中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,235話 サービスを提供する側の神髄とは

2024年10月09日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「このイクラは逆さにしても粒が落ちない。日本ではここでしか食べられない。また、このネタは日本で5%しか食べられないから、食べないで死んでしまう人がほとんど。それだけ珍しくて美味しい」

これは、私が年に何回か行く寿司屋の大将が寿司を説明する際の言葉です。都心から1時間ほどかかる町にあるのにもかかわらず遠方からも足を運ぶ人が多いかなりの人気店であり、さらに10数席しかないということもあり、予約が取りにくい店です。

この店では、寿司ネタが大きいことにまず驚かされるのですが、それ以外にも仕入れから客に寿司を提供するまでの細部にわたる大将のこだわりが特色と言えます。私がいつも驚かされるのは、寿司を出す際に、このネタはどこの海で取れたものかだけでなく、最近は温暖化により魚が獲れる場所や漁獲量にも影響が出ていること、さらに調理や味付けなどについても大将の微に入り細に入った説明があることです。その説明は長い時には3~5分くらいになります。

テーブルに寿司が置かれると、女将から「これから大将が寿司の説明をしますので、しっかり聞いてください」と声がかかります。私たち客は大将の熱のこもった説明に驚いたり唸ったりしつつひたすら傾聴して、その後に寿司をいただくことになるのです。説明を聞いた分、それぞれの寿司ネタの貴重さや有難み、そして何よりその味に納得することができるわけです。

話は変わりますが、私たちはオンオフを問わず様々な企業などからの売り込みのダイレクトメールや電話を受けたりします。こうしたセールスを歓迎してはいませんが、たまたま関心があるサービスやモノのセールスの連絡が来た際には、試しにセールスポイントやその会社のことを質問してみることがあります。

しかし、ほとんどの場合相手のセールスパーソンは端的に説明することができないのです。きちんとした説明ができないだけでなく、中には「最近入社したばかりなのでよくわかりません」や「そういう質問は想定していなかったのでわかりません」、さらに「新人研修の一環として電話をしていますので、わかりません」など、正直すぎる返答をされることも少なくないのです。こうした対応ではサービス検討以前の問題と感じざるを得ないことから、購入にまで至ることはまずありません。

そうした観点で考えると、先述の寿司屋の大将はおいしい寿司を出すのはもちろん、そのためにネタにこだわり、そしてその良さを顧客に理解してもらいやすいように、できるだけ定量化して論理的に説明をしてくれるのです。これは、客に新鮮なネタを満足して美味しく食べてほしいという寿司職人としてのプライドのあらわれであり、サービスを提供する側の神髄を見ているような気にすらなります。

モノやサービスを売るということは、決して簡単なことではありません。しかし、何よりセールスパーソンが熱い気持ちを持って、顧客にわかり易く伝えることができなければなければ顧客の気持ちを動かすことはできないわけです。

そのためには、この大将のようにプライドと熱い気持ちを持って工夫し努力することが欠かせないのではないかと、大将の寿司を食べるたびに思うのです。

という本ブログを書いていたら、近々またこの寿司屋に訪れたい気持ちになりました。(残念ながら予約は簡単にはとれませんが)

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第1,232話 メモは何のために取るのか

2024年09月18日 | 仕事

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「メモを取るのか、それとも取らなくてよいのか」

これは今でも必ずと言ってもいいほど、議論になるテーマの一つです。仕事に関しては、弊社が行う新入社員研修では「上司からの指示は必ずメモを取ること」と伝えており、メモを取る練習をしてもらうこともあります。

私が担当する様々な研修でも小まめにメモを取る人がいる一方で、そうしない人がいるのも事実です。では、そのような人は仕事中でもメモをすることはあまりないのでしょうか。

これに関して、私はジャーナリストの池上彰さんがニュース等を解説しているテレビ番組をよく見るのですが、タレントのカズレーザーさんが出演していることが多くあります。その中でのカズレーザーさんは、池上彰さんをはじめ他の出演者の発言をノートにメモしていることが多いと感じます。カズレーザーさんが番組終了後にメモしたものを見返しているのかどうかなどはわかりませんが、番組中のカズレーザーさんは多方面にわたって博識で、また説明も非常に端的であり、とても論理的な人であることが伺えます。(上から目線の表現で失礼かもしれませんが)

