日本を考える<夏>はまだ終らない☆総選挙海外報道シリーズの最終エントリー記事として、前稿(↓)に引き続き、2009年8月の総選挙、<8・30>を取り上げた海外報道を紹介します。この一連の海外報道紹介の趣旨に関してはWashington Post総括記事の導入部を参照いただければと思います。
・総選挙海外報道-Washington Post総括記事(上)~(下)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d2225547ab4ba0e1de1db5e30a823f9b
・総選挙海外報道-New York Times 総括記事(上)~(下)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/7cf40fda955e2c51eede4a3d2615a721
本稿で紹介した記事の出典は Financial Times ”New era for Japan as DPJ triumphs”「民主党の圧勝にともない新たな時代へ移行する日本」(August 30, 2009)です。
Financial Times だからといってここに紹介した記事は特に経済にフォーカスしたものではありません。寧ろ、今回の<8・30>で変容した日本の政党政治の行方やなぜ日本の戦後を一色に染め上げてきた自民党支配体制が崩壊したのかがこの記事のライトモチーフではないかと思います。「鉄の三角形」に関する言及や自民党の菅義偉氏の「自民党は賞味期限切れだった」という発言の引用などにそれが表れているのではないでしょうか。
しかし、こう考えれば、所謂「新自由主義」の政策なるものを推進し格差を拡大させ地方を衰退させたとされる小泉政権の批判を掲げ、<8・30>で地滑り的な大勝をものにした民主党。その民主党の持論中の持論が、「鉄の三角形」という言葉に収斂する「日本的な官僚支配の打破」でもあることは、大変奇妙なことではないかと思います。民主党が批判する「新自由主義」と「日本的な官僚支配」がいかなる関係にあるのかが、これが見た目だけのパラドックスなのか致命的な自己撞着なのかを分かつ<経済政策―社会思想的な分水嶺>なのでしょうが、この点に関しては今後とも観察と思索を続けて行くつもりです。
而して、いずれにせよ、「賞味期限切れ食品」と「毒入り食品」(しかも、支那政府推奨!)との究極の争いになった今回の<8・30>は前者の惨敗に終った。その理由はいろいろ考えられるでしょうが、私は「政党の呈をなしていない民主党」に比べても「組織の呈をなしていない自民党」に対する有権者の不信、就中、自民党固定支持層の間での<幻滅=呆れかえり>がその直接の原因、少なくとも、決定打となる最終的な致命傷(the last straw that breaks the camel's back:ラクダの背中を折ってしまう最後の1本のワラ)ではなかったかと考えています。
蓋し、『孟子』梁恵王上にいわゆる「上下交々征利、而国危矣」(上下交々利をとれば国危うし:上の者も下の者も、皆が自分の利益・出世・保身だけを考えているようではその国の存立も危うくなる)状態だった自民党。自分たちで(今回の総選挙を想定して)選んだ総理総裁の足を土壇場で引っ張ろうとする「利を征する上下の輩」が群れをなした今年の5月連休明けから衆議院が解散された7月21日までの状況を反芻するに自民党の惨敗の原因を私は「組織の呈をなしていない自民党」にも求めざるを得ないのです。
もし、そう考えることも許されるとするならば、再生自民党-新生自民党にとって焦眉の急は、自民党が「組織の呈を取り戻す」ことでしょう。ならば、憲法的にも政治的にも「衆議院の解散→総選挙→特別国会での首班指名」が不可分一連の事項である限り、近々行なわれる鳩山首相を選出する衆議院・参議院の総会で「麻生総理」ではなく「白票」を投じようなどとしている自民党は、その再出発の初手から、肝心の組織論的に<北斗の拳>ではないか。と、そう私は考えています。
畢竟、『論語』に曰く、「人の過つや、各々その党においてす、過ちを観ればここに仁を知る」「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」、と。要は、今回の自民党の「組織の呈をなくしたあり様」「そのあり様をご丁寧に自らが役者兼広報となって全国のお茶の間に発信した反麻生の議員諸氏」の存在も(尚、反麻生の「議員総会要求署名派」衆議院議員121名の中で<8・30>で当選した議員は他党からの当選者も含め40名であり、自民前職全体の当選率を流石に大幅に下回っています。)、「自民党が陥っている制度疲労-賞味期限切れ」の現象のたまものであり、自民党の現状から不可避的に導きだされたものなのかもしれない。ある意味、このマルクスの唯物史観の地平を包摂しているとも言える孔子の言葉を想起するに私にはそう思えてきます。
ならば、<8・30>後の日本の政治が、好むと好まざるとに関わらず、ここに紹介したFinancial Times の記事にいう「成果の達成度合や成果が達成されるまでの時間に関してもそう鷹揚とは言えない有権者の支持を有力な二つの政党が奪い合う二大政党制」の時代に入ったのがほぼ確実な現在、自民党はこのような大衆民主主義に拮抗できる近代政党に脱皮しなければならず、自民党に集う政治家も各々の「利を征る」小人ではなく、「和して同じない」君子に、しかも、政策の専門性と政局を見通す眼力を備えた練達の君子に、彼の有名な『易経』の言葉を借りれば、文字通り「君子豹変」しなければならない。そして、これは綺麗事ではなく<8・30>以降の日本の政治文化においては、政党のメンバーとしてその政党の組織原則を遵守できない者は政治の市場から退場を求められ入場を拒まれるのでしょうから、すなわち、<君子>になれなければ<利をとる>ことも原理的に不可能になるのですから、「君子豹変」は<淘汰圧>を帯びることになるだろう。と、そう私は考えています。
