中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,229話 営業成績を上げられる普遍的な方法とは

2024年08月28日 | コンサルティング

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「たこ焼き屋さんを始めませんか?」、「ゴルフ事業を始めませんか?」

これは、弊社のホームページの問い合わせフォームに届いた売り込みメールの内容です。

人材育成を生業としている弊社がたこ焼き屋やゴルフ事業を始める可能性は0(ゼロ)と言っていいほど低いですので、売り込みとしては極めて成功率が低い営業行為であると感じています。

さて、昨年私は「ザ・ミュージック・マン」というミュージカルを観劇したのですが、そこでは20世紀のセールスの厳しさが歌われていました。内容は、1912年頃にデパートやチェーン等の大型日用品雑貨店の登場や自家用車による生活の変化により、汽車で土地から土地へ移動し商品を売るセールスマンは時代遅れなものになり、セールスが厳しくなったというものです。

営業パーソンがセールスをするということは、古今東西このように簡単なものではないということを、このところ改めて感じています。

今から20年ほど前でも、現在のようにホームページのお問い合わせフォームを使用して営業活動をしたりSNSを駆使したりする営業活動は主流ではなく、電話や郵送やFAX、飛び込みなどが主な営業方法だったわけですから、現在とは隔世の感があります。

しかしどのような手法を使用するにしても、「モノを売る」ということは昔も今も簡単なことではありません。ましてや、現在のように商品やサービスの内容、価格に歴然とした差がない場合には、他への優位性をつけるためにも営業パーソンの技術を磨くということが大切なのではないかと考えています。

弊社では、定期的に営業研修を担当させていただいたり営業パーソンに同行したりするなどして、コンサルティングを担当させていただくことがあります。それらの経験を通して改めて思うのは、「営業パーソンが一律に良い営業成績を上げられるような、簡単かつ普遍的な方法はない」ということです。

営業は実に奥が深く、様々な知識や技術が必要となる仕事です。具体的にはアプローチ方法、実際のアプローチ、顧客との信頼構築、プレゼンテーション(実際の提案)、顧客の拒否反応への対応、クロージングという一連の流れが必要であり、それらを顧客との関係性を維持しながら効果的に行う必要があるのです。

それでは、営業パーソンの技術を上げるためには、どうすればよいのでしょうか。

具体的には、まずは営業に対する動機づけ、タイムマネジメントの訓練、営業パーソンの製品知識訓練、コミュニケーション力等の訓練が必要となります。さらに、個々の顧客の業種や置かれた状況に応じたきめ細かな対応も必要となってきますので、これらを職場でのOJT や研修などで身に付けて行くことが求められます。このように、営業には知識や経験、コニュニケーション力をはじめ、様々な力が求められるものであり、冒頭の例のように人材育成を目的に研修やアセスメントを主たる業務としている弊社へ「たこ焼き屋さん」 を始めませんか?といったような画一的なメールを送り付けてくるなどということは、本来はあり得ないことなのだと考えています。

営業活動はかように難しいものではありますが、同時にその分やりがいがあるものでもあります。営業パーソンの皆さんにはぜひ、頑張っていただきたいと思います。

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第1,164話 下手な鉄砲はいくら打っても当たらない!

2023年04月26日 | コンサルティング

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「何度断っても電話をかけてくる」、「ホームページに『商品・サービスの売り込み等は、固くお断り致します』と記載しているのにもかかわらず、売り込みのメールを送付してくる」

これらは外部の会社から弊社への営業行為の現況です。会社や上司から「断られても繰り返し電話をかけるように」また、「1日に決められた数のメールを送るように」と指示されているのだとは思いますが、このような一方的な営業をしてくる会社に対しては、マイナスのイメージを持つ人は少なくないのではないでしょうか。また、こうした営業活動がはたしてどれだけの成果を上げているのか、疑問に思わざるを得ません。

営業パーソンにとって、新規開拓は必須の業務です。コロナ禍でテレワークを取り入れる組織が増え、法人営業の場合は新規開拓のための電話をかけても担当者の在席率が低くなったため、営業活動の難易度が上がったことは事実です。しかし、そういう状況だからこそ、限られた条件の中で顧客を着実に獲得するためには、営業活動の「はじめの一歩」である顧客への電話のかけ方やメールには、今まで以上の工夫が必要なのではないでしょうか。

