中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,082話 ファシリテーターを学ぶべき人とは

2021年12月15日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」

これは先日、私が定期的にお会いしている、ある中小企業のM社長からお聴きした言葉です。詳しくお聴きすると、会議ではその日の議題に基づいたテーマを社員が交替で発表する形で進めているそうです。これは、様々な社員にファシリテーターを経験してもらいたい、また会議の場で積極的に意見交換を行ってもらい、今後の業務をよりよく進めるための一助にしたいという社長の考えにより、このような方式を取り入れることになったのだそうです。

しかし、実際にはなかなかM社長が当初想定していたような成果は得られていないとのことでした。この方式を取り入れて既に1年が経過しているそうですが、多くの社員がファシリテーターを経験したものの、会議で積極的に発言する人は相変わらず少数であり、業務の進行にもプラスの影響は出ていないとのことでした。

そこでこの度、私もオブザーバーという立場で会議に参加させていただきました。その日のテーマは、「A業務について効率的な仕事をするためには、どうすればよいか」というものでした。

当日、私は会議の開始前に会社を訪問し、社員が会議の準備をする段階から立ち会わせていただくことにしたのです。準備段階では複数の社員が机の配置を整えたり、プロジェクターの準備を行ったりするなど手際よく進めていましたので、会議をやりなれていることがわかりました。また、準備は社員が協力し合い、活発にコミュニケーションを取りながら行っていましたので、社内の活発な雰囲気も感じていました。

その後会議がスタートし、ファシリテーターの進行のもとテーマに関する発表をある社員が始めました。発表を聴くと、事前にそのテーマに関して入念に準備をしていることが分かるようなしっかりした内容でしたので、私は聴き入っていました。

ところが、そのときです。開始わずか3分後くらいに「まどろっこしい説明だ!聴いていられない。続きは私が説明する」という大きな声が発せられました。

声の主はM社長でした。その後、社長はいきなり大きな声で話を始めましたが、それはもう社長の独壇場で話は延々と続きました。その間、ファシリテーター、発表者、その他の社員は一様に「またか」という表情になっていました。「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」とM社長が言っていた原因は、まさにここにあったのです。

つまりは、ファシリテーターが場を進行しようとしても、発表者が丁寧に準備し一生懸命に説明しても、社長が聴く耳を持たずに自分で会議を仕切るようなことになってしまうと、ファシリテーターも発表者も聴き手も会議の場にいる意味がなくなってしまいます。そして、社員からすれば、どうせ自分たちがやっても満足できないのだから、初めから終始社長が仕切ればよいでしょうということになっていまい、やる気も失われてしまうということになってしまうのです。

私がファシリテーター研修を担当させていただく際の受講者には中堅社員が多いのですが、実は社長や管理職などの権限を持っている人こそ、ファシリテーターの意味や役割をきちんと学ぶべきだと思うことが少なくないのです。

社長や管理職の方々で、会議や自分との会話で部下があまり話をしないと感じていらっしゃるのであれば、一度自分が部下の話を遮ってしまっていないか、話しにくくしていないか、振り返ってみる必要があるかもしれません。

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第1,030話 営業部、開発部、製造部など部門の連携を図るためには

2021年06月16日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

製造業において営業部、開発部、製造部などの部門間の連携が図りにくいというのは、古くて新しい議論です。

弊社は製造業のコンサルティングや研修を担当させていただくことが多く、これまでに様々な企業の関連部署の人から話を聴く機会がありました。話を聴くと、自部署の前工程や後工程への要望や不満もあり、企業全体として最適の視点を持つことは必ずしも簡単な話ではないと感じています。

これまで伺った内容としては、たとえば営業部門から開発部門への不満として「顧客は値段のことを最重要視しているのに、その点をわかっていない。コストを度外視して高機能なものばかりを作っている」といったものがあります。一方、開発部門は営業部門に対し「顧客は高機能なものの方が良いと考えているに決まっているではないか。営業が顧客に製品の良さを伝えられないところに問題がある」といような不満を持っていることが多いように感じています。

