【読解躓きの石】
第2センテンスには日本人にとっての躓きの石となる表現が幾つかあったのではないでしょうか。
Twenty years ago the teams met in the tournament in China PR, with the Scandinavians running out 8-0 winners,but there was to be no such repeat in Frankfurt as the Nadeshiko continued their 15-year unbeaten run against their opponents.
(20年前に支那で行なわれたサッカー女子ワールドカップで両チームは対戦しました。その時には、スカンジナビア勢が8-0で押し切ったものの、なでしこはここ15年間スウェーデンに負けていないこともあって、フランクフルトで北京の再現をという訳にもなかなかそう簡単にはいかない状況だったのです)
ポイントは、まず、with+名詞+(Vp-ing/V-ppまたは形容詞)の構文
が付帯状況を表すこと。例えば、
Don't speak with your mouth full.
(口を一杯にしながら/口を一杯にした状態で、話しちゃ駄目ですよ)
似たような構文が第3センテンスにもありましたね。これです。
Japan also made one change, with Nahomi Kawasumi replacing Yuki Nagasato.
(日本もまた一点だけ変更して、永里優季の代わりに川澄奈穂美を出場させた)
ただし、replace は、通常、下の構文で使われる動詞。
・主語 replace A with B.
(主語が A を止めて、A の代わりに B を用いる)
よって、この第3センテンスの事例は単なる分詞構文の語順変化と考えられます。
ただし、その分詞構文の意味もまた付帯状況の説明と言えましょうから、ここでは、
意味の点ではwith+名詞+(Vp-ing/V-ppまたは形容詞)と差はありません。
ちなみに、正規の語順は以下の通り、
Japan also made one change, replacing Yuki Nagasato with Nahomi Kawasumi.
尚、毎回注意を喚起していますが、ハイフンでつながれた「数詞+名詞」が形容詞句
になる場合、ハイフンの後ろの名詞は必ず単数形になります。これでも、一応、
TOEICの頻出論点ですから必ず覚えましょう。
their 15-year unbeaten run(15年間負けていないという彼等の実績)
The 25-year-old forward(その25歳のフォワードの選手)
次の躓きの石。下から二段目、この her って誰なんでしょう? 分かりましたか?
Lindahl came out to deal with a long ball which seemed destined to reach Kozue Ando, but her clearance fell straight to Kawasumi.
(Lindahlは、安藤梢に渡りかねないロングボールを処理するために前に出た。しかし、Lindahl がクリアしたボールは真っ直ぐ川澄のいる所に落ちたのだ)
この her は意味から見ても Lindahl を受けているとしか思えないですよね。
では、テクスト下から四段目の次のセンテンスの she はどうでしょうか。
Predictably, Miyama stepped up to take the free-kick, which almost caught Lindahl off-guard before she recovered well to push the ball around her right-hand post.
(大方の予想通り、宮間あやがフリーキックを蹴るべく進み出てきた。そして、宮間の放ったフリーキックはLindahlがほとんど予想していない意表をつくものであり、あやうく、彼女は右手のゴールポストの脇にボールをはじき出してことなきを得た)
要は、こちらも she は Lindahl を受ける代名詞ですよね。意味的には。
はい、私は何が言いたいのか。はい、英語では、代名詞、就中、人称代名詞が受ける名詞は原則次のような、ある程度、相矛盾することも少なくないルールで決まっているということです。
・性と数が一致する直近の名詞
・直前のセンテンスや節と(主語には主語、補語には補語、目的語には目的語というように)
文法的な役割が同じもの
よって、英語の代名詞が指し示している名詞を発見する Tips は、
・直前のセンテンスや節と文法的な役割が同じ、直近の性と数が一致する名詞
をさがしてみて、それでも適当な候補がない場合に始めて、
一般的な「性と数が一致する直近の名詞」を虱潰しに当たってみる。
この戦術が賢いのです。この Tips が身につくだけで、英文の読解に関しては、
