ノスタルジー

　最近子供のころの事を懐かしく思い出すのだが、心理学的には、如何なものなんだろうか。私は晴れた日曜日の午前１０時に、東京都大田区蒲田で、生まれた。生家の右隣が助産院で、その隣が下駄屋さんであった左隣りから数軒行ったところが材木屋で、今では考えられないが積んである古い材木の上で良く遊んだ事を覚えている。私の名前はくじ引きで決まった、父母をはじめ近所の人がそれぞれ書いた名前を、向かいの家の女の子が引いたそうである選ばれた名前を入れたのが父で、私から見れば事なきを得たというところであるが他の結果になったらちょっと複雑だったのでは。向かいのご家族とは、遠い親戚より近くの他人ではないが、かなり親しくしていたし、大変お世話になった。

５歳になろうとしている頃、家を移らなければならない事情が起きたようで引っ越しをすることになった、横浜に土地を買い家を建てるのだが
おそらく土地を買ったら資金が不足したのだろう、なんと父は蒲田に有った家を分解し業者に運ばせたのだろうが、自分で建て移築してしまう。父の職業は大工ではない、自動車の部品を作る仕事をしていたはずである。家を建てている間一年弱住んでいたのが、母の実家のそばである品川区大井町の滝王子（たきおじ）である。親戚の世話で商店に住んでいた、店が出来るスペースは餅菓子屋をしていた親戚のガレージとなっていた。

母の実家は大井町の三又商店街の中程で「ミシン屋」を営んでいた、祖父はその地で最初は機械で毛糸を編み商売をしていた（犬のセターも編んだ事がある）、その後メーカー製のミシンを販売し、また鋳物職人に依頼しオリジナルのミシンを長男（私の伯父）と一緒に作成することになる、「さくらミシン」といった。

最近、大井町に行く機会があったので、５０年以上前の記憶を辿って、住んでいた家のあたりに行ってみた、まずは「ミシン屋」のあったところへ行きそこから家のほうに移動をしようと考えた、当時はほぼ毎日夕方になるとテレビを見に一人で歩いて通っていた、帰りは母か父が迎えに来た。ところが三又商店街はなく、１０階建てぐらいのマンションが多くたち、２３年前祖母が亡くなった時訪れた時とは一変していた。

裏の牛乳屋さんも、隣のメガネ屋さんも、材木屋さんも、豆腐屋さんも・・・、なくなっていた。豆腐屋さんがあった前を通り、小学校の前を通り材木屋（なかった）を通り進んでみたが、迷ってしまった親戚の「餅菓子屋」（廃業したことは知っているが）も判らず、その隣にあった伊藤中学校も探せない、ときどきテレビを見せてもらった隣の「お茶屋さん」も判らない、良く遊んだ池のある滝王子稲荷も、鹿嶋神社も探せなかった、まあ５０年以上もたっているのだから町並みはすっかり変わっていることは承知していたが、ここまで判らないとは思わなかった。

帰って来てから、インターネットで滝王子辺りの地図を拡大したりして調べてみた、すると滝王子稲荷も、鹿嶋神社もあるではないか５歳の子供は意外に行動範囲が広かったようで、今回私が予想していたよりはるかに遠いところに存在していた。又機会を見つけて（出来れば早めに）再度地図を片手に散策してみたいと考えていいる。（鉄）


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