こうした話は営業部門と開発部門の間だけでなく、場合によっては製造部門と営業部門の間でもあるようです。製造部門から営業部門へ対しては、「営業はコストのことを考えずに、受注を獲得することばかり考えている。売上が上がっても、利益が出なければ意味がないではないか」と感じているのです。一方で、営業部門は「売れるから受注しているのに、製造部門は自部署の視点だけで考えて会社の売上アップのことを考えていないじゃないか」といった不満を持っている例もあるようです。

では、このような部署間の溝を埋めるためにはどうすればよいのでしょうか?

日頃から、お互いが置かれている立場や自部署としての問題点などの情報を共有する機会が定期的に設けられるとよいはずです。しかしそのためには「音頭」をとる人が必要ですし、なかなかお互いの時間が合わなかったり、ましてや今のようにテレワークが導入されていたりとすると顔を合わせる機会自体がめっきり減ってしまっています。製造部門は出社していても開発や営業はテレワークという企業も多く、部署間が連携することは思っているよりも簡単ではないようです。

しかし、部署間どころか、異なる会社同士が連携して成功している事例があることを皆さんはご存知でしょうか?それは、大田区の町工場が連携する「仲間まわし」です。

大田区には町工場が、2016年現在4,229企業(ピーク時の1983年には9,190)あるそうです。しかし、高齢化などによる廃業で多くの職人が引退し、技術力が低下してしまった企業も多く、自社のみでは顧客の要望になかなか応えられなくなってしまった企業が少なくないそうです。そこで、自社でできないことを他社に回して行ってもらう「仲間回し」の仕組みができあがったということです。

たとえば、自社では「切削」作業しかできなくても、「穴あけの技術」や「研磨の技術」など自社ではできない技術を持っている近隣の工場にその工程を回すことで、顧客から発注された製品を納品できるネットワークを構築しているのです。

このネットワークが完成した背景には、顧客の要望をまとめる企業(仮にA社)があり、そのA社が顧客へ直接営業活動をし、ネットワークによって製品を完成させるという仕組みを作ったのです。そして、このネットワークを維持継続させるために企業間のコミュニケーションを図る工夫をしたり、受注に関しては契約書を作成したり、支払いのルールを徹底するなどの仕組みを作ったとのことです。やはり「音頭取り」が肝になっているようです。

このように、企業を超えて連携し「仲間まわし」を行うことができるのですから、自社内において営業部、開発部、製造部などの部門の連携が図れないことはないはずです。

ぜひ、大田区の仲間まわしを維持継続しているA社のような音頭取り(幹事)を自社内に設けて、連携が図れる仕組みの構築に向けて積極的に取り組んでいただきたいと考えています。

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第1,016話 部下が思い通りに動かないと悩んでいる上司へ

2021年04月21日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「社員に会社の理念やビジョンがなかなか浸透しない」、「部下に部や課の方針を何度説明しても、行動に結びつかない」、「指示をしてもイメージした通りに動いてくれない」

これは経営者や管理職の方々とお打ち合わせをする際に、「定期的」と言っていいほどにお聞きする言葉です。とはいえ、これらは私が人材育成の仕事に就いた30年ほど前から継続して聞いていますので、上司から部下に対しての普遍的な悩みの一つだと感じています。

このような話を聞くたびに思い出すのは、「大阪城の火事」の話です。出典はわかりませんが、例えとしてよく使われる話で、皆さんはお聞きになったことはありますでしょうか?

