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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

あの日の約束

2012-03-26 08:40:38 | 日記
 あの日、私は五反田の駅前で腕時計を見た。2時45分。3時に訪問の予定だったのでまだ早いが、まあいいか、早く来たといって迷惑がるお客さんじゃない。行ってしまえ。
 そんな風に思って駅前の横断歩道を渡った直後、強い揺れが来た。
 交通信号がゆさゆさ動くほど強い揺れだった。歩けなくなって横断歩道上に座り込むご婦人。母親に手を引かれた幼稚園の園児らしい女の子は恐怖で泣き出した。あちこちが騒然とする中、携帯電話を取り出して会社に電話しようと思ったが繋がらない。仕方が無いので訪問先のビルを目指す。ビル前は大きな駐車場になっており、そこに大勢の人達が仕事途中で逃げ出してきたといった風情で続々と集まっていた。訪問先は8階だった。ビルに入ってエレベーターを見たが当然動いていない。館内放送が流れてエレベーターは使えないので階段を使って避難しろと言っている。その最中も大きな余震だ。あちこちでビルから逃げようとする人達の興奮した声と余震の時には悲鳴も交じる。
 階段を怯えながら降りてくる人達を避けて8階まで登ると、訪問先の会社で私のお相手は待っていた。「ちゃんと来るだろうと思ってましたよ」そんな風に言った。大きな余震は続き、打ち合わせどころではなくなって「避難しましょうか」とさっき登ってきた階段を2人で降りたが、みんなが逃げ出した後も待ってくれていた彼に私は何か大きな恩義を感じていた。
 何ヶ月か経って、その日のその後を聞くと、彼は会社で一夜を明かしたという。私は五反田のその会社から横浜まで歩いて帰った。
 
 同じ日、赤坂の老舗バーレストランはこんな日に店を開いても誰も来てくれないかもしれない、そう思いながらいつもの夕刻、開店したという。いつもなら生の演奏が響き、あちこちのテーブルで静かに語らう人達でいっぱいの店も、その日は依頼していた3名のバンドのうち2人から交通機関が動かないので行けないと電話があった。ピアノの男性だけが普段なら30分もかからない距離を数時間もかけて車でやって来た。関係者以外今日は来る人もいないかと思っていた時、一人の女性がやって来た。今日はここで待ち合わせだ、という女性のために店主は一番いいテーブルを用意した。全ての交通機関が麻痺しているその夜、どうやってやってきたのか、誰かを待っている女性のためにピアノの男性は祈るような気持ちで静かな曲を弾いた。それから1時間、テーブルの女性は別にして店の誰もがあきらめかけていた頃、ガチャリとドアを開けて一人の男性が現れた。外は寒いはずなのに汗だくだ。どの交通機関もダメなので埼玉から自転車をこいで来たのだという。絶対に待っていてくれる、そう信じて走って来たのだ。
 震災から1年、あの日を振り返った店主はNHKのカメラの前で、あの時は本当に胸が熱くなりましたと語った。どんなことがあっても店を開けてきて本当に良かった。あの日も店を開けて本当に良かったと。
 
 あの日、どれだけ多くの人が約束を守り、どれだけ多くの人が守りたかった約束を果たせずに終わったのだろうか。(三)
 
 
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株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
  製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
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