では、こうした状況の中で、営業パーソンはどのように工夫をすればよいのでしょうか。

まず、はじめにお伝えしたいことは「下手な鉄砲も数撃てば当たる」ことはないということです。顧客には様々な業種や規模があります。メールにしろ電話にしろ、相手先である顧客企業の情報をしっかり収集して、それに合わせた活動をしなければ顧客になりえることはないのです。たとえば、社長宛にメールを送付するのならば、単に「社長様」とするのではなく、予めホームページで社長の名前を確認して宛名に記載するべきです。また企業の理念やビジョンに合致したセールストークにする、従業員数等も確認してそれに応じた提案をするなど、個別の工夫をすることが必要です。つまりは、どの企業にも通じるような文章を単にコピーアンドペーストして送っていることが容易に想像できてしまうような文章では、相手には全く響かず結果にも結びつかないということです。

電話の場合も、同様に顧客の側からはっきり「必要ありません」と断られたら、少なくとも翌月に再び営業することは控えなければ、顧客の側からは「こちらの話を無視している、失礼な会社だ」とネガティブなイメージだけを持たれてしまうことになってしまいます。

以上、新規営業のポイントのごく一部をご紹介しましたが、コロナ禍を経て、これからの営業は量を追及するのではなく質を上げることを優先し、効率よく進めることが今まで以上に必要です。さらには、営業活動も個人だけに任せるのではなく、チームなどの組織単位で取り組むことも肝要です。営業活動に伸び悩んでいる営業パーソンに「1日100件電話しろ」、「飛び込み営業を何件行え」と叱咤していても、効果はなかなか望めないはずです。下手な鉄砲は数を打っても、それだけでは打率は上がらないのです。

努力はしていてもなかなか営業成績が上がらないと悩んでいる営業パーソンの皆さん、もし「数を打つ」ことだけを重視してしまっているようでしたら、あらためてここで組織単位で営業のやり方を見直し、必要な見直しを行ってみることをお勧めします。

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第1,148話 リバウンドしない片付けの方法とは

2022年12月28日 | コンサルティング

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

178.4㎏。これは、あるものの日本人一人あたりの年間消費量なのですが、何の消費量なのかわかりますでしょうか?

答えは、紙・板紙の消費量です。(出典:日本製紙連合会)紙・板紙の消費量の世界平均は52.3㎏で先進国が高い傾向にあるとのことですが、その中でも178.4㎏はかなり高い数字です。その中でコピー用紙の割合がどれくらいなのかは不明ですが、ペーパーレスの時代と言われて久しいにも関わらず、私たちは相変わらずたくさんの紙を使用していることがわかります。

私はこれまで仕事で様々な組織にお邪魔していますが、事務所がきれいに整理整頓されている組織がある一方で、書類が山のように積まれている光景が日常的になっているところもあります。どちらかというと、書類に囲まれてしまっている組織の方が多いようにも思えます。

さて、いよいよ2022年も終わりが近づいています。昨日、今日は職場の大掃除をしたという人も多いのではないかと思います。日本トレンドリサーチが2022年12月4日~12月8日に行った「オフィスの年末大掃除に関するアンケート調査」によると、42.1%が勤めているオフィスで年末の大掃除をしていると答えたそうです。先述のように、たくさんの紙を使用している私たちですから、オフィスに紙類が溢れてしまって必然的に大掃除の必要性が生じている組織も多いのでしょう。

しかし、資料の整理をしてきれいにした後、皆さんはその状態を維持できているでしょうか。せっかくあれだけの資料を捨ててきれいにしたはずなのに、時間の経過とともにまた元の状態に戻ってしまうという人は少なくないはずです。片づけるのは大変ですが、元の状態に戻るのはあっという間です。では、一体なぜきれいにした状態を維持継続することができないのでしょうか?