戦国時代の武将、豊臣秀吉が冬の強風の夜に家老を集めて「今夜は風が強いから火事に気を付けるように」と指示をしたそうです。それを聞いた家老は自ら行動することなく、そっくりそのまま奉行に対して同様の指示をしたのです。そうしたところ奉行もまた自身では何もせずに、足軽に同様の指示をだしたのです。結局、誰も具体的に動くことがないまま、その夜に大きな火事が起きてしまったという逸話です。

この逸話からは様々な教訓が得られそうですが、大きく分けて3つのことが考えられます。 

1つ目は、それぞれの役割を明確にする必要性です。この例で言えば、秀吉からはじめに指示を受けた家老が奉行へ指示を出す際に、ただ「火事に気を付けろ」で済ますのではなく、「見張りの人数を増やせ」、「今夜は自宅には帰るな。城につめていろ」、「水をたくさん用意しておけ」、「見回りの回数を増やせ」などの具体的な指示をすれば火事を防げたかもしれません。足軽に対する奉行にしても同じことです。

2つ目としては、誰もが主体的な動きをしなかったということです。家老も奉行も上司の言葉をそっくりそのまま部下へ伝言をしているだけだったのです。自分では何もせず伝書鳩のように伝えるだけでは、所詮は他人事の対応にすぎないとも言えます。誰もが他責(他人の責任)や受け身の姿勢でなく、能動的・主体的に動けば火事は防げたかもしれません。

3つ目としては報告・連絡・相談が徹底できていなかったということです。各々の立場で指示した後に、上司に対してきちんと報告をする体制ができていれば、(この場合は指示が足りないので)上司が再確認をして火事は防げたかもしれないのです。

経営者や上司の皆さん、冒頭の例のように「社員や部下が思うように動かない」などと考えられているようであれば、何らかの動かない原因があるはずですので、それを探る必要があります。まずは「大阪城の火事」の教訓を参考に、ぜひ一度自分の「指示」をチェックしてみてください。

指示は具体的にしているか、自分や部下が主体的に動くようにしているか、事後の報連相を徹底させているかなどの観点から問題がないかをチェックすることです。そして必要であれば自分の指示の仕方や表現の仕方を変更するなど、積極的に取り組んでみていただきたいと思います。(冒頭の写真はWikipediaより)

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第1,014話 新入社員の素顔を知るためには

2021年04月14日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

多くの企業では新入社員(以下新人)の研修を終え、今週からそれぞれの職場へ配属しているタイミングだと思います。毎年、新人の配属後数週間~数か月が経過すると、OJTを担う先輩社員や上司から様々な声が聞こえてくるようになります。

たとえば「新人に仕事を教え始めたが、指示したことが伝わらない。その結果、とんでもないことになった」、また、「2人の新人が配属されたが、1人は優秀だと感じるが、もう1人は全く話が通じない」などです。いわゆる「打てば響く」人がいる一方で大器晩成型の人もいます。短期間でレッテルを貼ってしまうようなことはしないでいただきたいと思うのですが、このような話を聞くと現場で苦労されている様子が伝わってきます。

また、コロナ禍の今、新人が配属されてもすぐにテレワークとなってしまい、仕事の指示もオンラインで行うことも多いです。そのため一人一人がどういうタイプなのかを見極めるのも難しいことでしょう。

これに関して、先日以前コンサルティングを担当させていただいていた企業のA社長から、参考になる素敵な話を伺いました。

A社長の会社は社員数が200名強の規模ですが、社員数は毎年少しずつ増えていて5年前からは定期的に新人を採用しています。新人教育はOJTが中心なのですが、特筆すべきはA社長自ら新人を対象に1週間に1回、勉強会を実施しているとのことです。そしてその時間は、仕事上のスキルや知識を伝えるのではなく、ともに論語(孔子)や韓非子、荘子、老子などの書物を読み解くことにあてていて、少しずつ読み進めていらっしゃるのだそうです。

そうした時間を新人と共にすると、仕事ではすぐには表れない一人一人の素顔が見えてくるのだそうです。たとえば、1人ずつ順番で音読したときに、読めない字に行き当たることがあります。そうすると、読み方を質問する人がいたり、一生懸命考えたりする人がいる一方で、読めないことをごまかしたり、適当にすっ飛ばして読んだりする人もいるのだそうです。

