息子を高齢者住宅に住む父の部屋に連れて行くと、決まって、
「じいじ、ベッドに寝て~」
と、父を電動式ベッドに寝かせて、リモコンを操作し、ベッドの高さを変えたり、体を起こさせたり、足を上げさせたりしながら、父に遊んでもらっていました。
また、リクライニングの椅子がくるくる回るのが珍しかったのか、父や私を座らせ、くるくる回して、私達が「やめてやめて~!」というのを面白がっていました。
父は、息子をとても可愛がってくれ、買い物に行く度におもちゃやお菓子を買って、息子に渡すのを楽しみにしてくれていました。
そんな父でしたが、「家に帰りたい」という思いが募り、そのことが頭から離れなくなり、イライラするようになってきました。
「いつまでこんなとこに閉じ込めとくんや!」
「家に帰らせてくれ・・・」
私としては、自宅よりもここで生活する方が安心なので、父がより快適に過ごせるようにと心を砕いてきたのですが、父には私の思いは通じませんでした。
それなら、なんとか父が自宅で生活できるように、高次脳機能障害が回復するようにと、本を読んだり、講演会に参加したり、インターネットで検索しながら情報を集めていました。
そして、たどり着いたのが、高次脳機能外来の「なやクリニック」でした。
それまで、いくつかの病院に父のリハビリをお願いしてみたのですが、回復期訓練を終え、また、病気の発症から時が経っていることもあり、リハビリをしてもこれ以上の回復は望めないと断られていました。
最初にかかった急性期病院には、大腸癌手術後の定期検査もあり、脳神経外科にも通い続けていたのですが、薬を処方してくれるだけで何のフォローも望めません。
病気はすでに回復し、障害はここで診るものではないというように感じられました。
そんな中で、すがるように「なやクリニック」を受診し、納谷先生に私の不安・父の不安を聞いていただくことが出来ました。
そして、神経心理学的検査によって、父の障害の実態を次のように明らかにしてくれました。
注意障害・・・集中が続かない。二つ以上のことを同時進行する時に誤りが生じやすくなっている。
記憶障害・・・逆行性健忘障害あり。日付や場所などの見当識は良好だが、新しく覚えることは難しい。また、記憶する際に、大筋は理解して、その場は覚えていられるのだが、何か作業が入ったり、出来事が起こると忘れてしまうことがある。
遂行機能障害・・・次々に切り替えていくこと・新しい問題に直面した時に解決すること・効率よく物事を進めることが良好。正答や規則を覚えておくことが難しいという記憶障害の影響、行動を修正する能力や衝動性の抑制が低下している可能性あり。
また、父の希望する自宅での生活を目指して、週1回、10時~4時まで、ここで「高次脳機能デイケア」に参加することになりました。
病院を転院し、これまで服薬していた薬もなやクリニックで処方してもらえるようになり、デイケアと合わせて、精神障害者自立支援の公費負担が受けられるようになりました。
それによって、父の場合、月5000円の負担で済むようになりました。
父の薬代はかなりの負担だったため、自立支援のことをもっと早くに知ることが出来れば・・・と思いました。
さらに、「脳損傷協会」という家族会に参加するようになり、同じ悩みで苦しむ人の話を聞いたり、父以外の当事者の思いにも触れることが出来ました。
多くの人達に支えられながら、父のリハビリが進んでいったのでした。
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