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川とまちと「働く」

2021-05-07 20:04:19 | 地域貢献
「あった!」
思わず皆が声を上げ、目の前にあらわれた大木を指さしました。
 
これが話に聞いていた目印の木…。
ひっそりと立つ説明版に目を移すと、「埼玉県指定天然記念物 碇神社のイヌグス」とありました。
 
~碇神社と呼ばれている祠は、江戸時代に名主を務めた多田家の屋敷稲荷です。祠の脇に生育する巨木がイヌグスで、樹齢六百年余りを数えます。~
 
江戸時代、日光街道の宿場町として栄えた春日部(粕壁)は、米や麦の集積地として舟運が活発なまちでもありました。
その中でもこのイヌグスの大木があるあたりは河岸(荷物の積卸場)があった場所で、古利根川を往来する船頭の目印とされていたそうです。
毎年お世話になっている春日部に、そのような温かなスポットがあるということを初めて知ったわたしたちは、たまには街道ではなく川沿いを歩いてみよう、ということで、「大落古利根川」のまわりを散策してみたのでした。
 
世は、密を避け、自粛・規制の流れ。しかしそのような中でも、川の水はただただゆっくりと進み、鳥のさえずりが目立つほどに静かな空気が流れています。
「心地よい」という言葉しか思い浮かばないほどのSlowな空間を黙々と歩き進むうちに、このイヌグスの大木に出会ったのでした。
 
 
春日部駅周辺のマンション・ビル群と、大落古利根川の水辺とのあいだに急にあらわれるこんもりした小さな森は、中に入るとしっとりした空気に変わり、こもれびを浴びながら思わず深呼吸。
かつて行った学校の裏山、あるいはかつて観たトトロの映画の一場面、と、なぜか懐かしい気持ちが沸き起こる中で、祠におまいりをし、木々の姿を目に焼き付けながら、駅へと向かいました。
 
 
この散策の発端は、つい先日、ご縁あって情報交換させていただいた、埼玉のNPOに参画している大学の先生方のお話からでした。
わたしたちが日頃関わるコミュニティは、日光街道の地域を基盤に事業を営む企業・経営者が多く、今回お話を伺ったまちづくりNPOのコミュニティとは異なる色合いをもつので、同じまちを舞台にしながらも、初めて知るこころみがたくさんありました。
JESというコミュニティに属する学生メンバーが、自身が属する大学を起点とした別のコミュニティとつなげてくれたことで、コミュニティ同士が多層的につながり、情報が広がったり共通言語が生まれたりする。まさに、グラノベッターが言う「弱いつながりの強さ」とはこういうことを指すのだな、と実感するひとときでもあったのですが、そこでお伺いした中に、「川」の話がありました。
 
 
「”道”は、人やモノが往来し、その沿道には暮らしがあるので、道という空間を演出することでまちづくりを推し進めることができる。しかし、”川”は土木施設としての扱いになるので、”まち”からは分断されがちである。」
確かに、日光街道を舞台に活動をするわたしたちにとって、主役は道。
数年前に、江戸時代の水運について取り上げた時はありましたが
それも「道」のあるまちから見た川の姿でした。
 
しかし、今回のイヌグスの大木は、川から見たまちの姿でもあります。
 
 
川の岸辺の小高い丘(碇山)にドンと構えていたイヌグスの大木は、かつて、近所の子どもたちが枝を使ったブランコで遊んだり、まちで働く職人たちが木陰で食事をとったりする場所として、地域に愛されていたと伝えられています。
江戸時代は、まちの暮らしと川がつながり、そこでさまざまな「働く」が営まれていたわけです。
 
翻って身近な台東区を眺めると、そこには隅田川があります。地元仙台では、広瀬川の流れが今も昔も地域から愛されるスポットになっています。
いま私たちがご縁をいただいている日光街道沿いの方々の”仕事”も、川を含めたまちの暮らしの中で脈々と受け継がれて生まれた「働く」の姿です。
 
地域に身を置き、自然・歴史・文化から感じることに意識を傾けてみると、新しい発見が見えてきます。
そして、その気づきが愛着や誇りの感情を生み出し、一つの接点として関わり意識や所属意識を強めてくれます。
関わり意識や所属意識は、共同体感覚を高め、心地よさや幸せ感の向上をもたらします。
このような時期だからこそ、身近にある地域を歩いてみるのも良いのではないでしょうか。
 
(執筆者:金野美香)

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