そういう時間を毎週重ねていると、各々がどういう人なのか、何を大切にしているのかなどの本質的なところが見えてくるとのお話でした。

これを聞いて感じたのが、仕事を教える側からすると、目の前の仕事をミスなく効率よく進めることのみに重きをおいて新人を評価しがちです。しかしそれだけで判断するのはやはり早急だということです。

今後社員として一緒に仕事をしていく上では、仕事を少し離れた一人一人の人間としての本質的な部分を知ることはとても大切です。それを知るためにはこの会社のように仕事にはすぐに直接つながらなくても、このような時間を共有することが大切だということです。

昨年の春に入社した新人からは、入社直後に緊急事態宣言が発令されて即テレワークになってしまい、この1年間で出社した日数は一月にも満たないという話を少なからず聞くことがあります。また、現在もコロナ禍が続いていることから、会社によっては今年も同じような状況になるケースが少なくないと思いますが、オンラインでのやりとりのみでは、仕事上の要件のみに終始してしまいがちです。

ぜひ、経営者や上司、先輩社員の皆さんには新人の人となりを理解するためにも、先に紹介したA社長のような仕事から少し離れてやり取りを行う機会を設けるように心がけていただきたいと思います。

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第1,002話 異動時の引継ぎに慌てないようにするには

2021年03月03日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「そういう経緯だったのですね。引継ぎを受けていなかったものですから、状況がわからなくてすみません」

これは、入社したての人や異動してから日が浅く、まだ担当業務に慣れていない人からよく聞く言葉です。また、弊社に研修の依頼をいただいた企業等で担当者と打ち合わせをしているときなどに、こちらが過去の経緯を説明した後に発せられることも多いです。

今年も年度末まであと僅かです。担当者から「異動が決まりました」とご連絡をいただいたり、打ち合わせの中で「来週末に異動が発表されるのですが、もしかしたら異動することになってしてしまうかもしれません」というような話を聞く時期になりました。

この異動に関してはデメリットがある反面、メリットもたくさんありますので、それ自体には何ら異論はありません。しかし、様々な組織とお付き合いをさせていただく中で定期的に感じるのは、規模の大小を問わず担当者が変わる際に、きちんと引継ぎができているところが圧倒的に少ないということです。

2019年にサイボウズチームワーク総研が、ビジネスパーソン400人に対して行った「仕事の引き継ぎ」に関する意識調査では、67%の人が「引継ぎがスムーズだった」と答えているようです。これは私が想像していたよりもずっと高い数値です。

一方で、「引継ぎがスムーズでなかった」とした人の理由としては「十分な時間がなかった」、「前任者の離任直前に自分が担当になり、心の準備がなかった」、「仕事の全体像や過去の履歴がわからないまま引き継がれた」がトップ3になっています。

それでは、引き継ぐ方および引き継がれる方の双方にとってスムーズな引継ぎをするためには、どのようにすればよいのでしょうか?

それには様々な方法があるかとは思いますが、弊社では「引継ぎを当事者任せにするのではなく、組織として引継ぎのルールを決めてしまう」ことを、まずお勧めしています。たとえば、引継ぎ書のフォーマットを共通にするなどの方法があります。しかし、これまで様々な企業の状況を伺っていると、統一フォーマットを決めていたとしても人によって記載内容に濃淡があり、細かく作成する人がいる一方で、大雑把な人もいるようです。

では、さらに効率よく引継ぎをするためには、どうすればよいのでしょうか?

