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IMジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

凧と父と

2016-12-26 08:27:33 | 日記
 クリスマスを過ぎると凧を作った。私がまだ小学校低学年だった頃の話だ。模型屋さんに出かけて竹ひごを買い、凧の枠を作った。やっこ凧のような曲線を必要とする形はうまく作れないので何の変哲もない長方形になった。接合部分は凧糸を結んでつなぐ。風で骨組みが折れてしまわないように念入りに竹ひごを補強してセロハンテープをグルグル巻く。骨組みが出来上がると、ふすま紙を張る。糊は残ったご飯だ。張ったふすま紙に水彩絵の具で絵を描く。下書きも何も無しにいきなり当時大好きだった鉄腕アトムを描く。変な顔だが悪く無い。背景を青く塗って出来上がりだ。絵が入った凧の枠に凧糸を結び、重心を調整する。新聞紙を5センチ幅ぐらいに切って糊で繋ぎ合わせ2メートルほどの帯を作る。これを2本作って凧の足にする。
 
 父は年末休みになると「行こうか」と誘ってくる。むろん「凧揚げに行こうか」という意味だ。父との思い出は数少ない。そのうち一つが凧揚げだ。父は凧揚げが好きだった、と思っていたのだが本当にそうだったのかどうか。子供と遊ぶほかの方法を知らない。家にいれば母に大掃除を頼まれる。そんなことの複合的な結果が、この季節の凧揚げ習慣になっていたのかもしれない。よく揚がる凧が押し入れに入っていて、それを引っ張り出して新聞紙で足を付け、出かける。行く先は田んぼだ。当時住んでいた家を出てゆるやかな坂を下りれば、もう一面田んぼだらけ。電信柱もない。つい数か月前までは金色の海のようだったところも、刈り入れが終わって広々とした野原のようになっている。
 
 父にアトムの凧を持ってもらって、私は田んぼの中を走り出す。うまくすれば父が手を放すと同時に凧は高く舞い上がる、はずなのだが、おそらく糸の重心調整がうまくないために凧はくるりと回転して頭から地面に突き刺さってしまう。少し調整しては走り少し調整しては走りを繰り返す。凧の足がちぎれてしまうが、これも修繕してまた走る。風と走り出しのタイミングがうまく合ってぐんぐんアトムが空に昇って行く。少し離れたところで父は一人で凧を風に乗せてしまう。「いいなぁ、アトム。よくできた」父は私の凧を見てそんなことを言う。私は凧以上に舞い上がってしまう。北風が冷たかったはずなのに、そんな記憶はまるでない。ただ遠くのたき火の匂いはなぜかよく覚えている。
 
 呆れるくらい長い時間凧を揚げて家に帰ると、風呂を沸かして父と入る。家で遊んでいた妹を風呂に誘っても、凧揚げに誘ってくれなかったことをすねていて「お母さんと入る」と断られてしまう。転んで稲の切株で怪我をさせてしまってはいけないし、クリスマスプレゼントの人形に夢中になっているからと誘わないで出かけたのだ。
 
 その日の夕飯のことまで思い出すことは出来ないが、きっと母のことだから「揚げる」にかけて天ぷらでも作ったのではないかと思う。そしてその食事中に翌日の大掃除計画を発表していたはずだ。年末の大掃除も父との数少ない思い出のひとつなので、父の大掃除脱出計画が成功したはずがない。(三)


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株式会社ジェイエスピー
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