で、出力管を12BH7Aにしてみると、かなり良くはなったが若干の歪が残る。
⑥結局、すべて12BH7Aにした。この球はジャンク箱にあったもので、ほぼ半世紀ほど経っているが良好に動作する。
【音質・音量評価】
①12BH7Ap-pの出力は1Wほどですが、6畳間でまったり音楽やラジオを聞くには十分な音量です。6BQ5の5極管アンプと比較すると低域が伸びていませんが、中高域はすっきりとした音です。(あくまで比較ですので、出ないということではありません)
②BGM代わりに音楽などを流している分には適していると思います。
③これをメイン使いのアンプとするのは、ちと厳しいかなと。(お遊び使いくらいがちょうどいい)
【総合評価】
①真空管アンプを作る楽しみを味わえる。
②MT管4本と、電源トランスx1、出力トランスx2がシャーシに乗っているので、見ているだけでも楽しい。(人それぞれだが)
③どうして付属の6414が、思ったほどの実力を発揮できなかったか疑問が残る。回路定数は変えていないし、6414で設計されていると思うのですが良く分かりません。
④白黒TVをばらした世代であれば、12BH7AはTVによく使われていたので、ジャンク箱を探せばあるかもです。もともとTVの垂直偏向・発振・増幅などの用途に開発された球なので、オーディオ用に使うことは少ないと思います。人気がない球なので、安く手に入るかもしれません。←と思ったのですが、密林(仮称)で調べてみたら、ギターアンプ等用として、結構お高い価格がついていました。
6FQ7という似たような特性の球がありますが、ヒーターの中点がなく6.3Vに特化した球なので、そのままでは挿し替え不可です。手持ちはありますが、ヒーター回路を改造しないといけないので、挿し替え実験はしていません。
⑤面白い買い物でした、いい音で鳴っています。普段使いのアンプとして活躍してもらいましょう。
【トラブルシューティング】
なんとなく、ブーンというハム音が少しあり気になっていました。残った部品の中に「シールド線」がありました!!
RCA入力⇒2連VR⇒ドライバ管グリッドの配線をシールド線に交換後、気にならないレベルになりました。最初からシールド線を使えっちゅうことですが、この辺りのノウハウは記載がないので自己判断になります。
入力回路をシールド線に交換後の写真です。
【その他】
①電源切り忘れ防止のために、パイロットランプを付けました。ジャンク箱にあった半世紀前のAC100V用ネオン管です。
②6414ですが、12AU7と似た特性でピンアサインが同じなので、TU-8200Rのドライバ球と交換してみました。KT88を問題なくドライブします。12AU7の手持ちが少ないので、代替えとして使えそうです。
挿し替えて動作しましたが、代替を保証するものではありません。
③回路図です。
④ジャンク箱にはいくつか12BH7Aがあるので、全部動作チェックをしてみました。1本ゲッターが薄くなっている東芝製の球があり、さすがにダメかなと思ったら、やっぱり動作不可でした。それ以外はすべて動作可でした。三菱・日立・東芝・NECといった有名メーカーの球がありますが、印字が消えかかっている球もありメーカー名が判別できないものもあります。
↓NGになった 12BH7A
⑤手持ちの12AU7(6189)が2本あったので差し替えてみたところ、良好に動作しました。12AU7をドライバに使用した時は出力管は12BH7Aで、その逆も同様に試験したところ、どちらも問題ありません。ただし、出力が若干低くなります。12BH7Aを6414に変えるとやはり歪みます。
⑥1KHzのサイン波を入れてみました。
12BH7Aの波形 それなりに綺麗な波形です。
6414の波形 なんか微妙に歪んでいる。現時点で、原因不明・・