理由は様々あるかと思いますが、私は多くの場合きれいにすることだけが片付けの目的になっていて、仕事の流れを考えてモノの置き場所を決めていなかったり、書類の要不要の判断に基準がなかったりするなど、仕事の全体像が描けていないことが理由だと考えています。

それでは、これをどう解決すればよいのでしょうか?お勧めは、いきなり片づけを始めるのではなく、その前に仕事の流れを図にするなどにより「見える化」し整理してから始めることです。流れが明確になったら、次に仕事の流れに応じた書類の置き場所を決めたり、業務別に細かく分類したりファイルに入れるなどの整頓をすれば、その後はスムーズに仕事を進めることができますし、リバウンドを防ぐこともできるはずです。

毎年この時期になると雑誌やテレビなどで片付けに関する方法が様々紹介されるため、全体像を描く前にファイルやボックスなどの道具を購入することから始めてしまいがちですが、まずは仕事の流れをきちんと整理して、その上で取り掛かることがお勧めです。リバウンドを生じないための年末の片付けや大掃除のポイント、参考になれば幸いです。

さて、2022年のこのブログも今回が最終回になります。今年も一年間お読みいただき、ありがとうございました。来年も引き続きいろいろな情報を発信していきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは皆さま、良いお年をお迎えください。

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第1,131話 人材への投資に向けた取組

2022年08月31日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「トップの方針で研修の予算が削られることになってしまいました。人事部としてもトップの判断に正直驚いていますし、ショックです」

これはコロナ禍の少し前、4,000人規模の社員がいるA組織の研修担当者からお聞きした言葉です。弊社がこの組織の研修を担当させていただくようになって以降、その時点で10年経過していましたので、こちらとしても非常に残念だと感じました。研修を中止した理由をお聞きしたところ、人材育成にかかわるコストを今後は顧客へのサービス提供に振り向けるというトップの考え方ということでした。

顧客へのサービスを厚くすることは組織の戦略としてとても大切なことだと思います。しかしサービスを提供する担い手である社員の育成を中止や削減してしまって、よりよいサービスを提供することはできるのだろうか、目的と手段がちぐはぐになってしまってはいないだろうかと感じたことを覚えています。

組織にとって「ヒト・モノ・カネ」は重要な経営資源です。中でも「ヒト」は最も大切な資源だと考えられており、ここ数年、様々な組織で人材への投資に関心が高まってきています。先が見えない時代と言われて久しいですが、そういう時代だからこそ競争力の源泉は人だと考えられるようになってきているのです。そのために、組織の将来を見据えて自組織にはどういう人材が必要なのか、それをどのように育成するのか。あるべき姿から逆算して考える必要性がこれまで以上に高まってきているということなのでしょう。このように人材とその育成に注目が集まるようになってきたことにより、企業に投資する際に人材戦略が重要な判断材料になる傾向にもあるようです。

かつて、景気が悪くなるとコスト削減の一環として早々にカットされていたのが、広告費、交通費、交際費と並んで教育費でした。実際、「設備投資したため、教育はしばらくお預けにします」という話を経営者から聞いたこともあります。確かに社員を採用し、社員教育を行うなどの人材への投資は、今日行ったからといって必ずしもすぐに効果が現れるものでもありません。設備投資などに比べ目に見えないだけに、その意味や価値がはっきりしないと思われてしまい、費用対効果の面などから効果がすぐに見込めないものは、当然のように後回しにされてしまっていた時代でもあったのです。 

そのような時代を経て、最近はようやく人材の価値を高めることに注目が集まるようになってきています。今後、投資家の関心もますます人材への投資に向けた取組に関する情報に向かっていくのではないでしょうか。

しかし言うまでもなく、人は簡単に育つものではありません。そのための投資も時間をかけてようやく回収ができるものであり、費用対効果の観点から急ぎすぎることなく、じっくり丁寧に行っていただきたいと思うのです。そして、先述のA組織のように人材育成を一旦中止してしまったところも人材育成の重要性を再認識し、取り組みを再開することを期待したいと考えています。

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第1,104話 女性管理職を増やすための意識改革とは

2022年03月09日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「活躍してもらいたくて女性管理職に任命したけれど、実は本人がそれを歓迎していないのです」

これは、ある500人規模の組織の女性副社長から聞いた言葉です。その方は初の女性副社長として社外から抜擢されたのです。その使命の一つに女性社員の活躍支援があったため、女性社員の声を積極的に取り上げたり、活躍が期待される女性を積極的に管理職に登用するために働きかけを行ったとのことです。

