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拗音

 塾に「ななこ」とい名前の女の子がいる。面白い子なので私もついついふざけて「にゃにゃこ」と呼んだりしているが、先日ふと思ったことがあった。
「にゃにゃこの『にゃ』って音を使った言葉は日本語にはあまりないんじゃか」
もちろん「にゃーにゃー」という猫の鳴き声がすぐに頭に浮かんできたが、それは擬音語であって、別にして考えてもいいだろうから、とあれこれ頭を巡らしてみた。「おにゃんこ」というのも「にゃーにゃー」から派生した言葉だから除外するとして、他に何かないかとしばらく考えてみたが、一つも思いつかない。「にゃ」で始まる言葉はひょっとしたらないのかもしれない、と思い始めた頃、「ろうにゃくなんにょ=老若男女」という語を思いついた。おお、そう言えば、「にゃくおうじ=若王子」という場所も京都の哲学の小道の途中にあった、と思い出した。ならば、「若」を「にゃ」と読む以外に「にゃ」という音で始まる言葉はないのかもしれないと、広辞苑で確かめてみたところ、思った通りだった。
 なんだかちょっとした発見をしたような気持ちになった私は、「「にゃ」に代表されるような拗音で始まる言葉は日本語には少ないのでではないだろうか」
などという仮説を立ててみた。これを証明することはとても私の手には負えないが、いくつかの例を挙げてみることくらいならできる。早速、知恵を絞ってみた。
 まずは、拗音について。「拗」という漢字は「ねじれる」という意味であり、広辞苑によれば、拗音とは「日本語のア(a)・ウ(u)・オ(o)の母音に半母音(j)を子音または口蓋化した子音が先行する子音が先行する音節」のことであり、「「や」「ゆ」「よ」の仮名を他の仮名の下に添えて表し(現在は一般に小さく書く)一音節をなす」、具体的にいえば、
「きゃ」「きゅ」「きょ」
「しゃ」「しゅ」「しょ」
「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」
「にゃ」「にゅ」「にょ」
「ひゃ・びゃ・ぴゃ」「ひゅ・びゅ・ぴゅ」「ひょ・びょ・ぴょ」
「みゃ」「みゅ」「みょ」
「りゃ」「りゅ」「りょ」
がそれにあたる。
 
 では、これらの音節で始まる語を思い浮かべてみた。
「きゃ」=「きゃく(客)」「きゃら(伽羅)」「きゃくりょく(脚力)」
「きゅ」=「きゅうに(急に)」「きゅうしゅう(九州)」「きゅうきょく(究極)」
「きょ」=「きょう(今日)」「きょうりょく(協力・強力)」「きょういん(教員)」
「しゃ」=「しゃべる(喋る)」「しゃしん(写真)」「しゃいん(社員)」
「しゅ」=「しゅうい(周囲)」「しゅうじ(習字)」「しゅみ(趣味)」
「しょ」=「しょき(書記」「しょばつ(処罰)」「しょうめい(照明・証明)」
「ちゃ」=「ちゃいろ(茶色)」「ちゃくなん(嫡男)」
「ちゅ」=「ちゅうがくせい(中学生)」「ちゅうい(注意)」「ちゅうかい(仲介)」
「ちょ」=「ちょうし(調子)」「ちょうじょう(頂上)」「ちょうしん(長身)」
「にゅ」=「にゅうりょく(入力)」「にゅうじ(乳児)」「にゅうしょう(入賞)」
「にょ」=「にょう(尿)」「にょたい(女体)」「にょらい(如来)」
「ひゃ」=「ひゃくえん(百円)」
「びゃ」=「びゃくや(白夜)」
「ひゅ」=「ひゅうが(日向)」
「びゅ」=「びゅうろん(謬論)」
「ひょ」=「ひょうげん(表現)」「ひょうか(評価)」「ひょうしき(標識)」
「びょ」=「びょうき(病気)」「びょうしん(秒針)」「ひょっとこ」
「みゃ」=「みゃく(脈)」「みゃくはく(脈拍)」
「みょ」=「みょう(妙)」「みょうにち(明日)」「みょうじ(名字)」
「りゃ」=「りゃくしき(略式)」「りゃくだつ(掠奪)」
「りゅ」=「りゅうこう(流行)」「りゅうとうだび(竜頭蛇尾)」「りゅうがく(留学)」
「りょ」=「りょこう(旅行)」「りょうしん(両親・良心)」「りょうかい(了解)」


「ぴゃ」「ぴゅ」「ぴょ」で始まる語は最初からないと思ったので、考えもしなかったが、「みゅ」という音で始まる語がなのは意外だった。カタカナ語では「ミュージック」「ミュール」「ミュンヘン」などがすぐに思い浮かんできたが、日本語にはなさそうだ。広辞苑でも確認したので間違いないように思う。他にも「ひゅ」は「日向」しか思い浮かばなかったし、「ひゃ」にしても「百」で始まる語しかなかった。それは「若」で始まる語しかなった「ひゃ」と通じるところだが・・。
 果たしてこれで何が分かったと言うのだろう。調べるのには結構時間がかかったが、大して意味のあることでもなかったように思えてしまう・・。何かの参考になればいいのだが、無理だな、きっと・・。
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