中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,234話 あなたは人の話を正確に「聴く」ことができていますか

2024年10月02日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「お尋ねしたのはそういうことではなく、〇〇について知りたいのです。そこを教えていただけますか?」

これは、最近私の知り合いが家電製品を購入する際のやり取りの中で、店員に伝えた言葉だそうです。具体的には、友人は2つの製品のどちらかを購入したいと考え性能の違いを繰り返し質問したのだそうです。しかし、店員は話を聞いているようには見えても、質問の意味を理解できていないのか、ピントのはずれな答えしか返ってこなかったとのことです。結局、知り合いはその店での購入を諦めたと話していました。

知り合いが言うには、店員であっても全ての製品の知識があるとは限らないので、わからなくて返答できないのであれば、別の人に代わってもらうなどの対応をしてもらえれば良かったとのことです。しかし、その時の状況を改めて振り返ってみると、知識の有無というよりもそもそもこちらの質問の意味を理解してもらえていなかったようで、そのために返答がずれてしまっていたのではないかとのことでした。

コミュニケーションにおいては話すことも大切ですが、話をすることの前提として聞くことの重要性について注目されるようになって久しいです。特に、コミュニケーションでは傾聴することが必要不可欠であると多くの人が理解しているのではないかと思います。

傾聴とは、「話し手の話を心を傾けて熱心に聴くこと、相手の言いたいことを言葉や態度で丁寧に示しながら聴くこと」です。これはアメリカの心理学者であるカール・ロジャースが提唱したもので、ロジャース自身がクライアントに対して行うカウンセリングにおいて、傾聴することの有効性を強く感じたことが始まりと言われています。

私自身の経験でも、研修を担当している際に受講者が頷いたり、前のめり(積極的)になったりするなどの傾聴の姿勢を示してくれると話がし易いと感じますので、傾聴は本当に大切なことだと思っています。

しかし、傾聴してくれているように見えても、実際にはこちらの話や意図があまり通じていないということが少なからずあるのも事実です。冒頭の例のようにこちらの意図とは異なる返答をされてしまったりすると、コミュニケーションを深めることができず、話が終わってしまうことになってしまいかねないのです。

それでは、相手の話をしっかり正確に聞きとれるようにするためには、どうすればよいのでしょうか?

相手の話を集中して聞くことはもちろんですが、自分の経験や考えに基づいて相手の話を解釈してしまうと正しい理解が難しくなる場合もあるため、まずは自身の先入観や偏見といったものを排除することが重要になると思います。さらには、自分の答えのピントがずれているようであれば、相手(話し手)が話が通じていないという表情になるなど何らかの変化が生じる場合もありますので、こうした「非言語的のサイン」を見落とさないことも必要です。

私は、コミュニケーションには「聞く(聴く)」「理解する」「表現する」などの総合的な力が必要だと考えていますが、それはあくまで話し手と聞き手の双方向で分かち合いながら行われるものです。

一方通行では成立し得ないものだからこそ、私たちはまずは相手の話を傾聴したうえで、先述のように相手が言わんとすることを正しく理解することができているのか、そしてそれに対して自分の考えをきちんと返せているのか、コミュニケーションの中で見返すことが必要だと考えています。

あなたは人の話を正確に「聴く」ことができていますか。

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第1,233話 1on1 ミーティングを意味のあるものにするためには

2024年09月25日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下とのコミュニケーションは1on1 ミーティングがありますから大丈夫です」

近年、「1on1 ミーティング」という言葉を聞くことが増えたと感じています。弊社では管理職昇格試験の面接における外部面接官を担わせていただくことがありますが、その際の口頭試問においても「1on1でコミュニケーションは積極的にとっていますから」と答える人が多数います。また、管理職研修を担当させていただく際にも、部下とのコミュニケーションを取る手段として同様に1on1ミーティングを挙げる管理職が増えてきたと感じています。このように、最近1on1ミーティングを行えばコミュニケーションは万全だと考えている人が多くなったように思います。