カズレーザーさんを見ていると、メモを取ることはとても有用であるように感じますが、では実際にメモを取ることは有用なものなのでしょうか?これについては様々な考え方があるようで、たとえばメモを取らなければ忘れてしまうようであれば、それはその人にとって無用な情報だと考えられるから、忘れてしまっても問題ないという説もあります。しかし、記憶力がよほど良い人でない限りは、せっかく獲得した知識であったとしても時間の経過とともにだんだん忘れていってしまうのではないでしょうか。

人間はどれくらいの時間記憶することができるのか。記憶と時間に関して引用される一つに、エビングハウスの忘却曲線があります。エビングハウスの忘却曲線とは、ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが提唱した中長期の時間の経過と記憶の関係を表した曲線のことです。時間と記憶の相関関係における実験を行った結果、1時間後には44%しか覚えていない、1週間後には21%しか覚えていないというデータがあります。このように、人の記憶は「時間が経つほど忘れてしまう」ものです。

ただし、一点注意しなければならないのは、この調査は「意味を持たない音節の記憶」に対する実験結果だということです。したがって、関心のないことを学習するときの記憶の定着率はこの忘却曲線と同様の結果になるのだと思いますが、学習する側が関心のある分野においては記憶の定着率はより高いと考えられるわけです。

私たちの仕事や生活においては、関心が高いものだけに触れるということはあり得ません。そのように考えると、仕事にしろ研修にしろ関心の有無にかかわらず、ここは有用だというところはしっかりメモを取ることが大切だということです。

もちろんメモをとること自体が目的でなのはありません。メモしたことを定期的に振り返ることによって知識を定着させ、それを仕事で活かしていくことが大事であることは言うまでもないことです。

あなたはメモをしていますか?

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第1,231話 言動の責任は自ら負わなければならない

2024年09月11日 | 仕事

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「口や手を出して何の責任も負わないような人には、どうかならないでほしい」

これはNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」の先日(9月5日)の放送の中で、主人公(虎子)の娘(優未)が義理の姉(のどか)を蹴り飛ばした後に、家を飛び出し駆け込んだ先の法律事務所で虎子の仕事仲間らに不満(蹴り飛ばした理由)を打ち明けた際に、諭された言葉です。

蹴り飛ばしたことを謝りたくないという優未に対して、虎子の仕事仲間らは「口や手を出したりするということは、変わってしまうってことだけは覚えておいて欲しい。その人との関係や状況や自分自身も・・・その変わったことの責任は自分が背負わなければければいけない」とも伝えたのです。

さて、このところ連日兵庫県知事のパワーハラスメントの疑いにかかる告発文書が出された問題が報道されています。知事は「重く受け止め、反省すべきところは反省する」と述べる一方、辞職の要求には応じない考えを示していることも報道されています。知事が辞職しない理由には様々あるようですが、これまでの流れを見ている中で最も私が気になっているのは、ここまで大きく信頼を失ってしまった組織のトップが、今後リーダーシップを発揮できるのかということです。

リーダーシップを発揮するためには人心の和が不可欠ですが、そもそも人心をつかむためには信頼される必要があります。この信頼とは、人の「言葉、行動、姿勢」を他者が見た結果、人間性や習慣といった目に見えないものに対して期待したり、その期待に応えてくれるだろうと当てにしたりする気持ちのあらわれではないかと私は考えています。そして、信頼は日常的な振る舞いを周囲がプラス評価をすることで、徐々に積み上がっていくものだとも思います。

しかし、こうして時間をかけて積み上げた信頼も、ちょっとしたことで簡単に崩れてしまうものであるということも、また確かだと思います。信頼を築くのには時間がかかりますが、崩れるのはあっという間だということです。

これに関連して、新入社員、若手社員を育てていく中で「上司が後姿を見せても、なかなか部下は育たない」というように感じている上司もいるかと思います。私が若手社員の研修などを担当させていただく中で感じるのは、上司としてお手本としてほしいと思うところはなかなか伝わらなくても、逆にあまり手本にしてほしくないようなところについても、案外しっかりと観察しているように感じます。

このように考えると、信頼を失った(手本にしてほしくない行為などをした)人が周囲にプラスの影響を与えるということは簡単にはできないということになります。

今回の兵庫県知事の例を見るまでもなく、法的に問題がある行為はもちろんのこと、余りに一般とかけ離れたような言動や行為というものは、周囲との関係を(大抵の場合は悪い方へ)変えてしまうということです。そして同時に様々な事柄も停滞させてしまうこと、そしてその責任は自ら負わなければならないということを、自戒の念を込めて認識を深めなければいけないと考えています。

