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大根の花

 車庫の裏手にある父の小さな畑は、冬中まったく手が入れられず、大根も人参も葱もすべて生えっぱなしの状態にほかっておかれた。父自体が外に出ようとせず、自室でラジオの株式を聴いているだけだったから、畑の作物のことなどほとんど気に掛けていなかったのだろう。それでも、作物は妻が畑から抜いては献立に役立てていたから、全てが無駄になったわけではない。
 が、それにも限界があって、葱には葱坊主、大根や人参には薹がたってしまって食べられなくなってしまった物も多かった。
「せっかくだから、自分で抜いて近所の人に分ければいいのに・・」
と妻は父の無気力さをブツブツ詰るが、暖かくなれば、またいつものように畑に足を向けるだろうと、私は思っていた。
 ところが、桜の季節が過ぎても、畑はほとんど放置されたまま。なんだか、荒れ地に近づいてきたが、よく見れば、堀り残された大根に花が咲いていた。

 

「大根の花だよ。可愛いね」
「そうだね・・。そう言えば、昔『だいこんの花』ってドラマがあったよな・・」
「森繁さんと竹脇無我・・」
「加藤治子も出てたよな、確か・・」
「森繁さんの亡くなった奥さん役」
「そうそう・・」
「何だったけ、いつも読まれた『だいこんの花』の詩」
「覚えているわけないだろ・・。もう随分前のドラマだぞ」

 そう言いながらも、思い出せないのは業腹なので、Wikipediaで調べてみた。

「『だいこんの花』(だいこんのはな)は日本のテレビドラマ。元艦長の親子を中心としたホームドラマ。シリーズ化され、1970年から1977年まで5部がNET(現・テレビ朝日)で放送されたVTR作品。主演は竹脇無我、森繁久彌は特別出演扱い。メインライターは最初松木ひろしで後に向田邦子」
 
 さらに詩は、

「人知れず 忘れられた茎に咲き
 人知れず こぼれ散り
 細かな白い だいこんの花
             久弥」

 へえ・・、まだ私が小学生だった頃に始まったドラマ・・。でも、ドラマの内容を何となく覚えているから不思議だ・・。

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