蓋し、惨敗は喫しなかったものの、今回、反麻生の動きがなくとも「賞味期限切れ」の自民党が下野した可能性は低くないのかもしれない。正直、そう思わないではないです。けれど、自民党が近代政党に再生して、かつ、自民党の議員と候補者が君子豹変するのであれば、早ければ1年後、遅くとも4年後に政権を奪取すること、而して、保守改革派の二大政党による盤石な政治のプラットフォームの確立、すなわち、日本政治の<千年王国>の開闢を宣言することはむしろ必然ではなかろうかと思います。その時、世界の報道機関がどのような記事を日本から配信するか、今から私は楽しみです。
人之過也、各於其党、観過斯知仁矣(論語・里仁編)
君子和而不同、小人同而不和(論語・子路編)
君子豹変、小人革面(易経)
尚、民主党政権の危険性とその政策の荒唐無稽さ、および、保守改革派の今後の進むべき方途に関する私の基本的な考えについては本記事末尾にURLを記した拙稿をご一読いただければ嬉しいです。また、英文法について疑問点などあればこちら(↓)をご参照ください。
・『再出発の英文法』目次
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/4c90b691d5e0e53d8cb87f7803a437ce
Japan’s centre-left opposition Democratic party won a crushing victory over the long-ruling conservative Liberal Democrats on Sunday, redrawing the political landscape of the world’s second largest economy.
The result – the first time since the LDP’s founding in 1955 that any other party has won an electoral majority in the Diet’s lower house – gave the DPJ a mandate to pursue its campaign policies of taming the nation’s powerful bureaucrats and rolling out generous child allowances and welfare payments.
The DPJ will also take over the daunting task of reviving the economy which, as figures released on Monday showed, remains extremely fragile
Japan’s Nikkei 225 stock average initially rose as much as 1.5 per cent to 10,767, its highest level in over 10 months, but the market gave up the early gains and slipped 0.4 per cent to 10,497.19 by midday. The yen strengthened to 92.93 per dollar from 93.60 and climbed to 132.90 per euro from 133.85..
日曜日【8月30日】、日本の中道左派の野党、民主党が長年政権与党の座を占めてきた保守の自由民主党に対して圧勝するに及び、この世界第二位の経済大国の政治の風景が塗り変えられた。
この結果、というのも実際、1955年の自民党の結成以来【両院制を採用する】国会の衆議院の方で他の政党が自民党を上回る議席を得たのは始めてのことなのだけれど、この結果により民主党は日本の強大な官僚機構を抑制し、そして太っ腹な子供手当や福祉関連の支出を導入するとしていたその選挙公約を実行するについて有権者からの合意を取り付けたことになる。
更に、民主党は経済回復の実現という大変困難な使命をも引き継ぐことになる。日本の経済の状況は、月曜日【8月31日】に公表された数値によれば青息吐息も極まった状態が続いているのだけれども。
【総選挙翌日の8月31日月曜日】日本の【代表的な経済指標である】Nikkei225平均株価指数は、最初、1.5%上昇して10,767とここ10ヵ月間の最高値の水準に達したが、市場の好感は続かず、正午には0.4%減の10,497.19にまで下降した。円は上昇し前日の1ドル93円60銭から92円93銭に、対ユーロに関しても1ユーロ133円85銭から132円90銭まで円高が進んだ。
<続く>
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