この「1on1 ミーティング」(one on one meeting)とは、文字通り一対一で行う面談であり、上司が部下の育成を目的に部下の仕事に対しての考えや問題点の有無を確認したり、今後の展望や希望などを確認したりすることを目的として行うものです。このミーティングは1~3か月に1度位の頻度で開催しているところが多いようです。

1on1 ミーティングを導入したことによって、部下とのコミュニケーションの時間をなかなか作れなかった管理職が定期的に部下との接点を持つことができるようになり、部下の現状や考えを知ることができる機会になるなど、メリットを感じている人の声をたくさん聴きます。

一方、部下の方からは1on1により上司との接点は増えたものの、上司からの一方的な話を聞くだけだったり、自身が話をする時間はあまりないと感じていたりするなど、1on1 ミーティングのメリットを感じないという声を聞くことも少なくありません。

実際、先日お会いしたある企業の中堅社員からは、「仕事における問題を解決するために他部署との交渉の援助を依頼したものの、一向に上司が動いてくれることはなかった。話をしても何も変わらず、何のためのミーティングだったのか。このような結果をもたらさないミーティングであれば、実施する意味を見出せない」という声を聞きました。

この話を聞いて思ったのは、1on1ミーティングはあくまでも「手段」であって「目的」ではないのですが、管理職によっては1on1ミーティングを行うことが目的となってしまっている人が少なからずいるのかもしれないということです。

それでは、1on1 ミーティングを意味のあるものにするためには、どうすればよいのでしょうか。

そもそも、1on1という言葉が出てくる以前から上司と部下との1対1の面談は行われていたわけで、1on1自体が取り立てて新しいことではないのですが、対面して行う面談を本当に有効なものにするためには、その際の上司の「話の進め方」が鍵になるのではないかと考えています。

対面で面談を行う目的は、部下の仕事の現状や問題点、今後の展望などを確認し、必要なアドバイスをすることです。そのためには、部下からきちんと話を聞きだすことがまず必要になることから、上司は事前に質問・確認する内容を整理しておくとともに、話を傾聴するなどのコミュニケーションの基本を改めて確認しておくことが大切です。事前に十分に準備して面談に臨めば、部下からたくさんの情報を収集することができ、的確なアドバイスを行うことができます。それによって部下の気持ちのリフレッシュも期待できるのではないでしょうか。

漫然と1on1 ミーティングを行ったり、話が一方通行で終わったりするなどの事態にならないようにするために、上司の皆さんには事前に十分な準備と段取りをしてからミーティングに臨んでいただきたいと考えています。

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第1,228話 部下に自分の言葉で話してもらうことから始める

2024年08月21日 | コミュニケーション

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「部下に何度言っても、言ったとおりにやらないんです」

「部下に伝わらないので、つい『だから・・・!』と感情的に言ってしまうのです」

これらの言葉は、弊社が管理職研修や部下育成研修を担当させていただいた際に、必ずと言ってよいくらいに受講者から相談される内容です。

部下の育成に関する悩みは、古今つきないものだと思います。毎年厚労省が行っている「能力開発基本調査」の最新の令和5年の調査においても、人材育成に問題があるとしている会社は約8割になっています。この数値からも、現場での部下育成が思うように進んでいないことが伺えます。

さて、先日パリオリンピックが終了したところですが、日本選手団の活躍は国外開催の夏季五輪で史上最多となる20個の金メダルを獲得しました。それだけの活躍ができた背景には様々な理由があるのだと思いますが、その一つには外国から招いたコーチの指導があると言われています。

報道された中で私が最も印象に残っているのは、男子バレーボールチームを指導したフランス人のフィリップ・ブラン氏です。各国での指導経験を持つブラン氏は2017年から日本チームでの指導を始め、強豪国とも対等に渡り合えるようになったものの、就任当初は日本人選手との接し方に戸惑いを覚えたといいます。

