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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

語り継ぐ言葉

2012-06-25 08:35:06 | 日記
 6月23日土曜昼、母の住む家を訪ねると母は一心にテレビに見入っている。映し出されているのは「沖縄全戦没者追悼式」の模様だ。

 県立首里高校3年の女子学生が演台に立って南の海で亡くなった祖父の兄さんから送られた最後の手紙を紹介している。67年前に起きた現実を現代の女子高生が全力で理解しようと努めている言葉が詩になって披露されている。
 戦没者の名前を刻んだ「平和の礎(いしじ)」に画面が切り替わる。24万人以上の名前が刻まれた石板が平和記念公園に並んでいる。途方も無い数の名前をひとつひとつ指でなぞりながら、その一つに刻み込まれた親族の名前を探し出して花や酒を供えるお年寄りの姿がある。
 
 私の母もこの戦争で兄を一人亡くしている。母自身も戦闘機の機銃掃射を受け、間一髪で命拾いをした経験を持つ。戦闘機のパイロットの顔がすぐ近くに見えたという話を何度聞かされたことだろうか。

 ほんの67年前の現実。その頃から今もずっと続いている時間の中で暮らす方々が見る追悼式と、その後の世代が見る追悼式は見え方がまるで異なるだろう。同じ空気を吸って生き、そして亡くなった人たちの追悼式を母はじっと見つめている。
 
 首里高校の女子高生は緊張した面持ちで、しかし澄んだ落ち着いた声で思いを伝えた。自分にできることは忘れないで語り継ぐことだ、と言い残して席に戻る彼女の姿をカメラは追う。隣の席の人に声をかけられたのだろう、少しうなずいてさっと緊張がほどけ、笑顔が浮かんだ。その光景を見ている母も笑顔になる。戦いで亡くなった方々が必死で守ったもの。沖縄のすべては守れなかったかもしれないけれど、ほらここにあるよ、と女子高生の笑顔に向けて姿なき人々がささやいたような気がした。
 
 6月24日日曜、雨で延期されていた月1回の農業体験に参加した。先月蒔いた種や植えた苗は一体どうなっているだろうか。強い風と雨を伴う台風が通過した後だ。畑の作物も倒れたり大きな水たまりに埋没しているのではないか、そんな心配をしながら現地に向かった。
 
 が、心配は無用だったようだ。植物は強い。一面緑のジャングルのよう。どれが雑草でどれが植えた作物なのかわからないほど緑が畑を覆い、地面が見えないほど。キュウリもナスもピーマンもシシトウもみんな巨大に生育している。ただトマトの実だけは茎が地面をはって広がってしまったために土について腐っているものがある。まだ緑の小さなトマトは葡萄のように雑草に隠れて実っている。
 
 かぼちゃも順調に育った。苗を植えてまだたった1ヶ月だ。さすがにまだ早いだろうと思ったが、2種類あるかぼちゃの大きいやつを1つづつ採って食べられるかどうか切ってみたところ、1種類はもう食べられると言う評価を受け、収穫して食べることになった。
 
 昼は巨大な野菜を収穫して豚肉と一緒に網の上に乗せて焼く。バーベキューだ。キュウリだけは味噌をつけて豪快にかじる。曇っていて直射日光に焼かれていないのが救いだったが、日差しが強かったら野菜をバーベキューにしているのか自分たちがバーベキューにされているのかわからない暑さだったろう。
 
 午後はもう、ただただ草むしりだ。指先を泥だらけにして黙々とただ雑草を抜く。逃げ出す昆虫、土の匂い、草の香り。腰をかがめて作業を続ける。何百年何千年も前から続けられてきた作業と同じ作業だ。
 
 おそらく67年前の夏も同じように畑仕事をしていた人たちはきっといた。肉体的には本当につらい仕事だが、屋根のない広い土地で「作る」ために働くのは、気持ちがいい。
 
 首里高校の女子高生が言うとおり、忘れないで語り継いで行くべき大切なことは誰にでもある。ただし、語り継ぐ言葉を生み出すのはたやすいことではない。指先を泥だらけにしながら草むしりを続けていると言葉は生み出されること無く、五感だけがそこにあるように変化してしまうからだ。ただ黙々と作業する静かな落ち着いた時間は若者を振り向かせる言葉を生まない。大切な思いを語り継ぐには、やはりそれなりに努力と労力がいる、ということだ。(三)
 
 
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株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
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