ところが、管理職に任命して1年が経過したころ、当の女性から「本当は管理職にはなりたくなかった。」との話を聴いたのだそうです。組織のため、本人のため、後進のために良かれと思って登用したつもりなのに、歓迎されるどころか職を解いてほしいという声を聴いて残念に思ったのだそうです。同時に、女性管理職を増やすことの難しさを改めて感じたという話をしてくださいました。

さて、3月8日は「国際女性デー」でした。国際女性デーとは「国や民族、言語、文化、経済、政治の壁に関係なく、女性が達成してきた成果を認識する日」とのことです。日本では、諸外国と比較して依然として女性リーダーの数が少ない状態が続いています。女性管理職の割合のトップであるフランスの約4割と比べ、日本はわずか1割強(厚生労働省の「雇用均等基本調査」課長相当職以上の「女性管理職割合」は12.4%)です。

私は時々、女性管理職として活躍をされている方々の話を聴く機会がありますが、自ら管理職を志望して職位に就いた人は1割ほどで、それ以外は管理職になることを躊躇したものの、推薦や人事によってなったという人の方が圧倒的に多いと感じています。これらを踏まえると、多くの女性は管理職というポジションに対して、敷居の高さを感じてしまっているのではないかと思っています。

その理由としては、女性管理職として活躍しているロールモデルの数が圧倒的に少ないことがあるのではないかと考えていますが、それに加え男性の側にも女性管理職を受け入れる意識が醸成されていないことも大きいのではないかと思っています。現にある女性管理職から聞いた話では、管理職になった後に一部の男性社員から無視をされたり、意地悪をされたりするなど困った経験があるとのことでした。冒頭で紹介した女性管理職も、こうしたことが壁になっていたのかもしれません。

一方で、管理職になったがゆえのプラスの声もたくさん聴きます。具体的には管理職になって組織全体を俯瞰して見られるようになったという感想は多くの人が口にします。これは上のポジションに就いたからこそ得られた経験によるものだと思います。

それでは、今後女性管理職を増やしていくためにはどのようにすればよいのでしょうか。これまで様々な女性社員の声を聴いてきて私が強く思うのは、女性だけに意識変革を求めるのではなく、男性社員にも意識を変えてもらうために様々な場面で積極的に働きかけていくこと。それを少しずつであっても、根気強く進めていくことが何より大切ではないかと感じています。

日本において女性管理職がなかなか増えないのは、これまで長い時間の中で培われてきた日本の文化や風土といったものも影響しているはずです。だからこそ、焦らず、諦めず、女性にも男性にも意識変革を求め続けることが大切だと改めて思うのです。

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第1,094話 組織の断トツ一位として挙げられる問題

2022年02月02日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

弊社ではこれまで問題発見・課題解決研修を何百回と担当させていただいてきましたが、官民問わず、業種業態を問わず、断トツの一位として挙げられる問題があります。

それは何だと思われますか?

答えは、「情報が共有されていないことによる問題」です。いうまでもなく「情報」はとても大切な経営資源の一つであり、これによる弊害は様々な形で表出するのですが、いずれにしても真の原因として考えられるのは「情報がきちんと共有されていない」ことに尽きます。

たとえば、様々な企業における不祥事の報道を見聞きすることがよくありますが、それらも本をただせば「情報が共有されていない」ことで起こったものが大半ではないかと考えられます。

近年、この情報共有するための方法としてクローズアップされているのが、デジタル化です。実際、大なり小なりデジタルツールを導入している組織が多いと思いますが、それではデジタルツールによって情報の共有は進んだのでしょうか?また、デジタルツールの導入によって組織の不祥事は減ったのでしょうか?

私がコンサルティングや研修を担当させていただく企業を見ている限り、残念ながらデジタルツールを導入しても、結局のところ情報の共有に関して目に見えるような効果が出ているところは少ないと感じています。

さて、それではどうして情報共有が進まないのでしょうか?理由は様々あると思いますし、既に語りつくされている感もありますが、私は一言で言うと「共有するメリットを感じない」人が少なくないということではないかと考えています。具体的には、「情報を共有したことによって怒られた経験がある、一方的に提供ばかりしていて享受するものがない、共有するルールはあっても面倒であるため優先順位が低い」などにより情報の共有への意識が低くなってしまうのではないかと考えているのです。