それについてブラン氏は、「選手それぞれと面談をして、『私は君にこういうプレーを求めている』とリクエストを出したんです。選手たちはみんな『ハイ』と答えていたんですが、まったくプレーが変わらない。最初は通訳が正しくないのかと思いました。私もあきれて、3度目の面談の時には『私の方から説明はたっぷりしたから、今度は私がいったい何を求めているのか、あなたの言葉で説明してください』と言ったら、みんなびっくりしていました。日本の選手たちは心の中では『ノー』と思っていても、指導者の前では『ハイ』と言える。そうした社会になっています。これは私にとって大きな学びでした」といった話をしています。こうした中で、指導してもそれがなかなか生かされず、チームの成績にも結び付かないということが続いたのではないかと思います。

これは、指導が一方的な情報の伝達になってしまっていて双方向のやり取りになっていない状況であり、「はい」と返事はするものの実際は内容がきちんと伝わっておらず理解されていない状況であり、結果として指導にはなっていないということです。

同じように、部下がなかなか育たないと悩んでいる管理職の皆さんは、部下に指示をしたり指導したりする際に、一方的に伝えるだけで終わってしまっているのかもしれません。そして、伝えたことが部下にきちんと伝わったか確かめることをしないままで、部下を指導したつもりになってしまっているように思えます。

自分が伝えたことが相手に理解をされているのかどうかは、まさにブラン氏が行っているように、部下の言葉で語ってもらうことによって、どれくらい伝わったか、理解されたのかを確認できます。ブラン氏は先述のようなコミュニケーションを選手と行うことによって少しずつ信頼関係を築いていき、チームの成績もそれに伴って上がっていったとのことです。

部下が育たない、部下に伝えたはずのことが伝わらないと悩んでいる管理職の方は、この例のように部下に自分の言葉で話してもらうということから始めてみてはいかがでしょうか。

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第1,214話 孤立感をもたせないためには

2024年05月08日 | コミュニケーション

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今から半年ほど前の朝日新聞の「孤立したアリ(蟻)は短命になる (2013年10月23日)」という記事が強く印象に残っています。その記事には、孤立したアリは活性酸素が増え、それが原因で寿命が短くなったということが書かれていました。

さて、ゴールデンウィークも終わり、職場に配属された新入社員は今後本格的に仕事を覚えていくタイミングになりました。当の新入社員の中には、これから職場に馴染めるだろうか、仕事をしっかり覚えられるだろうかなどと心配をしている人も少なくないだろうと思います。一方で仕事を教える側(OJTトレーナーなど)の先輩社員や上司にも、仕事をきちんと教えられるだろうかと心配している人、しっかり育てるぞと思いを新たにしている人もいるのではないでしょうか。

それぞれの職場では、新入社員に早く仕事を覚えてもらうために様々な工夫をしていると思いますが、その中で私が重要だと考えている一つが、先述の記事にあった「孤立させない」ということです。改めて「孤立」と言う言葉を辞書で調べてみたところ「他とかけはなれてそれだけであること。ただ一人で助けのないこと」(広辞苑)とあります。これを職場で考えると、新入社員に全く関心を示さない、気にかけることがないなどにより、周囲からの助けがない状態に置かない。そして何より、そのような雰囲気を作らないということが大切になると考えます。

職場で上司や先輩社員をはじめ大勢の人がいるのにもかかわらず、自身への関心が示されず、困っているときにも助けてもらえない。また、周囲が絶えず「忙しいオーラ」を出して周囲の人に話しかけにくい、質問をしにくいような雰囲気があると、新入社員にとっては周囲の人たちに話しかけようとするハードルが高くなってしまいます。その結果孤立感はどんどん深まっていってしまうのではないでしょうか。

