今では幼稚園に通う子供にさえ携帯電話を持たせている時代である。そんな時代に生きる若い人には携帯電話どころか固定電話すら無かった小学校時代を過ごした私の経験など笑われるだけだろう。家に黒いダイヤル式の電話がやって来たのは小学校6年も終わりの冬だった。ダイヤル式と言ったって通じないかもしれない。黒い電話の前面に着いたリングの穴に人差し指を突っ込んでグルリと回すのだ。リングはジッーというような音を立ててゆっくり戻ってくる。これをかけたい番号の回数繰り返さないと電話がかからない。記録されている番号の相手を選択すればいきなり電話がかかる今の携帯と比べると、電話をかけるのにえらく時間がかかる方式ではある。それでも電話が無い時代と比べれば格段に便利になったことは確かだ。
私は幼い頃は四季折々必ず扁桃腺を腫らして高熱を発する少年だった。そもそも常にちょろちょろと動き回る子供で、今ならADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されかねないほど、あちこちに気が散って落ち着つかない子供だったから、その子供が高熱を発してぐったりしてしまうと母はいつもおろおろと大げさに心配して私を寝かしつけ、駅前のお医者様に走った。歩いて7~8分の距離だ。電話が無い家だったので、自分で動いて知らせに行くしか無かったのだ。サンダル履きで医院の扉にたどり着くまでおそらく一回も休むこと無く走り続けたに違いない。お医者様はいつも慌ただしく戻って来た母のすぐ後で看護婦を連れて大きなカバンを持って往診してくれた。優しい先生だった。
当時は今のようにすぐ効く解熱剤なども無かった時代なので、お医者様が帰った後も母は枕元に座って熱が下がるまで洗面器の水でタオルを絞って額に乗せてくれた。ほぼ毎回翌日朝方まで熱は下がらず、熱で乾いてしまったタオルと冷たく絞られたタオルが暗がりの中で交換されるのを私はじっと待っていた。明るくなる頃になって母の手が私の額に乗り、熱が下がったと安堵すると急に私も元気になったような気がしたものだ。
今思えば私が今こうして好き勝手に生きていられる理由の大半は母が命を削って守ってくれたおかげだ。
震災から1年、大地震の発生したその時刻に私は急に入院した母のベッド脇に座り、皺だらけになってしまったその寝顔を見つめていた。被災した方々に対する思いと同様、母に対してもこんな自分に何ができるのか、考えていた。
いつもそこにあった優しさに今さらながら感謝しないではいられない。とてつもないことをして、ほら、と見せびらかす必要は無い。ほんの少し真剣に優しくなればいい。いつでも忘れずに大事なものを大事にしていればいいのだ。母がそうしてくれたようにいつもそこにいて大丈夫大丈夫と笑っていれば、きっと大丈夫なのだ。日常の些細なことが人を支え一歩踏み出す力になる。そう信じている。(三)
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製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
私は幼い頃は四季折々必ず扁桃腺を腫らして高熱を発する少年だった。そもそも常にちょろちょろと動き回る子供で、今ならADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されかねないほど、あちこちに気が散って落ち着つかない子供だったから、その子供が高熱を発してぐったりしてしまうと母はいつもおろおろと大げさに心配して私を寝かしつけ、駅前のお医者様に走った。歩いて7~8分の距離だ。電話が無い家だったので、自分で動いて知らせに行くしか無かったのだ。サンダル履きで医院の扉にたどり着くまでおそらく一回も休むこと無く走り続けたに違いない。お医者様はいつも慌ただしく戻って来た母のすぐ後で看護婦を連れて大きなカバンを持って往診してくれた。優しい先生だった。
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今思えば私が今こうして好き勝手に生きていられる理由の大半は母が命を削って守ってくれたおかげだ。
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いつもそこにあった優しさに今さらながら感謝しないではいられない。とてつもないことをして、ほら、と見せびらかす必要は無い。ほんの少し真剣に優しくなればいい。いつでも忘れずに大事なものを大事にしていればいいのだ。母がそうしてくれたようにいつもそこにいて大丈夫大丈夫と笑っていれば、きっと大丈夫なのだ。日常の些細なことが人を支え一歩踏み出す力になる。そう信じている。(三)
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