実際に、これまで様々な組織を見てきて感じるのは、共有すべき情報を決めたり、その方法を皆で考えたりしてもなかなか簡単には進まないようです。積極的に情報共有をしようと人がいる一方で、そうでない人がいるのも事実です。また、一度メンバー間で共有した情報であっても、時間の経過とともに記憶が薄れるなどで結果的に共有されなくなったり、ルール自体が忘れ去られたりすることさえあります。

そうすると共有したはずの情報に従わない人(仮にA)が出てきてしまい、それを発見した人(仮にB)が「○○については一年前に相談して△△で行くことに決まったよね」と注意しても、一方のAは「全く覚えていない。そんなことあったけ?」というように、勝手な行動をとったりしてしまうのです。

それでは、継続的にきちんとした情報共有を続けていくためには、どのようにすればよいのでしょうか?

これまでの私の経験から考えるのは、まず「情報を共有すること、し続けることはそもそも容易なものではない」という前提に立つことが肝要ということです。その前提に立ったうえで、特に共有しないとリスクを伴うような情報に関してはその都度繰り返し繰り返し、また複数の手段を使用して伝え続ける。これしかないということです。もちろん伝える側からすると、これには大変なエネルギーが要りますし非効率なことのようにも思えますが、情報が共有されなかった結果発生してしまう弊害の大きさを考えれば、これを進めるしかないと思うのです。

組織に2人以上の人が存在すれば、考え方はおのずと異なるはずです。それを踏まえ、対面で仕事をしようがテレワークであろうが、情報を共有するためにはトップの明確な意思と継続的な努力が必要だということをしっかりと意識したうえで、取組んでいくことが求められていると考えているこの頃です。

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第1,091話 会議は長いほどいい!?

2022年01月23日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

朝日新聞・朝刊の1面に哲学者の鷲田清一氏が執筆している「折々のことば」という小さな連載コラムがあります。毎回とても良いことばが選ばれているので楽しみにしています。今回は「会議とはものごとを決める場ではない(出版社代表・木村元氏)」ということばでした。

仕事と会議は切っても切れない関係にあります。大企業の社員であれフリーランスであれ、会議を経験したことがない人はいないと思います。ですから、会議を「決める場ではない」と言い切ってしまうことに「え?」と思ってしまうことでしょう。

木村氏は「会議は異なる『声』や視点を提示し共有しあう機会。だから長いほどいい」と言います。

ビジネスパーソンならば「共有しあう機会」には納得できても「長いほどいい」というところには拒否反応を示すはずです。私もそうです。会議は、異なる声(意見)や視点(ものの見方)を全員で共有する機会であることは間違いありません。ただし「長いほどいい」とは思いません。

会議で声や視点を共有する目的は、結論というアウトプットを得るためです。もし結論が不要ならばそれは会議ではなく、座談会か独演会、せいぜい「井戸端会議」でしょう。いずれにしても会社のコストを費やして行うべきものではありません。以前にも書きましたが、会議とは結論という製品を製造する工場なのです。製品を作らない工場に存在意義はありません。

さて、私の知り合いに木村氏と同じような言葉を口にする経営者がいます。日頃社員に「大いに会議をしなさい」と会議を奨励しています。彼はどちらかと言えば気が短いタイプなので意外に思い、それはなぜかと聞いてみました。「会議は決定する場だ。決めたことは参加者の責任になる。そうすればどんなに小さな仕事でも責任をもって取り組むようになる」とのことでした。

そして「責任が伴うからこそ、色々な意見や視点を示して話し合うことが必要だ。そのためには長い時間がかかってもいいじゃないか」と言っていました。

「折々のことば」とは含む意味が逆になりますが、私は大変素晴らしい考え方だと思いました。たとえ短時間で「効率良く」会議を行ったとしても、あいまいな結論や責任の所在がはっきりしない決定しか得られないならば、その会議は無意味だからです。

私は彼の言葉に感銘を受け「なるほど。会議はいくら長くても良いのですね?」と聞いてみました。「もちろんだよ。私も気が短いとよく言われるのだが、会議に関しては長くても構わないと思っている・・・30分以内ならね」という答えが返ってきました。

あなたの会社の会議はどのくらい長いですか?

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第1,089話 営業支援ITツールの使い方にご注意を!

