中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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「失敗を恐れるな!」という言葉を口にしてはいけない

2014年07月06日 | コンサルティング

「いまどきの若者はチャレンジ精神が足りない。何をするにも失敗を恐れる。」新人研修の後で、経営者や管理職の方々と話しているときによく耳にする言葉です。

確かに、最近の新入社員は勉強熱心で、そつがなく、協調性もある人が多いようですが、チャレンジすることに対しては少し消極的かもしれません。

しかし、「失敗を恐れるな」という勇ましい掛け声を発している経営者や管理職は、「失敗」をどのようにとらえているのでしょうか。

ある大手企業の新人研修で、「先輩から贈る言葉」というお題で40代の課長さんに3分間のショートスピーチをお願いしたことがあります。その課長さんは会社の中でも出世頭、いわゆるエリートでした。

「君たちは色々なことにチャレンジしてほしい。失敗を恐れてはいけない。私は、若いうちにもっと失敗しておけばよかったと思っているくらいだ」とその課長さんは20名ほどの新人に向って熱く語りました。ところが聞いている新人の方は・・・ほとんどがしらけた表情をしていました。

その後、1時間ほどして研修が終わりました。そこで一気に気が緩んだのか、新人同士が雑談を始めました。

「XX課長、失敗を恐れるな!なんて言ってたけど、先輩にきいたらあの人、一度も失敗しなかったから出世したんだってよ。」「あー、やっぱりな。うちの会社減点主義だもんな。上司に逆らってまでチャレンジなんてあり得ないし。」・・・もちろん、脚色はしてありますが、大体こんな内容の会話をしていました。

どうやら経営者や管理職の方々が考える失敗とは、会社にとって何の影響もない、ちょっとした可愛らしいことのようです。ちょうど、小さな子供が転んで泣いていたら「立ち上がって歩いてほしい。転ぶことを恐れてはいけない。」という感じで励ますような・・・。

また、ある中小企業の社長に、若手社員のチャレンジを奨励しているかどうか聞いてみたことがあります。

「もちろん若手にはいつも、失敗を恐れずチャレンジしろと言っている。ただし、会社に大きな損害を与えるような失敗はダメだ。」とのことでした。私は、すかさず「では、そのときの損害とは、金額でいくら位が限度ですか?」と聞きました。

「うーん、10万円・・・くらいかな・・・」と言いました。その直後、しまった!という表情になって、「いや、いやいや、金額の問題じゃないですよ!」と言って笑っていました。10万円は、この社長が1回のゴルフで散財する金額とどっこいといったところです。

私見ではありますが、「失敗を恐れるな!」と口にする経営者や管理職が多い会社ほど「チャレンジ精神」のかけらも無いようです。失敗に対して×を付ける人事考課を平気で繰り返しているのですから、誰もチャレンジしようなどと思うわけがありません。「いまどきの若者はチャレンジ精神が足りない。何をするにも失敗を恐れる」・・・そりゃそうでしょう。

さて、失敗に関する名言を2つご紹介します。

「日本人は、失敗ということを恐れすぎるようである。どだい、失敗を恐れて何もしないなんて人間は、最低なのである。」

「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる。」 

前者は本田宗一郎、後者は松下幸之助の言葉です。

「このお二人のように」とまでは言いません。せめて少しでも「失敗を許容する度量とチャレンジ精神」を持った経営者の方だけが口にしていただきたいものです。

(人材育成社)