実は異動時は、引き継ぐ方・引き継がれる方のどちらにも時間の余裕がないことが多いのです。そこで、異動時にあわてて引継ぎ書を作成するのではなく、日ごろから各自が担当業務を「見える化」しておき、引継ぎの際にはそれを引き継ぎ書としてスムーズに調えられるようにしておくことがお勧めです。

なぜならば、私たちも人間である以上、異動以外にも急に病気なってしまったりすることもないとは言えません。担当者が突然休んだり、長期の休暇を取得したりしなければならないようなことが発生する場合があります。その際にどのように対応するのか、日ごろから各々がどういう仕事を担当しているのか、そうした情報を日ごろから組織内で共有することができていれば、万が一のことがあったときにもリスクを最小限に抑えることができるわけです。

企業などの組織においては、隣の席の人であってもどういう仕事を担当していて、どのように進めているのか案外わからなかったりするものです。異動の引継ぎのときだけでなく、日ごろからお互いの仕事の内容を共有することを意識しておくことも大切なのではないでしょうか。

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第1,000話 オンライン集団討議のメリット

2021年02月24日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「今年の採用活動では、集団討議もオンラインで行います」

これは先日、ある企業で採用と人材育成を担当されている方から聞いた言葉です。

コロナ禍もあり、オンラインによるテレビ会議システムが一般的に使用されるようになって、そろそろ1年になろうとしています。オンラインを仕事で使用する範囲は日を追うごとに広がっていますが、2022年の採用活動では面接のみならず、集団討議までオンラインで行う企業が増加することになりそうです。

冒頭の担当者の話では、「オンラインでの集団討議の参加者向けのマニュアルがあるため、学生はそれを見て練習しています。それを踏まえて、こちらも臨まなければなりません」とのことでした。

これまでにまだ数はそれほど多くはないのですが、弊社ではオンラインで管理・監督職への昇格登用のための面接官や、採用試験での集団討議の面接官を担当させていただいたことがあります。それらの経験を踏まえ、オンラインでの集団討議に採用側としてどのように対応したらよいのかを改めて考えてみたいと思います。

これまでの経験を踏まえて考えると、基本的には対面とオンラインでの集団討議は大きくは変わらないということです。もちろん、それぞれにメリットとデメリットがあるわけですが、今の状況を考えればオンラインの方がむしろメリットが多いのかもしれません。

一例をあげると、昨年対面での集団討議を担当させていただいた際には、コロナウイルスへの対策のためにソーシャルディスタンスをとる必要がありました。そのため、討議の人数が5人を超えてしまうような場合には、一番遠くに座っている人同士の間で物理的な距離が生じてしまい、お互いの表情が少々見づらいということになってしまいました。また、声が小さい人がいると聞こえにくいことや、ホワイトボードの板書の文字も見えにくいということもあったのですが、オンラインでは基本的にそうしたことは起こりません。

さらに、対面の場合はマスクの着用が必要なためお互いの表情が確認しづらいのですが、オンラインであればマスクの必要がないことから、参加者同士が互いの表情をしっかり確認することができます。この点は面接官にとっても評価の際に大きなメリットになります。

以前は私も「集団討議は対面でなければ」と思っていました。しかし、今ではこのようなオンラインならではのメリットを踏まえれば、今後は採用側もそのメリットを積極的に活かした進め方を探っていくことが大切だと考えています。

なお、これは対面の場合でも同じですが、集団討議の目的に向けてどのように参加者が討議にかかわっていこうとするのかはオンラインにおいても重要なポイントです。討議終了時に一人一人が存分に討議に臨めたと思えるようにするために、参加者自身がどういう姿勢で臨もうとするのかは、ある意味では距離があるオンラインだからこそより大切です。単にマニュアルに沿って参加すればよいということではありませんし、面接官にはそこをきちんと見極めて評価をしていくことが求められていると考えています。

今年も弊社では外部の立場で面接官を担当させていただくことがありそうです。その際は参加者一人一人の人生の岐路に居合わせることになるわけですので、誠心誠意面接官の役割を担いたいと考えています。

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第998話 危機意識を継続させるには

2021年02月17日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「3.11の直後はやっていましたが、時間が経つにつれて放置してしまっていました」