2022年01月16日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

どのような仕事にも必ず前工程と後工程があります。少なくとも自分が行った仕事のアウトプットは、自分以外の誰かに渡されます。それは開発門なら製造部、総務部なら社員全員、営業部なら顧客・・・いずれにしても自分の仕事のゴールが後工程の仕事のスタートになります。つまり、仕事の出来不出来を決めるのは後工程ということです。

この数年でテレワークが一気に普及し、仕事の進め方が大きく変わってしまいました。テレワークのプラス面は多々ありますが、最大の難点はコミュニケーションの取り辛さでしょう。それによって後工程からのフィードバックが十分になされなくなってしまう恐れがあります。特に営業部門では「目立たない形で」その難点が問題になっているようです。

「いや、そんなことはない。当社はSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)を導入してから営業担当者別の案件の進捗状況を把握しやすくなった」、「顧客とのやりとりも十分かどうかデータを見ればわかる。何かあれば私から担当者に直接アドバイスできる」これは、ある中堅商社の営業担当役員の言葉です。

しかし、この会社の営業部長はこう言っています。「役員が直接担当者に指示を出すのは極力控えてもらうよう頼んでいます」管理者の頭ごなしに担当者に「アドバイス」されては現場が混乱するというわけです。営業担当者も、役員からの言葉がたとえ「ズレて」いたとしても無視することができず困ってしまうとのことです。

テレワークの普及により、企業では様々なITツールが使われるようになってきました。コミュニケーション上の問題を解決するために大いに役に立っている反面、こうしたマイナス面も無視できなくなりつつあります。

さて、役員をはじめとした経営層の後工程は誰でしょうか?それは株主、社員、顧客、取引先など「全て」です。正確に言うならば「ステークホルダー」です。「後工程はお客様」という言葉があります。多少極端かもしれませんが役員にとっては、いち担当者も「お客様」です。

では、役員は勝手に口を出さないようにすれば良いのでしょうか。ところがそう簡単には行きません。まず役員自身のフラストレーションが溜まります。それが溜まりに溜まると「大噴火」することもあります。それをまともに食らった管理者や担当者はたまったものではありません。

こうした事態に至らないための特効薬はないのですが、有効な手段の一つとして「会議」の有効活用をお勧めしています。会議という一種「公(おおやけ)の場」でしっかりと話し合うのです。多少の叱責やお小言もやむを得ないでしょう。ただし、会議以外の場では役員クラスからの「直接指示」は厳禁とします(多少の例外的なルールは仕方がありません)。

その前提として、経営層はステークホルダーとは何か(誰か)を十分に理解しておくことが重要です。そして会議は控えめにするよう心がけましょう。

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第1,088話 ルールの徹底にはナッジを利用する

2022年01月12日 | コンサルティング

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「仕組みを作っても、社員がその通りにやらない」、「なかなかルールが徹底されない」

これは弊社がお付き合いをいただいている中小企業の社長や、様々な企業の問題発見・課題解決研修を担当させていただいた際に受講者からよく聞く言葉です。

組織に人が2人以上存在する場合には、データの管理方法や書類の保管場所など、大なり小なり仕組みやルールが必要になります。仕組みやルールを作ったり、必要に応じて変更したりすること自体簡単なことではありませんが、さらにエネルギーを要するのが、それを守ること、徹底することです。

几帳面にルールを守る人がいる一方、ほとんど気にしないような人がいることも事実です。このため、ルールを全員で共有し徹底するためには、5W1Hなどの具体的な行動計画にしたり、面倒なものにし過ぎるなど敷居を高くしないようにしたりすることがポイントになります。

とはいえ、どんなに工夫をしてもルールを徹底することは簡単なことではないと思います。また、ルールを設けてしばらくの間は徹底されたとしても、時間の経過とともにいつの間にか形骸化してしまったり、ルールを徹底している人だけが煩わしい思いをしたり、損をしているような気持ちになってしまったりするようなことも起きてしまうこともあります。

こうした場合に私がお勧めしているのが、「ナッジ(nudge)」です。ご存じの方も多いとは思いますが、ナッジとは心理学や行動経済学において明らかになってきた人間の行動の原理に基づき行動のきっかけを提供する手法です。

もともとは「肘で軽く押す」という意味のナッジですが、2017年にシカゴ大学のリチャード・セイラー教授がナッジの研究でノーベル経済学賞を受賞して注目が高まるようになりました。

