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リカレント教育の視点から考えるこれからのCAPのありかた

2021-04-28 17:38:40 | ダイバーシティ

「リカレント教育」とは、スウェーデンの経済学者レーンが提唱したもので、1970年代には世界各国へ広がっていきました。
すなわち、「学校教育を、人々の生涯にわたって分散させようとする理念」であり、その本来の意味は「”職業上必要な知識・技術”を修得するために、フルタイムの就学とフルタイムの就職を繰り返すこと」です。


しかし、日本では長期雇用の慣習が強いため、もう少し広く解釈して「心の豊かさや生きがいのために、働きながら、学校以外の場で学ぶ」という意味合いも含めて論じられることが一般的です。
書籍『LIFE SHIFT』がベストセラーになり、人生100年時代(これまで寿命を80年として考えてきた人生設計を根本的に考え直す必要性の高まり)という言葉が話題にのぼりましたが、リカレント教育もそのような背景から注目を集めました。
誰もがいくつになっても学び直し活躍できる社会を実現しよう、ということで、Society5.0(AIやロボットなどIT技術の進展によって仮想空間と現実空間が融合しながら実現するより豊かな社会)も見据えてリカレント教育に注力する流れが強まっていると言えます。

では具体的にどのような取り組みが有効なのでしょうか。

そのヒントは、リカレント先進地域とも言える北欧にあると言えます。
例えばデンマークには、「フォルケホイスコーレ(自己啓発・自己発見・新領域を発見する場として17歳以上から入学できる寄宿制のフリースクール」という学校や、まちのプラットフォーム的な役割を担う図書館など、社会人が学び続けるための場が複数存在します。
フォルケホイスコーレには日本からも多くの若者が留学する流れが強まっていますが、北欧と同様に、自然豊かな小さな国である日本も、人そのものを資源として生き抜いていくためにリカレント教育の機会として教育・文化を強化していく必要があるのではないかと思います。
日本では、文科省が中心となって、放送大学のカリキュラム充実、産学連携や地方創生の動きと絡めた学習機会の創出などが進められていますが、国のしくみに頼るだけでなく、民間基点で取り組むことでリカレント教育の可能性も広げられるのではないかと思います。
具体的には、企業によるEAP(従業員支援プログラム)の一環として”学びの創出”を推進する、というものです。

EAPがメンタルヘルス対策の色合いが強い、というのは、これまでもこのコーナーで何度か述べて来ましたが、従業員支援=個々がやりがいをもって働く環境をつくり組織力を高めていく、という視点で捉えれば、社員の成長・変容を促すプログラムとしてEAPを定義し直す必要があると言えます。
※弊社では「CAP(community assistance program)」と呼んでいます。
例えば、社外の機関のセミナー等のラインナップを紹介し受講を促す、業務とのバランスを取りながら学ぶことを後押しする人事制度を構築する、学びに関する地域の情報提供を行なう、といったものです。

企業における人材教育は、人事部など管理部門が担う仕事になっていると思いますが、それはあくまでも社内における人材教育を前提としています。しかし、コロナ禍で副業・リモートワークが進み、物理的に会社に属する意味が問われている今、「仕事を通じて成長・変容できる」場として組織に属する価値を高めていく必要があるのではないかと思うのです。

”タレントマネジメント”として個々がもつ強み・得意分野を見える化し配置に活かすだけではなく、一見業務には直結しない個々の関心分野や取り組んでいる活動(地域のサッカーチームのコーチをしている、学芸員資格をもっている等々)をも見える化することで、地域社会で必要とされているスキルとのマッチングをはかることもできます。
そして、地域の中でスキルが磨かれることで、組織における業務にも活かされ、社内研修だけでは高められない能力向上・人間形成の機会として意味づけることができるでしょう。



そのためには、社内外にEAP専門機関をもち、日頃から個々のタレンティズムを見える化・共有化すると共に、キャリアデザイン研修等を通して”地域社会でいかに自己を活かしていくか”という広い視野を持ってもらうことも重要です。また、所属意識・コミュニティ感覚が低い状態で会社のソトに出ていくことで、ソトの世界に刺激を受けてそのまま転職などということを防ぐため、日頃からES向上施策に取り組み、自社の組織に属している意義を実感しながら、社外で研鑽を積むという思考を養うことも重要です。

人材育成を自社だけで担う時代は終わりです。
地域を舞台に、リカレント教育の流れを活かしながら、”仕事を通して自身を高めていく”という思考を個々がもち、そこで培った強み・能力を地域に活かしていくという発想が、”人生100年時代”を生きる社会人としてのキャリアに求められます。
そのためにはまず、企業自身が地域とのつながりを大切に経営していくことが必要です。地域のNPO等と連携したり、地域に開かれた企業として経営をしながら、社員がマルチアイデンティティをもちながらキャリアを重ねられる舞台を用意していくと良いでしょう。



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