カヤックで漕ぎ渡った島の海岸は、台風の影響で流木やゴミ・植木鉢なんかも流れ着いていて、ちょっぴり残念な気がしました。
ところが、崖を伝って少し島の向こう側へと移動すると、そこには、ゴミひとつない美しい海岸が姿を現しました。
本来、砂浜だったというその場所は、台風で根こそぎ砂を持って行かれ、ゴツゴツした崖の海岸になっていました。
ガイドさんによれば、半年ほどすれば自然にまた元の砂浜に戻るようで、自然の力って本当にすごいなぁと思いました。
女の子たちは、ガイドさんに勧められ、崖の上からドボーン!と、救命胴衣を着けたままの飛び込みを始めました。
次々と勇敢に飛び込み、救命胴衣によりプカプカと気持ち良さそうに浮かんでいます。
飛び込む勇気のない私は、海面にそーっと足を伸ばし、トプンと海へと入っていきました。
海岸際はとっても浅く、これなら大丈夫そうだと息子を呼び寄せると、最初はしぶっていた息子も、手を繋ぎながら一緒に海の中を進んでいきました。
一歩二歩と進んでいくうちにいきなり深くなり、救命胴衣の浮力でぐ~んと体が持ち上がりました。何とも言えない快感です。
潮の流れもあってか、ぷかぷか浮かんでいると波に乗って大きく揺れ、息子が、「もういい、もういい」と言うので、すぐさま浅瀬に戻りました。
息子は、腰までない深さの場所で、座ったり寝転んだりして遊んでいました。
その後、崖の合間に小石と貝殻が留まっている場所があって、そこで息子と貝殻を拾い集めました。
夏休みの宿題に使えそうだと思いながら貝殻を集めていると、主人が息子をまた海の中へと連れ出していきました。
しばらくして、みんな海から上がり出したので、ぷかぷかと浮かんで遊んでいる主人と息子に、
「そろそろ終わりやで~」と、声をかけました。
なかなか上がってこない息子達。いつまで経ってもぷかぷか浮かんだままです。
「ママー、ママー!」と、息子が私を呼びました。
「そろそろ帰るから、戻っておいで~」と、手招きすると、
「ママー、戻られへ~ん!」と、叫んでいるではないですか!!
そう遠くない場所で二人は浮かんでいるのですが、こちらに戻ってくるというより、むしろ距離が遠くなっている気がします。
私は、慌ててガイドさんに、「先生、主人たちが流されているみたいなんです!」と助けを求めました。
ガイドさんを呼びに行った一瞬の間に、ぐんと二人の姿が小さくなっていました。
「お父さん、島の方へ! こっちじゃなく島の方へ!」
ガイドさんはそう叫びながら、崖をよじ登って、島の向こうへと消えて行きました。