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「リア傘ホルダー」

 日曜日に藤原竜也の舞台を見るために上京した妻が教えてくれた、ゾッとする話・・。

 妻を出迎えた息子の様子が少し変だったので、「どうしたの?」と訊ねたところ、「自転車で転んじゃって・・」と始めたそうだ。妻は、息子がまだ小学校低学年だった頃に、そろばん塾に自転車で通う途中、何かの拍子に思い切り両輪のブレーキをかけたところ、ブレーキが利きすぎて前のめりになってしまい、自転車もろとも転倒したことがあったのを思い出して、心臓が止まりそうなほど驚いた。その時は、かなりの外傷があったため、救急車で病院に運ばれたが、今回は数メートル投げ出されたにもかかわらず、目立った外傷はなかったようだ。「受け身をとったみたい・・」と自慢げに言ったそうだが、「何で転んだの?」と訊ねた妻への返事が、まさしく身の毛のよだつようなことだった。
 その日は天気がはっきりせず、念のために持って行った傘を、自転車のサドルの横から、後輪に向けて念のために斜めに挿していたそうだ。ところが、その傘がどういう加減か、一段と奥深くまで挿さってしまい、傘の先が後輪のスポークの間に突き刺さって後輪を強制停止させてしまったものだから、子供の頃と同じく急ブレーキがかかった状態になってしまって、前のめりになり、自転車から振り落とされてしまった。かなりの衝撃を受けたが、周りに人が集まって来て、「大丈夫!?」と声を掛けてくれたそうで、恥ずかしさも手伝って、「はい、大丈夫です」と、立ち上がってその場から去ったそうだが、さすがに自転車は後輪が動かなくなってしまい、手で引いて偶々近くにあった自転車屋に修理を頼んだそうだ。
 「大学に入ったときに買った自転車だから、買い換えたら」
と妻は言ったそうだが、
 「直るからいいよ」
と呑気な息子は同意しなかったそうだ・・。

 こんな話を聞いたら、さすがに私も血の気が引いた。転んだ場所が公園の中だったからよかったものの、車道を走っている最中だったら、車にひかれていたかもしれない。でも、だからと言って自転車に乗るな、とは言えない。息子にとっては、最寄りの駅まで行くためには欠かすことのできない交通手段だ。だからと言って、「気をつけろよ!」と言うだけでは、また同じ過ちを繰り返しそうだ。
 「傘を自転車に挿すホルダーみたいなものはないかな?」
 「ホームセンターに行けばあるかもね」
 「それより、ネットだろう。調べてみるよ」
とすぐに「自転車 後輪 傘ホルダー」で検索してみたところ、「サイクルパーツ【川住製作所】リア傘ホルダー」という物を見つけた。

 
 
 前輪に付けるタイプの物もあったが、事故報告もいくつかあって信頼できないが、この「リア傘ホルダー」なら、自転車への装着方法さえ間違えねば、信頼できるように思った。そこで、早速息子のところへ送付するよう注文した。

 これで、少しは安心できたが、果たして私よりも一段とpracticalではない息子だけに、上手く自転車に装着できるか、心配だ・・。
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