ナッジは、「人は客観的にみると、誤ったり損したりするような選択を知らぬ間にしてしまう」という前提に立った経済モデルを行動経済学とし、大きな費用をかけずに伝え方や表現の工夫だけで一定の成果を挙げることができるとされています。

実際の取り組み例として、宇治市役所では手洗いを促すための工夫として、庁舎のトイレに「手をしっかり洗いましょう」という通常の表現でなく「となりの人は石鹸で手を洗っていますか」というポスターを張ったところ、手洗いをする人が増えたそうです。これは、自分が手洗いをしているかどうかを周囲から見られていることが気になるという意識が働いた結果だと考えられます。これ以外にも、定期検診の受診率を上げるためにナッジを利用している八王子市役所の例など様々なところで取り組まれており、功を奏しているようです。

組織のみならず社会には守らなければならないルールや仕組みが様々あるわけですが、前述のように徹底することはなかなか難しいものです。しかし、そうした前提のもとでナッジのように表現や伝え方を工夫することで改善を試みてみることも一案です。なかなかうまくいかないと思っていらっしゃる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

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第1,082話 ファシリテーターを学ぶべき人とは

2021年12月15日 | コンサルティング

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「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」

これは先日、私が定期的にお会いしている、ある中小企業のM社長からお聴きした言葉です。詳しくお聴きすると、会議ではその日の議題に基づいたテーマを社員が交替で発表する形で進めているそうです。これは、様々な社員にファシリテーターを経験してもらいたい、また会議の場で積極的に意見交換を行ってもらい、今後の業務をよりよく進めるための一助にしたいという社長の考えにより、このような方式を取り入れることになったのだそうです。

しかし、実際にはなかなかM社長が当初想定していたような成果は得られていないとのことでした。この方式を取り入れて既に1年が経過しているそうですが、多くの社員がファシリテーターを経験したものの、会議で積極的に発言する人は相変わらず少数であり、業務の進行にもプラスの影響は出ていないとのことでした。

そこでこの度、私もオブザーバーという立場で会議に参加させていただきました。その日のテーマは、「A業務について効率的な仕事をするためには、どうすればよいか」というものでした。

当日、私は会議の開始前に会社を訪問し、社員が会議の準備をする段階から立ち会わせていただくことにしたのです。準備段階では複数の社員が机の配置を整えたり、プロジェクターの準備を行ったりするなど手際よく進めていましたので、会議をやりなれていることがわかりました。また、準備は社員が協力し合い、活発にコミュニケーションを取りながら行っていましたので、社内の活発な雰囲気も感じていました。

その後会議がスタートし、ファシリテーターの進行のもとテーマに関する発表をある社員が始めました。発表を聴くと、事前にそのテーマに関して入念に準備をしていることが分かるようなしっかりした内容でしたので、私は聴き入っていました。

ところが、そのときです。開始わずか3分後くらいに「まどろっこしい説明だ!聴いていられない。続きは私が説明する」という大きな声が発せられました。

声の主はM社長でした。その後、社長はいきなり大きな声で話を始めましたが、それはもう社長の独壇場で話は延々と続きました。その間、ファシリテーター、発表者、その他の社員は一様に「またか」という表情になっていました。「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」とM社長が言っていた原因は、まさにここにあったのです。

つまりは、ファシリテーターが場を進行しようとしても、発表者が丁寧に準備し一生懸命に説明しても、社長が聴く耳を持たずに自分で会議を仕切るようなことになってしまうと、ファシリテーターも発表者も聴き手も会議の場にいる意味がなくなってしまいます。そして、社員からすれば、どうせ自分たちがやっても満足できないのだから、初めから終始社長が仕切ればよいでしょうということになっていまい、やる気も失われてしまうということになってしまうのです。

私がファシリテーター研修を担当させていただく際の受講者には中堅社員が多いのですが、実は社長や管理職などの権限を持っている人こそ、ファシリテーターの意味や役割をきちんと学ぶべきだと思うことが少なくないのです。

社長や管理職の方々で、会議や自分との会話で部下があまり話をしないと感じていらっしゃるのであれば、一度自分が部下の話を遮ってしまっていないか、話しにくくしていないか、振り返ってみる必要があるかもしれません。

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