それを防ぐためには、職場においては積極的に周囲に話しやすい雰囲気を作るように心がけることが大切です。具体的な取り組みとして仕事時間中に質問の有無にかかわらずディスカッションタイムを設けること、新人とOJTトレーナーの組み合わせのみならず、様々な組み合わせで、双方向のやりとりができるようなフリーディスカッション時間を設けるなどから始めてみてはいかがでしょうか。もちろん、その際には聞き手は話し手の話に対して頷くなどの関心を示したり、タイミングよく反応したりすることが大切なことであるのは言うまでもありません。

そして、先述の記事の終わりには「今後、社会的な関わりが生き物の健康を左右することを、アリを使って解明していきたい」とも書かれていました。このように職場で孤立をさせない、職場での良好な雰囲気や人間関係を作っていくということは、新入社員だけでなく職場のすべての人の健康にも関わる重要な問題だと考えています。社員が心身ともに健康で働くことができるようにするためにさらに職場でできることがないのか、改めてこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

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第1,212話 多数決ではなく、対話して議論を深めよう

2024年04月17日 | コミュニケーション

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「では、多数決で決めましょう」

弊社が研修を担当させていただく際には、テーマにかかわらず多くの場合、講義と演習を繰り返しながら進めていきます。演習では3名から6名で1つのグループになっていただきますが、初対面の人同士のグループでも最初は少し遠慮がちにしていても、演習を進めていく中で徐々にうちとけて意見交換が盛んになっていきます。そのためグループ演習に取り組んでいただくことは各テーマの理解を深めるだけでなく、チームワークを作り上げる上でもとても有効な手段です。

しかし最近では、そのグループ演習での討議の様相が少々変わってきているように感じることが増えてきています。それは、メンバー同士で積極的に意見交換をしたとしても、最終の意見のまとめはそれまでの議論の経緯とは別に、多数決で決定することが多いのです。

多数決は民主主義の基本と言われているように、多くの人が子どものころから慣れ親しんできている方法だと思います。たとえば小学校の学級会などで何かを決める際には、みんなで意見を出し合った後に多数決で決めるという経験をした人はたくさんいると思います。このように、多数決は物事を決定する際の最も基本的な方法ということなのでしょう。

しかし、前述のとおり最近ではグループ討議を観察していると、「最後は多数決で決めればよい」ということを前提に話し合いをしているように見えることが少なくありません。たとえば、演習であるテーマについて話し合いをしてもらうような場面では、まず一人一人順番に意見を言い、それを聞いた周囲のメンバーはその意見に「いいね」や「なるほど」などと同調はするのですが、その意見に対して「なぜそのように考えたのか」を聞いたり、それに対して「自身はどのように思うか」などを発言することは少ないのです。こうした結果、議論の中でメンバー間の実のあるやり取りが少なく、最後のとりまとめも多数決で決めるため、あまり議論が深まらないということになってしまいます。

多数決は一見公平な方法のようにも見えますが、よく言われるように、多人数が支持する意見が必ずしも正解とはかぎりませんし、少数意見に耳を傾けないことにもなってしまかねないという一面も持っています。日本人の多くが多数決を好む理由には、文化的な要因や社会的背景、歴史的な影響などが関係しているようにも言われています。確かに周囲との衝突を避けてうまくやっていくことを重視するあまり、自分とは異なる意見に対して自分の考えを主張することを控えてしまうということが少なくないように思います。こうしたこともあって、結論を出す場合にもわかり易くかつ反対も出にくい多数決という方法を選択するということなのかもしれません。

仕事に限らず、コミュニケーションの重要性は日々様々な場面で叫ばれていますが、そのためにはまずは積極的に対話をしていくことが大切です。意見の異なる相手ともお互いの立場や意見の違いを理解し、その上で簡単に多数決などに流されることなく一致点を探っていくという努力が必要不可欠だと思うのです。

以前、どこかのメディアで「最近の若い人は周りから浮いてしまうことをおそれるあまり、自らは強い主張をしない」というような話を聞いたことがあります。「出る杭は打たれる」ことを恐れずに、意見の異なる相手とも積極的に対話していくことを意識していくことが大切なのではないでしょうか。

