城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

熱き人々その2 21.12.3

2021-12-03 19:41:17 | 面白い本はないか
 最近のニュースでこんなのがあった。辺野古沖で進む埋め立て工事について、地盤が軟弱なため設計変更を沖縄県に求めているが、県は認めないとしている。再び振り出しに戻ったような話である。随分前から軟弱地盤であることは分かっていたはずなのに、工事はどんどん進み、今頃になって設計変更だときた。莫大な費用をかけて強行(ひよっとしたら未完成のまま終わる可能性だってある)するだけの価値があるのか疑問符がつく。さらに今度の超大型の補正予算により、防衛費は初の6兆円を超えるときた。この中には効果不明なミサイル防衛のための費用が含まれる。北朝鮮から飛んでくるミサイルを撃ち落とすのだそうだが、本当に打ち落とすことができるのだろうか。中国が開発を進めているマッハ5で飛んでくるミサイルは撃ち落とすことができない。アメリカの言うことなら何でも聞く日本政府は、効果もないような装備を買わされているように思える。現代版の軍拡競争を中国、北朝鮮、韓国、台湾等が繰り広げている構図。一体誰が最も得をするのだろうか。アメリカは軍産複合が強い国であるし、彼らにとっては軍事的緊張があることは望ましいのだ。東アジアはまさに彼らの金城湯池(稼ぎ所)なのだ。しかし、この中では日本は最も分が悪い。なにせ借金大国だし、経済成長していないので返済することも難しい。

 おじさんが高校生だった頃、ある歴史の会に出たことがある。その会では参加者は正座し、日本の戦後の歴史をめぐる理解不能な高尚な議論(どちらかというと国粋主義あるいは皇国主義とでも今なら分類するが)が行われていた。あるとき不意におじさんに発言の順番が回ってきた。当時のおじさんの戦後の歴史認識と言えば、戦前は軍国主義に支配され、敗戦により日本に民主主義や平和主義がもたらされたという中学校で習った程度の知識しかなかったので、それについて発言した。それに対して、おそらく周囲の人たちはあまりにも何も知らないと思ったに違いないが、皆さん大人でそれを注意することはなかった(とにかくこの正座に閉口して二度とこの会へ出ることはなかった)。高校では日本史を学んだが、授業は明治時代で終わりだった。大学時代にはベトナム戦争に対する反対や沖縄返還運動の中でデモなども参加したのだが、基本はノンポリであった。ベトナム戦争と沖縄の関係もっと以前なら朝鮮戦争との関係についても注意を払うことなどなかった。1990年代頃までは日本経済が好調であり、日米構造協議など難しい問題はあったが、おじさんも含めてまだ自信と余裕があり、日本がアメリカに従属していると感じることはなかった。日本経済が勢いを失いつつあった2000年前後の頃から戦後の日米関係について沢山の本を読み、敗戦から続く従属体制について少しばかりのい知識を得た。

 やっとここで今日の熱き人を登場させる。その人は2013年に「永続敗戦論」を書いた白井聡。もちろん戦後の欺瞞、問題を指摘する多くの知識人がいる。このブログで取り上げた加藤典洋(21.3.2「日本の戦後を考える」)、佐伯啓思、西部邁(21.8.29「日本のいびつな保守主義」)などもそうである。永続敗戦論とは、アジア太平洋戦争において膨大な犠牲者を出したうえに負け戦に終わったことの責任をとらないばかりか、直近の敵国に取り入り、この敵国の軍隊が駐留することを進んで促してまで自己保身を図った人物とそれの取り巻きとなることで権力を維持してきた。そして敗戦を終戦と言い換えてきた人たち。白井は「永続敗戦論」のあとがきでこう言っている。「元来政治哲学や社会思想を専門とする研究者である私が、本書のような時事的政論を主題とする書物をかく日が来るとは、考えたこともなかった。」「本書はこれまで何度も指摘されてきた、対内的にも対外的にも戦争責任を極めて不十分にしか問うていないという戦後日本の問題をあらためて指摘したにすぎない。」ここでガンジーの言葉が引用されている。「あなたのすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためでなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。」

 最近出た「主権者のいない国」では、安倍政権について厳しく断罪している。長期安定政権にもかかわらず、ろくな成果を出せず、ほとんどの政策が失敗に終わった。失敗を続けているにもかかわらず、それが成功しているかのような外観を無理矢理作り出し、嘘の上に嘘を重ねている。「公正」や「正義」といった社会の健全性を保つために不可欠な理念をズタズタにした。そしてそれに荷担したメディアの責任。民意に追い込まれて退陣したはずが、体調不良によるものとされてしまった。

※少し箸休めをしよう
 
  数々の政策、どれが実現しただろうか 次々と目先を変えて国民を騙す手法は見事
 
  リベラル政党の認識は高齢者と若者で大きく異なる 原典 読売新聞・早稲田大学共同世論調査(2017年)
  「日本社会は保守化・右傾化しているのでなく、革新=リベラルが絶望的なまでに退潮しているということです。革新政党を自認する共産党は、若者からは「保守政党」と見なされ、それ以外の生まれては消えていく野党も、保守かリ   ベラルかというイデオロギー対立以前に、そもそも政治勢力として扱われていません。」以上橘玲「事実vs本能ー目を背けたいファクトにも理由がある」から引用。「保守主義」とは理性に基づいた無条件の進歩を疑う、伝統を重視し、漸進的な改革を主張する。自民党は左翼ばりに改革ばかりを主張する。

引用を続ける。戦後日本は「敗戦を否認」してきたのであり、これを可能にした最大の要素こそ戦後の「親米」の名を借りた対米従属である。アメリカの最重要パートナーに収ることで、比較的速やかな復興をはじめとして、戦後日本は敗戦の意味を極小化することができたことはには幸福であった。その幸福の代償が政治と社会のゆがみとして全面的に露呈してきている。統治エリートの領域では世界に類を見ないような卑小さを伴う自己目的化した対米従属として現れている。冷戦時代の終わりにより対米従属の合理性は失われたはずなのだが、ポスト冷戦期において、さらに従属姿勢はより露骨になってきた。

 中国、北朝鮮そして同盟国であるはずの韓国という「良い関係」を結ぶことができない、あるいは良い関係作りに失敗している国に囲まれて、この過度の対米従属(西側の国で対米従属していない国はないとの主張もあるが、卑小な従属はいけない)から抜け出ることは容易ではない。でもガンジーの言葉に我々も勇気づけられていこうではないか。 

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