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太郎

 弁慶が死んで、弁慶の果たしていた役割がたくさんあったのに気がついた。私の愚痴を聞く相手、朝夕の食事の残り物の片付け役、そして何よりも番犬として見知らぬ人がやって来たときには吠える役、それらを弁慶は一手に引き受けていたわけで、いなくなれば当然困ることも多かった。
「やっぱり代わりはいるよなあ・・」
折に触れて妻とは話していたが、年末年始は私が忙しくてそれどころではなかった。
 
 冬休みが終わった先週半ば、少しは時間ができたので、弁慶を買った名古屋の秋田犬専門店に電話してみた。しかし・・、もうそこは店を閉めて老婦人が独りで暮らしているだけになっていて、秋田犬を探すことはできないということだった。
「それじゃあ、ネットで探すしかないな・・」
だが、まず第一に秋田犬を扱う業者が少なく、しかも苦労して探しだした業者でも、今は子犬がいない状態のところが多く、なかなか思い通りにはいかなかった。
「春まで待たねばならないのかな」
と思い始めたころ、それまであまり熱心でなかった妻が急に検索上手の腕前を発揮して、愛知県にある秋田犬のブリーダーのHPを見つけ出した。そこには11月12日生まれの牡の秋田犬が1匹いると書かれていた。色は白。弁慶のように茶色の秋田犬は「あか」と呼ばれ、ごま塩のような色をしたものは「とら」と呼ばれる。真っ白のものは「しろ」と呼ばれるのだが、このしろが本当にきれいな真っ白であるのは以前から知っていた。それまではまた「あか」を飼おうと思っていたのだが、あまり弁慶の面影を引きずるのもよくないと思い直して、今度は「しろ」を飼ってみようかという気になった。
 それが12日の夜のこと。翌日ブリーダーに電話してみたところ、その子犬には問い合わせが今のところないから、すぐにでも譲ってくれるとの返事だった。しかも、ペットショップを介さない卸値のようなものだから、驚くほど廉価で譲ってもらえるとのこと(弁慶を買った時の半額以下・・)なので、思わず即決してしまった・・。
 で、昨日引き取りに行って来た。


 これは家について車から外に出したところ、いきなりおしっこをしたときの写真だが、生後60日と言うだけあって思っていたよりも大きくなっていた。体重を測ったところ6㎏以上あったし、子犬用のドッグフードもものすごい勢いで食べた。
「さすが、秋田犬!!」
と感心してしまったが、足の太さは尋常ではない。これから先どんどん大きくなることだろう。
 だが、いくらなんでもこの寒い時期に弁慶の小屋に入れるわけにはいかない。しばらくは家の中で飼うつもりだが、家の中を勝手に歩き回られても困る。そこで、犬用の柵を買ってきて、その一角を寝場所にしてやった。

 
 
 動きが早くてうまくピントを合わせられなかったのは残念だが、まあまあかわいい顔をしている。白クマのように真っ白な毛が密生していて、ほわほわと純毛100%の暖かさが感じられる。昨日は最初興奮してあちこち動き回っていたが、夜はどっと疲れが出たのか、ずっと寝ていた・・。
 そうそう、名前は「太郎」とした。前日には、私が「武蔵」、娘が「源氏」、息子が「牛若」などと勝手な候補を出していたが、引き取りに行って初めてこの犬の顔を見た瞬間に、「太郎っぽい顔をしているな・・」と私が呟いたことから、そのまま「太郎」と決定した。インスピレーションでピピッと思いついたのだが、なかなか良い名前だと自負している。

  暖かくなるまでは家の中で育てようと思っているが、柵から飛び出ることができるようになったら、その時が引越しの時だとも思っている。
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