「やはり定期的に見直さないといけないですね」

これは先日、2月13日夜11時過ぎに東北地方を中心に発生した大きな地震の後のテレビ番組でのコメンテーターの発言です。10年前の東日本大震災の直後は、災害に備えて多くの人が飲料水や食料を含め防災グッズを準備していたものの、やがて時間の経過とともに危機意識が薄れてしまい、そのまま放置してしまった人が少なくなかったということです。

「危機意識」とは危機が迫っているということを感じることです。アサヒグループホールディングスが2017年8月に行った「毎週アンケート あなたの防災対策は?」によると、7割近くの人びとが防災意識を持っているとのことです。その中で防災に関する用具を備えている人は40.5%、準備をしなければと考えているものの、行っていない人は50.2%だったとのことです。

この調査から既に4年が経過していますので、危機意識はさらに下がってしまっていることが予測できます。時間の経過ととも危機感が薄れるのは人間として致し方ないことだとは思いますが、だからといってそのまま放置してしまうと、災害のたびに同様のことが繰り返すことになってしまいます。

それでは、私たちが危機意識をできる限り持ち続けるためにはどうすればよいのでしょうか?そこでお勧めしたいのが、「メンテナンス」という考え方を持つことです。

「メンテナンス(maintenance)」とは維持、管理、保守という意味です。機械や建物、コンピュータシステムなどの設備について、故障などの不具合が生じることなく、正常な状態が維持されるように点検したり、手入れをしたりすることです。また、このメンテナンスは何も機械や建物に限った考え方ではありません。たとえば人の身体の場合でも、定期的にメンテナンスをしていれば大きな病気を防ぐことができたり、早い段階で何がしかの不調を発見できたりするわけです。そういうことからモノであっても人間の体であってもきちんとメンテナンスを行うことはとても大事なことであると言えます。

したがって、このメンテナンスを定期的にしっかりと行うことで、危機意識が薄れていってしまうことを防ぐことができるわけです。それではこのメンテナンスを忘れずに行うためには、私たちは一体どのようにすればよいのでしょうか?

そのためには、モノでも身体でもメンテナンスをした直後に次回のメンテナンスをする日時を決めてしまうことです。プライベートな事柄であれば自身の都合でスケジュールを決定すればよいです。組織にかかるものであれば、誰が・いつ・どのように行うかをその段階ではっきり決めてしまうことが必要です。そうしないと、誰かがやるだろうとお互いに他者をあてにしてしまい、いつまでたっても決まらないことになってしまいかねないからです。

私たちは災害が起こった瞬間には、誰もが強い危機意識を持つことでしょう。しかし、人間はいつまでもそのことだけを考えて生きていくことはできないわけです。時間の経過とともに危機意識は薄れていくものです。その前提に立って、メンテナンスのタイミングをあらかじめスケジュールに入れて実施を徹底する、これが鉄則です。

東日本大震災から間もなく10年の節目を迎えます。「そういえば最近防災グッズのチェックをしていないな」という方は、ぜひこれを機会に中身をチェックしてください。、次にいつチェック(メンテナンス)をするかもしっかり決めて、スケジュールに入れるようにしていただきたいと思います。

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第948話 チームで寄ってたかって部下(後輩)を育てる

2020年08月19日 | コンサルティング

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「1位:指導をする人材が不足している。 2位:人材を育成しても辞めてしまう。 3位:人材育成を行う時間がない。」

これは、厚労省が毎年実施している能力開発基本調査の中の「人材育成に関する問題点」に対する令和元年度の回答内訳(複数回答)です。ここ数年不動の順位ですが、いずれの項目も前年より回答数が増えている点が注目できます。