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第1,204話 「君付け」で後輩や部下を呼ぶ人の意識とは

2024年02月21日 | コミュニケーション

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「先輩社員から『〇〇君』と、「さん」付けではなく呼ばれることに抵抗があります。これはビジネスマナーのルール違反にはならないのでしょうか?」

これは、先日弊社が若手社員の研修を担当させていただいた際に、ビジネスマナーの振り返りをした中で、一人の受講者から尋ねられた質問です。ちなみにこの「君付け」、最近の学校では男女を問わず「さん」と呼ぶことが多くなっているようですが、一方で国会中継などを見ていると議員のことを呼ぶ際に「〇〇君」と言っています。そこでここではあくまで職場での呼び方について考えてみたいと思います。

さて、職場内では以前から他者のことを「〇〇さん」ではなく、「〇〇君」と君付けで呼ぶ人がいます。実際、私が会社員をしていたときにも、後輩社員を「〇〇君」と呼ぶ同僚がいましたし、現在も研修を担当させていただいている会社の担当者が、後輩社員を「〇〇君」と呼んでいるのを頻繁に耳にしています。

それでは「〇〇さん」でなく、敢えて「〇〇君」と呼ぶのには何か理由があるのでしょうか。以前から気になっていたことから、実際に職場で君付けをしている人に尋ねてみたことがあるのですが、一様に「親しみを込めて使っている」との返答でした。本人はあくまでポジティブな気持ちから使用しているようなのですが、一方では冒頭の質問をした受講者のように、君付けで呼ばれることに抵抗感を持っている人も少なからずいるのではないかと感じています。

いくら「親しみを込めて言っている」としても、目上の人に対してはさすがに君付けでは呼ばないはずです。そのように考えると、君付けをしている人は後輩社員に対して、無意識であったにしても「自分より目下の存在である」というような、何らかの意識が働いているのではないでしょうか。そのため、職場などで何かのきっかけで相手に対する言動が「上から目線」になったり、上から下への命令口調になったりしやすいということがあるのではないかと考えています。

これに関連して、先日(2024年2月17日)の朝日新聞の天声人語に、刑務所や拘置所などに収容されているすべての人について、今年4月から「名字+さん」でよばれることになるという記事が載っていました。かつては番号で呼ばれたという受刑者について、戦後は番号ではなく苗字を呼び捨てで呼ばれることが多くなったとのことでしたが、以前に起こった刑務官による受刑者への暴行事件等を受けた改革の一環として、呼び方を「さん」付けに変えるとのことでした。

ちなみに、「さん」は江戸時代に「様」から転じて使われるようになったということで、年齢や性別に左右されずに誰にでも使用できる呼び方とのことです。確かに「君」より「さん」のほうが語感も柔らかいように感じられ、使いやすいように思えます。

「たかが呼び方、されど呼び方」かもしれませんが、同時に朝日新聞の記事にもあったように、「呼び方」によっては様々な(上下の)関係のあり方が固定されてしまうというような面も持っているのではないでしょうか。これまでは、小さなこととしてあまり真剣に取り上げられることが少なかったテーマかもしれませんが、私は人の気持ちに大きく影響する大切な事柄なのではないかと考えています。

さて、あなたは職場でどのような呼び方を使っていますか?また、あなたの職場全体ではどうでしょうか?もし、呼び方が職場の人間関係などに何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられるのなら、一度皆で話し合って別の呼び方を試してみてはいかがでしょうか。

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第1,199話 「くまモン」が大人に人気があるわけ

2024年01月17日 | コミュニケーション

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皆さんは、熊本県のPRマスコットキャラクターのくまモンをお好きでしょうか?」

今更言うまでもありませんが、ゆるキャラグランプリ2011王者であり、現在は熊本県の営業部長兼しあわせ部長を務めています。

先日熊本県を訪れた際に、くまモンの活動拠点である「くまモンスクエア」に行く機会がありました。当日くまモンは午前に続き午後2時にも出勤予定だったため、それに合わせて少々早めに1時間前に現地に到着したのですが、既に会場には大勢の人が集まっていました。