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第1,230話 最小限のリスクで乗り越えられるように先手を打つ

2024年09月04日 | 仕事

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先週から長時間にわたり各地に大きな被害をもたらした台風10号の到来を踏まえ、JR東海は新幹線の3日間の計画運休をしました。

JR東海によると、計画運休は台風などの影響で雨や風が広範囲で長時間にわたって規制値を超えることが予想される場合に安全のため実施するとのことで、2018年9月に初めて行われて以降、度々実施されてきています。今回は9回目であり、3日間連続での実施は初めてということですが、一方で多くの利用者に大きな影響を与えたことも、連日報道されていました。

さて、その台風のさなかの8月29日と30日に、私はある企業の研修を担当させていただいていましたが、その受講者は全国各地から集まるものでした。台風の接近が予想されていた研修1週間前位の時点では飛行機での移動ができない受講者が出ることも想定されたため、オンラインで実施することも検討されました。しかし、台風の進路が予想よりも西へ変わり、また接近も遅くなったことなどにより、無事に当初の計画通りに対面での研修実施が叶ったのです。

対面での研修が実施できたことで、参加した受講者の間では懇親会も含めて活発なコミュニケーションがとられ、受講者同士の結束が高まるなど対面の研修ならではの効果がたくさん得られたのではないかと感じています。一方で、東海地区から参加した受講者は新幹線の計画運休により帰途は足止めとなってしまい、帰宅が3日間遅れるなど前述のように大きな影響を受けてしまったのです。

日ごろ、私は突発的な事柄には先手を打つことが重要だと考えていますので、自身でも出来得る限り先手を打って行動するようにしてきました。先手を打つことで、突発的な事柄もある程度回避ができると考えているためですが、今回のような台風や先日の南海トラフ想定震源域で発生した地震などの自然災害に対しては、先手を打っていたとしても自ずと限界があるのも確かです。

今回のJR東海の計画運休は、運航を続けることで大きな被害が発生することなどが予想されたからこその先手策であり、安全を第一に考えなければならない鉄道会社としてはやむを得ない判断だったと言えるのではないかと思います。しかし同時に、そのことによる様々な影響が大きなものとなったこともまた事実であり、今後も同様な事態の発生が予想される中では、とても難しい問題です。

今夏の平均気温は昨年と同様に、平年と比べ1.8度も高くなっているとのことです。今回の台風にも地球温暖化(気候変動)の影響があるという報道も目にしましたが、温暖化をなかなか止められない状況の中では残念ながらこれまでにはなかった、予測がつかないことが起こることを想定して備えをしておかなければならないわけです。

今後も突発的な事柄が頻繁に起こりうることを覚悟し、仕事でもプライベートでも最小限のリスクで乗り越えられるように先手を打って行動することを改めて肝に銘じました。

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第1,226話 自身の得意分野ではなく、全体最適で考えるとは

2024年07月31日 | 仕事

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「メゾソプラノやアルトの人が少ないのなら、私はソプラノではなくどちらかのパートを担当するね」

これは、合唱の練習の前に私の同級生が語った言葉です。

以前にこのブログでも紹介したことがありますが、私は毎年「青春かながわ校歌祭」に参加しています。「青春かながわ校歌祭」とは、神奈川県内の県立高校の同窓生(在校生)有志を中心に、各校の校歌・応援歌等を披露することを通じて親睦を深めることを目的に行われているものです。

校歌祭は毎年秋に行われるため、各同窓会では初夏頃から練習を開始するのですが、私の母校でも同様に今年もすでに練習を始めています。その際に、今年からこの練習に参加することになった2人の同級生が、自身が歌うパートを決める際に言ったのが冒頭の言葉です。

彼女たちは高校の頃から抜群の歌唱力があり、現在でも地元の合唱団に参加するなど日々活躍しているのですが、そこで担当しているパートはソプラノなのです。

因みに、私の母校は当時神奈川県に7校存在していた県立の女子高の一つで、同窓生は圧倒的に女性が多いので、パートはソプラノ、メゾソプラノ、アルトに分けられています。

それでは、彼女たちが自身の得意パートのソプラノではなく、メゾかアルトで歌うことを希望したのはなぜなのでしょうか。その理由は、すでに参加しているメンバーが歌っているパートが主旋律であるソプラノが圧倒的に多いからです。メゾやアルトはこれまで少数のメンバーが頑張って歌ってくれていたのですが、全体のハーモニーとしては今ひとつバランスを欠いていたわけです。

