「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「コミュニケーションに力を入れます」、「毎日、全員に必ず1回は声をかけるようにしています」
これは、弊社が管理職研修や昇格試験の面接官を担当させていただく際に、管理職である受講者や管理職を目指す受験者から繰り返し聞く言葉の一つです。
具体的には「管理職として心がけたいことは何か」、「部下指導で力を入れたいことは何か」などの質問への回答なのですが、近年ではその傾向がますます強まっているように感じています。
公私を問わず、私たちは日々コミュニケーションを通して生きているわけで、コミュニケーションが重要であることは言うまでもありません。一方でコミュケーションがまるで「生きる術」のように使われることには、少々違和感を覚えることがあります。
研修や面接の場面で、あまりにも頻繁にコミュニケーションという言葉が繰り返されるため、私から「コミュニケーションをどのように捉えているのですか」と質問することもあるのですが、「言葉を交わすこと」以上の答えがないことも少なくないのです。こうしたこともあり、多くの人はコミュニケーションの「量」を増やすことのみに関心があり、「質」を高めることを重視している人は少ないように感じています。
ところで、組織の中で管理職に必要とされる能力について述べているものに、アメリカの心理学者のロバート・カッツ(Katz, Robert L.)の「カッツ理論」があります。カッツはマネージャーに求められる能力を、業務遂行能力(テクニカルスキル)、対人関係能力(ヒューマンスキル)、概念化能力(コンセプチュアルスキ)の3つに分類しています。3つのスキルについては、組織の上層部に行くほど概念能力の重要性が増し、反対に組織の現場に近いほど業務遂行能力が求められるとされています。
この理論からも、管理職に求められるスキルはコミュニケーションスキルや対人関係能力ばかりではなく、論理思考や批判的思考などの概念化能力も必要となると考えられるわけですが、コミュニケーションのスキルにばかり関心を示す人が圧倒的に多いのはなぜなのでしょうか。
理由はいろいろあるかと思いますが、コミュニケーション以外のスキルは何となくイメージにしにくく、具体的に何をどのように達成すればよいのかを明確にしにくいのかもしれません。一方で、コミュニケーションのスキルは誰でも簡単に高めることができるようにイメージされてしまいやすく、多くの人が「量を増やすこと」=「スキルアップ」と簡単に考えてしまい、結果としてコミュニケーションをまるで万能薬のようにイメージしてしまっている人が多いのではないでしょうか。
コミュニケーションは量だけでなく質そのものを高めることも必要ですし、そもそもそれだけをスキルアップすれば済むというものでもありません。管理職には、前述のような概念化能力を始めとする能力、DXなどをはじめとするテクニカルスキルも求められるものですので、現管理職・管理職を目指す皆さんにはスキルアップに向け頑張っていただきたいと考えています。