開演1時間前にも関わらずそうした状況だったため、一体どこに立って待っていればよいのか、どこにいればくまモンの舞台を見ることができるのか側にいた人に聞いたところ、「舞台を囲んで並んでいる20席には子どもしか座ることができない。」とのことで、見やすい場所を教えていただきました。話を聞いた人は常連で、定期的にくまモンスクエアを訪れているそうですが、立って待ちその後舞台を観るのは長時間で大変なので、毎回折りたたみ椅子を持参しているとのことでした。

待つこと1時間、開演前には舞台を取り囲む何重もの人の列ができていました。そしていよいよ開演、くまモン隊のスタッフの女性が観客に「どこから来たか」、「午前中も観たか」などと質問しましたが、日本各地以外からも台湾やアメリカから来ている人や、午前中に続いて2回目だという人もかなりの人数いました。くまモンスクエアには、子どもとその保護者が集まっているのだろうとイメージしていた私からすると、このように大勢の大人が何度もくまモンに会いに訪れていることは少々驚きであり、同時に新鮮にも感じました。

では、これほど多くの大人がこのようにくまモンに惹かれるのは、一体なぜなのでしょうか。理由は様々あるかと思いますが、私はくまモンがステージの上を自由に動き回って、観客にハグをしたりするなどの「非言語」に加え、大人に対しても子どもにと同じように愛嬌を振りまいている、ある意味では公平に接しているというところにもあるのではないかと思っています。

弊社が管理職研修や管理職登用試験の面接官の担当をさせていただく際、「上司から公平に接してもらえなかったり、気分屋だったりする上司の指導を受けて苦労をした」という話を聞くことが頻繁にあります。そのためか、上司に声をかける前に「今日の機嫌はどうだろうか?」、「今声をかけて怒られたりしないだろうか?」などと、恐る恐る声をかけたという経験を持つ人は少なくないようです。

私たちは、日々周囲の人と様々なコミュニケーションをとっています。このブログでも、これまでたびたびコミュニケーションについてふれていますが、永遠の課題と言ってもいいのではないかと思えるほどに難しいテーマでもあります。

職場においては、くまモンのようにいつもニコニコして愛嬌を振りまいているだけでは、コミュニケーションはなかなか成立しません。しかし、それでも今回くまモンの笑顔を見ていて、職場での対人関係・コミュニケーションの中では、相手によって態度を変えたり自身のマイナスの感情をストレートにぶつけてしまうことは控えなければならない態度だということです。特に管理監督職は部下に対しては公平に接することを心がけること、そのことが回りまわってくまモンのように周囲からの好感につながり、信頼を築くなどのよい結果につながっていくのかもしれないなと改めて感じました。

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第1,198話 コミュニケーションは部下指導の万能薬ではない

2024年01月10日 | コミュニケーション

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「コミュニケーションに力を入れます」、「毎日、全員に必ず1回は声をかけるようにしています」

これは、弊社が管理職研修や昇格試験の面接官を担当させていただく際に、管理職である受講者や管理職を目指す受験者から繰り返し聞く言葉の一つです。

具体的には「管理職として心がけたいことは何か」、「部下指導で力を入れたいことは何か」などの質問への回答なのですが、近年ではその傾向がますます強まっているように感じています。

公私を問わず、私たちは日々コミュニケーションを通して生きているわけで、コミュニケーションが重要であることは言うまでもありません。一方でコミュケーションがまるで「生きる術」のように使われることには、少々違和感を覚えることがあります。

研修や面接の場面で、あまりにも頻繁にコミュニケーションという言葉が繰り返されるため、私から「コミュニケーションをどのように捉えているのですか」と質問することもあるのですが、「言葉を交わすこと」以上の答えがないことも少なくないのです。こうしたこともあり、多くの人はコミュニケーションの「量」を増やすことのみに関心があり、「質」を高めることを重視している人は少ないように感じています。