さて、今年は新型コロナウイルスの影響で、新入社員の教育を従来通りに行えなかった企業が大半だと思います。

先日お会いしたある企業の人事担当者も、「緊急事態宣言により新入社員研修は中止したので、研修は4日間で終わりました。その後はテレワークになりましたので、新人教育として人事から定期的に課題を与えていました。しかし、突然のことだったので課題と言っても業界情報を読むようにさせるくらいしかできなくて・・・おまけにパソコンを持っていない新人も多く、彼らには課題を郵送しました。その後配属になりましたが、育成は配属部署にお任せの状態です。現在もテレワークがメインですから、育成をどのようにしているのかわかりません。人事でもフォローができていません」と話していました。

この話からも、新入社員の育成が思うように進んでいないことがよくわかりますが、今年は同じような状況の企業が少なくないでしょう。

このような状態が続いてしまうと新入社員が育たないだけでなく、状況によっては早期に退職を希望するようなことにもなりかねません。

そうならないようにするためには、すぐに何かしらの手を打つ必要があるのです。そこでテレワークで日々顔を合わせることができない今だからこそお勧めしたいのが、「チーム単位で新人や若手を育てる」ということです。

昨年までのように対面での指導が中心であっても、冒頭の調査結果のように人材育成がうまく進んでいない問題点として「指導する人材が不足している」が1位になっているのです。

ましてや、今年のように対面自体が限定されてしまっている場合には、これまでのように上司(先輩)と新人の一対一の関係が主になってしまうことはお勧めしません。その上司(先輩)が指導の経験が少ない人であったり指導が不得手であったりする場合には、新入社員への指導がほとんど進まないことが懸念されるからです。

そうならないためにも特定の上司や先輩に限定するのでなく、ぜひチーム全員が育成者としての自覚をもつことが肝要です。たとえテレワークでオンライン上であったとしても、新入社員を「寄ってたかって」指導するのです。仮に5人のチームであれば、1人の新人に対して他の4人が1人10分ずつ時間をとれば、毎日40分の指導を受けられることになるからです。

このように伝えると、「テレワークだからこその忙しさもあるので、それもなかなかできない」とおっしゃる人もいます。しかし、テレワークによる往復の通勤時間分の余裕は生まれているはずなのです。ぜひ、その時間分を部下(後輩)の育成の時間にあてていただきたいです。

コロナ禍で働き方の環境が大きく変わっている今だからこそ、できない理由ではなくどうすれば新入社員を育てられるのか、ぜひ知恵を絞って取り組んでいただきたいと思います。

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第947話 情報共有はあなたの会社を救う

2020年08月16日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

今回は経営者の皆さんに1つの施策をご提案いたします。これを実行すれば、あなたの会社は社員が辞めていくこともほとんどなくなり、これからも会社は成長していきます。

その施策は「情報の共有と伝達スピードのアップ」です。

「なーんだ、そんなことはわかっているよ」そう思われたでしょうか。そのとおり、誰もが十分わかっているはずです。ところが一筋縄ではいかないのが情報共有です。

難しいとはいえ、情報共有はやってできないことではありません。今回はまわりくどい説明は抜きにして、「とにかくこれをやってみてください」という具体策をご紹介します。

情報の共有と伝達スピードのアップのためにやっていただくことは、たった1つ「上から下」ルールの決定と実行です。具体的には、部下が上司に情報(報告)を上げたら、上司は必ずその情報がどのように使われてその結果どうなったかを部下に知らせる「義務」を課すことです。

「先日君が作ってくれた報告書は役員会でのディスカッションでこういうふうに使った。その結果、○○の案件につてはXXという方向で話が進んだ」という感じです。もし、あまり役に立たなかったら、そう言えばいいのです。ただし、どこに問題があって役に立たなかったかは具体的に伝えて改善策を指示します。

振り返って、あなたの会社の管理職が「下」へ情報を伝えることをしていないとしたら、部下のモチベーションは下がり続けます。部下にとって単に情報を上げる(報告をする)だけでは、その仕事に何の意味があるかわからないからです。言ってみれば、上司というブラックホールに報告書を放り投げただけ、というわけです。