そこで、歌唱力がある彼女たちは日頃自分が歌っているパートではなく、全体のハーモニーを考えて敢えてメゾやアルトを選んでくれたというわけです。その結果、今年からハーモニー全体の完成度が飛躍的に高まったのは言うまでもありません。

これは、彼女たちが自身の専門分野に固執する「部分最適」ではなく、全体のバランスを考えてくれた「全体最適」の結果だと思います。

全体最適とは、組織やチームなどが全体として最適化されている状態を言います。組織全体が最適化されると、業務のムダが排除されることにより組織間の連携が強まり、生産性の向上につなげることができるのです。一方、部分最適とは全体の中の一部分や個人だけが最適な状態を優先する考え方で、組織においては自身や所属部署のことだけを考えて行動すると、部門間で衝突したり壁ができたりしてうまく回らなくなる原因になってしまいます。

そして、このことは会社や企業などに限らず、全ての組織のメンバーの構成においても言えることなのではないでしょうか。組織やチームを全体として最適化するためには、それぞれメンバーがどういう役割を担うのか明確にしておく必要があります。そして異動や退職などでメンバーが入れ替わった場合には、メンバーが担う役割も状況に応じて替えた方が良いケースが出てくるわけです。

先述の合唱のパートの例と同様に、「現在のメンバー構成において、自身はどういう役割を担うと組織全体が最適化されるのか」を考える必要があるのだと思います。自身の得意分野だけを追求するのではなく、全体のバランスとして何が必要なのかを考える視点をそれぞれのメンバーが持つと、その組織は自ずと最適化されていくのではないでしょうか。

ということで、今年の我が母校の合唱のレベルがどのくらい上がるのか、今からとても楽しみにしています。

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第1,225話 何にでも「さん」を付ける人の意識

2024年07月24日 | 仕事

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「受講者さんの・・・・」

これは、先日ある研修会社の担当者と打ち合わせをした際に、担当者から何度も発せられた言葉です。私が研修の進め方について説明をした後に、担当者から質問を受けたのですが、その際に「受講者さんが演習を行う時間はどれくらいあるのですか?」と受講者に「さん」をつけて表現されていたのです。それまで受講者に「さん」を付けて表現したことがなかった私としては、その表現に少々驚いたのですが、同時に新鮮に感じたことも確かです。

近年、これまでは「さん」を付けることがあまりなかった言葉に「さん」を付けた表現を聞くことが多々あります。たとえば、派遣社員やアルバイトのことを「派遣さん」や「アルバイトさん」と表現したり、農家のことを「農家さん」と表現したりするのもよく聞きます。また、若い人達の会話の中では彼氏や彼女のことを「彼氏さん」・「彼女さん」と表現するのはもはや普通のことのようです。

この「さん」について、私は本来は人の呼称に付けるものだと思っていたのですが、最近では前述のように会社名や大学名、店舗名に至るまで、何にでも「さん」を付ける人が増えてきたように感じています。このような、いろいろな場面で「さん」付けをする最近の言葉遣いを、皆さんはどのように感じていますか。

そもそも「さん」にはどのような意味があるのでしょうか。改めて広辞苑で調べてみると、「人名などの下に添える呼称。「さま」よりもくだけた言い方。また、丁寧にいうときにつける語」とあり、例として「ご苦労さん」「お早うさん」とありました。

このように「さん」は人名などに添える呼称ですから、先述の「受講者さん」や「派遣さん」などの表現は、本来の意味とは異なる使い方であると考えられます。

それにもかかわらず、「さん」を付けることがこれほど多いのはなぜでしょうか。

これにはいろいろな理由があると思いますが、一つには「丁寧にいうとき」という意味合いからの、相手に対する配慮の現れなのだと考えられます。相手に対する尊敬や丁寧さ、または親しさを表現するために「さん」を付けているということもあり、今の若い人たちがさん付けを多用するのも分かるような感じがします。