ところで、組織の中で管理職に必要とされる能力について述べているものに、アメリカの心理学者のロバート・カッツ(Katz, Robert L.)の「カッツ理論」があります。カッツはマネージャーに求められる能力を、業務遂行能力(テクニカルスキル)、対人関係能力(ヒューマンスキル)、概念化能力(コンセプチュアルスキ)の3つに分類しています。3つのスキルについては、組織の上層部に行くほど概念能力の重要性が増し、反対に組織の現場に近いほど業務遂行能力が求められるとされています。

この理論からも、管理職に求められるスキルはコミュニケーションスキルや対人関係能力ばかりではなく、論理思考や批判的思考などの概念化能力も必要となると考えられるわけですが、コミュニケーションのスキルにばかり関心を示す人が圧倒的に多いのはなぜなのでしょうか。

理由はいろいろあるかと思いますが、コミュニケーション以外のスキルは何となくイメージにしにくく、具体的に何をどのように達成すればよいのかを明確にしにくいのかもしれません。一方で、コミュニケーションのスキルは誰でも簡単に高めることができるようにイメージされてしまいやすく、多くの人が「量を増やすこと」=「スキルアップ」と簡単に考えてしまい、結果としてコミュニケーションをまるで万能薬のようにイメージしてしまっている人が多いのではないでしょうか。

コミュニケーションは量だけでなく質そのものを高めることも必要ですし、そもそもそれだけをスキルアップすれば済むというものでもありません。管理職には、前述のような概念化能力を始めとする能力、DXなどをはじめとするテクニカルスキルも求められるものですので、現管理職・管理職を目指す皆さんにはスキルアップに向け頑張っていただきたいと考えています。

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第1,191話 「文殊の知恵」を発揮するためには

2023年11月15日 | コミュニケーション

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「虫殺して滅んだ蘇我一族」

これは「大化の改新」があった645年の年号の覚え方の一つです。中学や高校時代の歴史の授業で語呂合わせで年号を覚えた人は少なくないのではと思いますが、私もその一人です。大化の改新の語呂合わせには様々な覚え方があるようですが、私は冒頭のように「虫殺して滅んだ・・・」というように覚えました。

先日、奈良県明日香村にある牽牛子塚古墳(ケンゴシヅカコフン)を訪れる機会がありました。牽牛子塚古墳は、7世紀の飛鳥時代の天皇のために造られた平面八角形の古墳で、昨年から復元された古墳の見学が可能となったものです。

この古墳の被葬者として有力なのは斉明天皇だそうですが、斉明天皇は大化の改新を起こしたあの中大兄皇子の母です。大化の改新は中大兄皇子が、聖徳太子亡き後に急速に力を持った曽我氏に危機感を持ち、天皇中心の政治を目指して中臣鎌足らとともに蘇我入鹿を倒したものだと、その昔に授業で習った記憶はありました。そして今回新たに牽牛子塚古墳の墳墓内で現代的にアレンジされた説明動画を観ることができ、645年という遠い昔に思いを馳せることがかなったのです。案内をしてくれたガイドの話も聞きながら、改めて大化の改新とは中大兄皇子の蘇我入鹿に対しての、まさにクーデターだったのかもしれないなどと思ったのでした。

いつの時代でも諍いが起こってしまうのが世の常で、世界を見渡せば今現在もロシアのウクライナ侵攻から始まった戦い、さらにはイスラエルとハマスの軍事衝突が起きています。「人間2人集まれば対立が起こる、3人集まれば派閥ができる」と言われるように、どんなに少人数であっても残念ながら諍いは起きてしまうわけで、これはある意味で人間の性といったものなのかもしれません。

