声

　朝起きると今日は何をしでかしてくれたかな、とニュースを見るのが楽しみになっている。米国大統領の行動は興味を引く。あ、また、と思うのは高齢ドライバーの事故の話しとご家族が犠牲になる火事の話しだ。何となくニュースがパターン化されて来ている。航空機事故が起きた時も、やはり連続するような気がしたものだが、同じような出来事を連鎖的に引き起こす見えないエネルギーでもあるのだろうか。食い止める方法があればいいが。
　
　見えないエネルギーと言えば最近の物理の世界というか天文学では見えないエネルギーが宇宙を膨張させているのではないか、という説が主流らしい。日本語に訳すとかなり怖いために当初は訳語を使って暗黒エネルギーなどと呼んでいたものをダークエネルギーと訳さずに使っている。この未知の力、ダークエネルギーが宇宙全体に作用して宇宙を急膨張させているという。
　また、宇宙に星々があるのは宇宙を満たす未知の物質ダークマターがあったからだ、という説もある。これも目に見えない。暗黒物質だ。
　
　詳細に観察してみると、それまで考えていた理論と合わない、おかしいな、となってからの学者の皆さんの葛藤や立ち位置の変化が面白い。発見された奇妙な出来事を説明する突拍子もない仮説を打ち出し、同じ仮説を信じる仲間を増やして正当性を立証する新しい観察を行う。仮説を打ち出すだけでなく仲間を作って掘り下げて行く。今や先端的な理論の分野も一人で何かを成し遂げられる状況にはない。多くの人たちの協力や励ましがあって成り立って行く。企業の仕事のありようとほぼ同じだ。多くの人が頑張ろうと思えない研究や仕事はやがて廃れてしまうのだ。
　
　企業における見えないエネルギーを作り出しているのは、おおむね「声」だ。声がエネルギーになる。社会も同じだろう。一人だけで上げた声は小さい。が、何人も何十人も何千人もまとまれば強い声になる。まとめる力が必要だ。まとめる声は力強い。悲しい声でも暗い声でも蚊の鳴くような小さな声でも人はまとまらない。力強く明るい声で話す声のもとに人は集う。見えないエネルギーはそこから生まれて来る。うまく人と付き合って行こうと考えたら声の使い方を考えたほうがいい。もちろん声に乗せる言葉は重要だ。重要だがその言葉に力を与えるのは声なのだと思う。
　
　ITが進化し、メールやSNSで簡単に言葉を拡散することができるようになった。しかし直接会って話すことで得られる想いを無視することは出来ない。声を上げ、自分の声で伝える努力をしている人たちに出会うと頭が下がる。人を元気にする声を上げ続け、それで流れが変われば素晴らしい。目に見えないエネルギーだがダークエネルギーなどと呼んでしまっては申し訳ない。
　
　そういえばかなり聞いてきたはずなのに米国大統領の声を思い出せない。静かに語り掛ける口調で長い時間話しているのを聞いたことが無いのかもしれない。（三）
　

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