また同様の意味で、ビジネスパーソンが会社名などに「さん」を付けるのも、取引関係や競合関係など仕事上で関係がある会社であることを踏まえ、会社を人物のように捉えて敬意を示して丁寧に表現しているということです。

このように、「さん」は相手に敬意を表す言葉としてとても大切な表現ではありますが、とは言え何にでも付けるというのも、またちょっと違うような気がします。こちらは丁寧に言ったつもりでも、相手に違和感を持たせてしまうような言葉遣いをすることは、少なくとも交渉事などをはじめとするビジネスシーンなどでは、できるだけ避けるほうがいいと考えています。

最近では、ちょっとした言葉遣いが大きくニュースで報道されるなどの例もあり、言葉を適切に使うことは簡単なようで実は結構難しいものだなと思います。また、言葉そのものもその時々の社会情勢などを反映しつつ、時代時代で意味合いや使い方などが移り変わっていくものだと思います。だからこそ「今ここでこの言葉を使うのはおかしくないかな」という視点もあわせて持ち続けていきたいと考えています。

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第1,220話 アイディアが思い浮かぶタイミングとは

2024年06月19日 | 仕事

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「ウォーキングをしていると、研究の新たな視点やアイディアが思い浮かぶことが多いので、毎日必ず歩くようにしているんです。」

これは、先日放射線によるがん治療の研究をしているある研究者が話していた言葉です。学術的な研究をしている人に限らず、多くのビジネスパーソンも仕事とは全く異なる場所やタイミングに、ちょっとしたきっかけで良いアイディアが浮かんできたなどという経験をもっているのではないでしょうか。たとえば、家のお風呂で湯船に浸かっているときや、寝床に入ってうとうとしているときなどに、突然具体的な発想やアイディアが浮かんでくるということがあります。私自身はこのひらめきのような感覚を、「目の前にアイディアが下りてくる」といった感じでとらえています。

古今東西、同じような経験をしている人の話はよく聞きますが、このように仕事から少し離れたタイミングで良いアイディアなどに恵まれるということがあるというのは、どうしてなのでしょうか。

医学的にどこまで解明されているものなのかはわかりませんが、これに関して私が思っているのは、仕事から少し距離を置くことでストレスやプレッシャーから解放され、リラックスした状態になれているということが理由の一つにあるのではないかということです。

仕事に集中し続けてこそこうしたひらめきが生まれると思いがちですが、実際には私たちはそうなるとかえって集中力が低下したり、思考が固定化されてしまったりすることが多いように感じます。

逆に、前述のような仕事を離れてリラックスできている状態では、自由にさまざまな発想を働かせることができるようになり、脳が無意識のうちに様々な情報を処理し、関連性のある情報を結びつけ「ひらめき」につながることが起こるのではないでしょうか。その意味では、この一連のプロセスは意識的にひたすら物事を考えつづけるよりも効率的であるといえるのかもしれません。

「いつでもどこでもアイディアが湯水のように沸き続ける」という人はそうそう多くはないかと思いますが、仕事に追われ余裕がないときほど、逆に意識的にいったん仕事を離れて休息を取るようにすることが必要なのかもしれません。そうすることにより、脳がリフレッシュされて集中力が回復し、再び仕事に戻ったときに新鮮な視点で課題に取り組むことができるようになります。その結果、自分でも思いがけないような新しいアイディアが目の前に現れるということになるのではないでしょうか。

しかしそうは言っても、ただ単にリフレッシュ・リラックスすれば誰でもすぐによいアイディアが浮かぶというものではないのは明らかです。もともと持っていた様々な情報が、それまではばらばらになっていたものが、あるきっかけで一つに結びつきそれが新しいアイディアになっていくわけです。そうなるための前提としては日ごろから一見仕事に直接結びつかないと思えるような情報であっても積極的にストックし、整理するなどの備えをしておくことも必要なのだと思います。

私たちビジネスパーソンは、仕事中はそれに集中することはもちろん重要なのですが、何事にもメリハリは必要です。日ごろ、物事に追われてしまい気が付いたら余裕がない状態になっていたということになりがちですが、だからこそ忙しい中でも意識的にメリハリをつけ、少しの余裕をもって物事にあたれるように心がけていきたいと考えています。

