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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

顕微鏡とリカちゃん

2011-12-12 10:02:56 | 日記
 その年の夏休みが終わると、私は祖父の残した巨大な凸レンズを使って田んぼの水に生息する微生物を観察するのが大好きになっていた。
 ネスカフェの空きビンに田んぼに残った水をすくい、周辺で集めてきた枯れ草やわらを入れて数日おくと水の中を動きまわる小さな生き物が発生する。肉眼でも見えなくはないが老眼の祖父が新聞を読むために使っていたレンズで覗くと不思議な生き物たちの姿形をよく見ることができた。
 最初は妹も大騒ぎして観察したものだったが、次第に飽きてしまった。顕微鏡があればもっとはっきりいろいろな微生物を見ることができ、きっと妹も面白がることだろうと思っていた。
 
 
 わが家では私が生まれた年に買ったというモミの木が庭に植えてあり、クリスマスが近くなるとそれを掘り返して根元をバケツに入れ、バケツの周囲を母が溜め込んだ綺麗な包装紙で包んで部屋に飾る習慣があった。飾り付け用の装飾が入った箱が押入れから出されると私も妹も飛びつくようにツリーの飾り付けを手伝った。わが家ではサンタクロースへのお願いはこの飾り付けの時間にするものとされていたからだ。装飾品がしまってある箱には、何年も使ってきた電飾と金銀のモールや可愛らしい小さな人形、色とりどりの星やツリーのてっぺんに付ける銀の大きな星などが入っていた。これらをツリーに飾りながら欲しいものの話をする。するとクリスマスの朝、ツリーの根元にプレゼントが届いているのである。
 
 その年の飾り付けが始まる前、私は妹におまえも顕微鏡が欲しいだろうと何度も聞いていた。顕微鏡は当時のわが家には高価過ぎると思っていた私の姑息な作戦である。兄妹一致して一つのものを頼むなら高いものでも何とかなるのではないかと考えたのである。飾り付けが始まると母はいつものようにクリスマスプレゼントには何が欲しいか、それとなく尋ねて来たが、私は妹も私も二人とも顕微鏡が欲しいのだと強く主張した。強く言わないと妹が自分の欲しい別のものを言ってしまうのではないかと思ったからだ。しかし、妹も顕微鏡が欲しいと一緒になって言って私を驚かせた。
 
 飾り付けを終えてツリーの電飾にスイッチを入れるとツリーだけでなく家中がキラキラと輝いたように見えた。
 
 クリスマスの朝、ツリーの根元には2つのプレゼントが置いてあり、私のものには青いリボンがかけてあり、開けてみると小さいが本格的な顕微鏡だった。小躍りするとはああいう事を言うのだろう。欲しくてたまらなかったものが手に入った喜びで飛び上がった。妹のものは赤いリボンがかかっていて、開けてみるとその頃流行っていたリカちゃん人形だった。リカちゃんだリカちゃんだと妹もまた跳ね回って喜んでいた。妹が本当に欲しかったものだったからだ。
 
 父や母がどんな顔をして私たち兄妹を見つめていたか覚えていないが、きっと子供たち以上に喜んでいたことだろう。
 
 この時期ふっと思い出す光景である。(三)
 

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株式会社ジェイエスピー
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