さて、私たちは会社や学校など何らかの組織に属していたり関係を持っていたりすることが多いのではないかと思いますが、組織とはその形にかかわらず様々な考えを持った人間の集まりであることが一般的です。様々な考えのある集団だからこそ、組織全体としての力が発揮できることになるのだとも考えるのですが、同時にそれを一つの方向にまとめていくことはなかなか簡単ではありません。しかし、様々な考えを集めて「文殊の知恵」を存分に発揮できるようになれれば組織力を上げることができることも、また確かなはずです。

では、そのためにはどうすればよいのでしょうか。妙案は簡単には浮かびませんが、やはり言葉を持つ人間同士、「話し合い」を続けていくことが基本であり、そして結局のところそれに尽きるのではないかと私は考えています。怒鳴ったり陰口を言ったり、あるいは第三者を通して伝えるのではなく、正々堂々と繰り返し話し合いを続けること、これしかないのではないのでしょうか。それにしても、異なる考えを受け入れるということは人間が生き続ける限り、永遠の課題と言えるのかもしれません。

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第1,188話 「お疲れ様」に代わる言葉とは?

2023年10月25日 | コミュニケーション

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「仕事が終わったので、まだ仕事をしている人に対して『お疲れさまでした』と言って帰りかけたのですが、その表現は良くないと上司に言われました。お疲れさまでしたと言うのは失礼なのでしょうか?」

先日、弊社が新入社員フォロー研修を担当させていただいた際に、一人の受講者からこのような質問を受けました。

多くの組織では入社早々に新入社員研修が行われますが、その際のメインテーマとして取り上げられるのが、ビジネスマナーです。ビジネスマナーには様々あるのですが、中でも最も重要視されるのが挨拶であり、研修では日常の挨拶やお客様への挨拶の練習をしていただくことが多いです。

ところで、日常的な挨拶の一つに「お疲れ様でした」があります。ビジネス上では、自身が退社するときに周囲に仕事をしている人がいれば「お先に失礼します」と言い、他者が退社するときは「お疲れ様でした」と言うのが一般的だと思います。

そのように考えると、前述のように先に退社する人がまだ残って仕事をしている先輩や上司に対して「お疲れさまでした」と言うのは、いささか配慮が足りないと言えるのかもしれません。

この「お疲れ様」という言葉は使い勝手が良いと感じる人が多いのか、退社時のみならずオン・オフの様々なシーンで使われているようです。たとえば、朝一番で他者に声をかけたり、社内電話をするような際にも、「お疲れ様です」で始まる人は少なくないように感じます。「朝一番なんだからまだ疲れていない。だからお疲れ様とは言わないでほしい」。古今このような話も聞くことがありますが、挨拶以外でも頑張った同僚や部下を労う際にかける言葉としても使われることが多いと感じます。

実際、私自身も研修の中で休憩時間の前や研修の終了時、さらには個々の受講者が会場をあとにする際に挨拶をしてくれる時にもその都度使っていますので、非常に使い勝手が良い言葉であると思っています。しかし、前述のとおり場面によっては違和感をもつ人も少なくないと思いますので、何か「お疲れ様」に代わるような言葉があればと考えているのですが、どのようなものがあるのでしょうか。

改めて考えてみると、同じような意味合いで一番に思い浮かぶのが「ご苦労様」です。しかし、これはビジネスマナーでは下の人から目上の人に使用することは失礼な表現とされていますので、お勧めはできません。他に「お世話様」という言葉もありますが、これも労いの言葉としては使えても、朝一の挨拶の言葉としては少々不向きのように感じます。このように「お疲れ様」に代わる言葉がなかなか見つからないというのが、実際のところではないのかなと思うのです。

こうした事情からか、結果として「お疲れ様」が多用されることになったのではないか思うのですが、冒頭の例のように仕事をしている人を残して先に退社する際に「お疲れさまでした」と言うのは、残業をしている人に対して配慮が足りないと考えられます。ここはやはり「お先に失礼します」を使う方が良いようです。

なかなかに深い「お疲れ様」という言葉ですが、皆さんはいつもどのように使われていますか?

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