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第1,217話 役職定年を廃止する組織の成長とは

2024年05月29日 | 仕事

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「役職定年」を廃止。

近年、役職定年制度を廃止した企業等に関する報道が続いています。言うまでもありませんが、役職定年とは予め定められた年齢に達した社員が部長や課長などの役職(主に管理職)から退く制度であり、大企業を中心に導入されてきました。

この役職定年制度は、大きくは若手社員の育成と人件費の抑制の2つを目的として導入されたものです。しかし制度の導入後時間が経過する中で、シニア層のモチベーションの低下、人手不足で若手社員の採用が困難になってきていること、さらに働き方をはじめとする環境の変化等により、制度の運用を見直し始めた組織が増えてきたことは、当然のことだと思います。

また、こうした動きは企業に限らず、自治体でも制度の廃止ではないものの、定年を迎えた職員を引き続き参与などの肩書で、それまでと同じ仕事を担当させるという例も増えてきているようです。こうした例も、実質的には同様の動きだと思います。

こうした動きに関して私が気になっているのは、いわゆる組織の若返り、世代交代の観点からの取り組みも同時にしっかりと進める必要があり、そこを決しておろそかにしてはいけないということです。 

役職定年を廃止し、シニア社員がそれまでと同様に管理職のポジションで同じ仕事を続ける場合、当人はモチベーションを維持できますし、安定してかつ確実な成果も期待できます。しかし、それは次にそのポジションを担っていくことになる若手社員にとっては、そうした経験を積み成長していくキャリア形成の機会が限られることになります。その結果、若手社員のモチベーションをどう維持し育成していくかが、これまで以上に大切になっていくと考えています。

そのためにも、若手社員に今後のキャリアプランを示して本人と企業で共有し、それに向けて計画的・継続的に育成を行い、シニア層からのスムースなバトンタッチができるように同時に手を打っておくこと。この観点でしっかりと取り組んでいくことが欠かせないと考えています。

同時にシニア社員にも継続して「会社がバックアップしている」「これからも成長していける」と実感できるようなキャリア開発の機会を提供することも必要です。

組織全体が成長していくために、若手社員、シニア社員の一方に力点を置くのではなく、双方にモチベーションを維持してもらえるような機会をいかに提供できるかが、今後の鍵になると考えています。

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第1,216話 自分が好きに生きられるように努力することとは

2024年05月22日 | 仕事

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「社員の異動 応募制に」

先日(2024年5月19日)の日経新聞の朝刊を読んでいたところ、この記事のタイトルが目に飛び込んできました。

記事には三井住友海上保険の人事制度(異動)の刷新について書かれていたのですが、来年4月より社員は少なくとも4年に1回、自らが希望する勤務地やポストに応募する必要があり、会社はそのポストに就くためのスキル習得も後押しするとのことです。また、全国の部支店が募集するポストや社員に求めるスキルを示し、社員は自身が習得したスキル、希望のキャリアに沿って応募することができるとありました。

このように、近年では社員が希望する部署へ配属や異動ができるような制度を設ける組織が増えています。制度の導入により社員のやる気につながり、離職を減少させるなどの効果も期待できますので、今後導入する企業がますます増えていくのではないかと考えています。

しかし、一方で人気部署に応募が集中して偏ってしまうことや、異動希望が少ない部署などは半ば人が固定されてしまい、その結果仕事が属人化してしまうことなどが懸念されるのではないかと考えます。また、最も難しいと思うのは、募集部署で必要となるスキルの示し方や応募の際の保有しているスキルのアピール方法など、制度を適切に運用するためにはクリアすべき課題もかなりあるのではないかと思います。

ところで、この記事を読んだときに私が思い出したのが、先日NHKで放送された「新プロジェクトX~挑戦者たち~ 弱小タッグが世界を変えた~カメラ付き携帯 反骨の逆転劇~」です。この番組で紹介されたうちの一人が、18歳でシャープに事務職として入社した後、独学で開発研究職にたどり着いた宮内裕正さんの話です。宮内さんは事務職から開発研究職への異動を希望するにあたり、休日にも出社してひたすら勉強し、試行錯誤を重ねて最終的にカメラ付き携帯の商品化に尽力したのだそうです。

番組の中で宮内さんが発した言葉のうち、強く印象に残っているのは「自分のゴールを設定したら、(自分が)実際何を知らないのか、何を学ばないといけないのか具体的になります。」というものです。自分が進みたいと思う方向があるのなら、まずはそこにしっかりとゴールを定めること。そうすれば、それに向かって必要となるスキルや知識が自ずと明確になるということをおっしゃっていたのだと思います。