自分の努力した結果が役に立っているのかどうか不明なままではモチベーションが低下し、努力すること自体が面倒になります。やがて仕事が嫌になるかもしれません。

自分の仕事がどうやって使われたか、それを知るだけでモチベーションは上がります。その結果、「下から上」の情報量は格段に増えると同時にスピードもアップしていきます。情報共有が進めばチャンスを掴む確率もぐっとアップしますし、リスクに対する備えも素早くできます。その成果、従業員の定着度の向上と利益率のアップに必ずつながります。

経営者の皆さん、「上から下」たったこれだけのことです。管理職全員を集めて命じてください。早速今日から始めましょう

 

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第936話 仕組みにこだわると、人は成長しなくなる

2020年07月08日 | コンサルティング

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「この書類を提出することは、社内のルールになっています」

これは弊社がコンサルティングを担当させていただく際に、その企業の社員からよく聞く言葉です。書類の使用目的ははっきりとはわからないけれども、以前からのルールになっているため、とりあえず提出しているとのことです。

このような状況のときには、書類を提出するルールになった理由を経営者や管理者にお聞きしていますが、多くの場合は「過去にクレームが起きたことがあったため、再発防止のために書類の提出を義務にした」というような答えが返ってきます。

このようにトラブルが起きるたびに新たなルールを作ったり、マニュアルを変更したりするなど、仕事を「仕組み」にすることは、再発防止のためには意味のあることです。しかし、冒頭の例のように時間の経過にともなってそもそもの理由が形骸化してしまうと、手段自体が目的化してしまうことになります。

ここでいう仕組みとは、異動や退職によって人が変わることがあっても、仕事がまわるシステムを構築することであり、制度やルール・マニュアルなど、組織を運営していくための決まり事や方法などのすべてを指します。

仕組みにすることのメリットは、仕事の手順をシステム化することによって、各自の知識やスキルなど属人化したものに頼らずに、仕事を平準化できることにあります。新人や異動直後であっても仕事の手順がシステム化されていれば、その仕事を比較的短時間で身に着けることができるのです。

そのように考えると、仕組みは組織を運営していくうえでなくてはならない大切なものだということがわかります。

しかし一方で、仕組みに依存し過ぎてしまうと、マイナスの面が生じることもあります。たとえば、目の前でトラブルが生じていて「おかしい」と感じたとしても、それが仕組みになっていないことを理由に目を背けてしまったり、他者に伝えるべきことを伝えなかったりしてしまいかねないのです。

このような状態が続くと、やがて社員は主体的に動くよりも決まった仕組みに従う方が圧倒的に楽だと感じるようになってしまい、自ら成長することを放棄してしまうことになりかねません。それは本末転倒の事態と言えます。

それを避けるには、どうすればよいのでしょうか。

まず、仕組みが必要な仕事とそうでない仕事をはっきり分けることが必要です。一般的に、仕組みが有効に働くのはルーチンワークと呼ばれる定型的で繰り返し行う作業です。反対に状況対応が必要なものには仕組みは向かないということが言えます。

本来は仕組みが必要な仕事なのにそれがない場合には、トラブルが起きたり生産性が下がってしまったりしますので、この仕事には仕組みが必要なのか否かをきちんと見極めることが必要です。

そして、仕組みを作る場合には、何でもかんでも仕組みに頼ろうとしてしまうと前述のように社員が育たなくなるというマイナス点もしっかり認識して進める必要があります。

コロナ禍をきっかけに、多くの企業でテレワークが始まって3か月が経過していますが、ここにきてテレワークならではの課題も顕在化してきているようです。

今後、テレワークをよりよく進めていくためにも、新たな仕組みが必要になっていくものと思われますが、ぜひ仕組みと社員の成長のバランスを取りながら進めていただくようにお願いいたします。

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