また、宮内さんは続けて「本当に真面目に一生懸命やると、すごく意外な結果になるんです。私がそうでした。」 「好きに生きました。好きにやらせてもらいました。好きに生きられるように努力してきました。」とも話されていました。たとえ今は本来の希望とは違う仕事をしているとしても、自分がかなえたいと思う方向に向かって一生懸命に努力し続けることで、キャリアチェンジは可能になるということを示してくれている言葉だと思いました。

話は戻りますが、冒頭の記事にあったように企業をはじめとする組織内での異動はこれまでのように組織命令だけでなく、自らが選択することが可能なものに変化しつつあります。

こうした中で自分の将来は自分で選択したいと思うのなら、自分はどのような道を歩んでいきたいのか今後のキャリアプランについて考えていくこと。そしてそれが明確になったら、そのためにどのような努力をすることができるのかを自らに問いかけ、それに向かって努力し続ける強い意思がますます必要になってくるのではないかと考えています。

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第1,215話 カスハラに対して組織がとるべき対応とは

2024年05月15日 | 仕事

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最近の報道によると、厚生労働省は「カスタマーハラスメント」(以下、カスハラ)に対して、従業員を守る対策を企業に義務付けるための検討に入ったとのことです。

カスハラとは、直訳すれば「顧客による嫌がらせ」ということです。カスハラについて各種の機関が行った実態調査によれば、いずれでもカスハラの件数が著しく増加しているとの結果が示されています。

実際に、私自身もこれまでに鉄道会社の駅員や店舗で働く従業員に対して、顧客が執拗にマイナス感情をぶつけているのを何度か見たことがあります。一方的な激しい顧客の物言いを目の当たりにし、もし自分があのようにされたらどういう対応をすればよいだろうかなどと考えましたが、簡単に答えは出せないと思いました。そのように考えると、今後従業員を守るために各企業等が具体的な施策を示し取り組んでいくことは、大変重要なことであり、速やかに進めていくべきものだと考えています。

同時に、最近私自身が顧客の立場として感じるのは、結果的にカスハラを誘発してしまいかねないような、従業員による顧客への対応も少なからず見受けられるということです。

たとえば、先日私がある企業に電話で問い合わせをした際に、電話口で対応してくれた人は質問に対し即答できず、その都度「確認をしてきますので、少々お待ちください」と保留にし、結局3分以上待たされたことがありました。そうかと思うと、いきなり上司と思しき人に電話が替わり、あたかもクレームとしての対応をされそうになったということもありました。

前段のような、業務にあまり精通していない人が顧客対応にあたるケースは、ここ2~3年で急増しているように感じているのですが、それは人手が不足していることが一つの原因かもしれません。しっかりとした知識を得る前に新人が現場に出ざるを得なくなって、顧客に対応する機会が増えているのかと推測します。このようなことが続くと、顧客側にも不満が募ってしまいますから、これは担当者個人でなく組織として対応すべき問題だと考えます。

もう一つ私が気になっているのは、後段のように問い合わせをクレームやカスハラのように扱ってしまうということです。クレームは「苦情を伝えたり、回復を要求する」こと、ハラスメントは「嫌がらせ」であり、使い方やサービス情報等がわからないところや知りたいことを確認する「問い合わせ」とは明らかに異なります。顧客から少々きつい言い方をされたとしても、内容をよく聞いてみればクレームやハラスメントには当たらないケースも実は多いのではないかと思います。それを一緒くたにして対応してしまうと、別の問題が生じてしまうのではないでしょうか。

顧客対応の際には、まずは先入観を持たずにじっくりと話を聞いてみる。その際にはいやいや対応しているのではなく、真摯に話を聞くという態度(非言語)も大切だと考えています。そして、やり取りをふまえ顧客が求めていることを冷静に判断することが大切です。

カスハラは許してはいけない、組織としてきちんと対応していくべきものです。一方でカスハラか否かの判断は、セクハラなどと同様に当事者間の感じ方に大きく左右されるなどの面があります。であるからこそ、今後、行政がきちんと指針を示してどのようなケースが該当するのかをはっきりと示し、各企業はそれに従い従業員を守るための施策を考え、確実に実施していくことが大切だと考えます。

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