スピードも精度も自分で体感できるくらい向上すること請け合いです。
ということで、後者の例文では、「before she recovered・・」に対応する構造が前節には
含まれていませんので、単純に「性と数が一致する直近の名詞=Lindahl」が正解。
そして、前者の例文では、等位接続詞の but がつなぐ両節は文法的にもパラレルですから、
ここは「主語には主語」の理の応用で「主語であり、かつ、性と数が一致する直近の名詞」
を調べて、これまた Lindahl が正解になるのです。
このコーナーの最後の話題です。最終段落の冒頭の「比率」(?)表現は重要。
これです。
With a shots on goal ratio of 11 to one in favour of Japan
(ゴールの枠内に向けて放たれたシュートの比は、11対1で日本が優勢な状態である)
一見、明らかに複数形の「shots」に不定冠詞がついていることが異様ですよね。
自ら退陣表明したくせに数ヶ月も居座る総理大臣ほどではないにしても、確かに異様。
はい、ここは、「a「shots on goal」ratio」と入れ子構造で考えるべきなのです。
そして、問題は「ratio of 11 to one」の表現。GMAT や GRE そして SAT の受験者は
必修ですが、
・ratio of A to B = A ÷B = A/B
となります。またまた何を言いたいのか、ですって? 要は、
・ratio of 11 to 1
・ratio of 1 to 11
の両者は全くの別物ということです(実際、前者は11、後者は約0.0091)。
この表現もこの機会に是非覚えておいてください。
と、毎回どの英文もこのように四角四面に文法的に理解していては時間も足らず、身体ももちませんが、きちんと正確に英文が読めるようになるためには、逆に、二日に1回1センテンスずつでも英文法にとことんこだわって読んでみることが有効だと思います。
蓋し、英文法と早くおさらばするためにある時期は英文法に鬼のようにこだわること。
これが、急がばまわれ式の英語学習の心得なの、鴨。
英語頑張ってください。
Slow and steady, shall we?
б(≧◇≦)ノ ・・・英語は楽しい!
尚、英文法の事項に関して疑問を感じられた場合にはこちらを参照してください。
そして、本ブログ記事で使う準動詞用の記号ももう一度掲げておきますね。
◎準動詞のKABU式表記
・原形不定詞:ba-V
・to不定詞:to-V
・動名詞:V-ing(g)またはVg-ing
・現在分詞:V-ing(p)またはVp-ing
・過去分詞:V-pp
・『再出発の英文法』目次
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/4c90b691d5e0e53d8cb87f7803a437ce
【和訳】
日本スウェーデンを退け初の決勝進出
サッカー女子ワールドカップでの日本の決勝進出が決まった。日本にとって決勝戦を戦うのは初めての経験になるけれども、今回の2011年ドイツ大会で今まで一度も負けることなく勝ち上がってきたスウェーデンを3-1で降しての堂々の決勝進出である。
20年前の【1991年女子ワールドカップ】中国大会でこの両チームは干戈を交えたことがある。その時にはこの北欧勢が8-0の大差で勝利を収めたものの、<なでしこ>はと言えば、スウェーデンにここ15年間負けていないということもあり、フランクフルトで20年前の再現が起きる可能性は元来そう大きいものではなかった。
スウェーデンは日本戦の試合開始直前に痛手をこうむってもいた。すなわち、【日本の民主党政権の首相達とは全然異なり】指導力には定評のあるCaroline Seger主将がふくらはぎを痛めたために先発メンバーから外れたのだ。26歳のこの主将はスウェーデンチームの昨夜のトレーニングには参加していなかったものの、日本戦に臨むべく行なっていた準備運動の最中に更に怪我を悪化させたのである。而して、急遽、Orebroチーム所属のMarie a Hammarstromが先発に起用された。他方、日本もまた一組だけメンバーを変更して、永里優季の代わりに川澄奈穂美を先発で出場させた。
両雄が激突する舞台となったそのサッカー女子ワールドカップの競技場は、試合中に起こることはどんなことでもけっして見逃すまいと心が前のめりになった45,434人もの大観衆で埋め尽くされた。(中略)而して、最初に歓喜の叫びをあげたのはスウェーデン応援団である。それは試合開始10分後のこと。澤穂希のミスパスを見逃してなるものかと、こうして棚ボタで手にしたボールをOqvistが岩清水梓を抜き去りつつ力強く、かつ、素早く運んでシュートを放つ。ボールは熊谷紗希に触れるか触れないかの塩梅でコースを微妙に変化させ、結局、海堀あゆみの頭上を越えてゴールネットを揺らしたのだ。
スウェーデンの攻撃陣は二点目を奪うべく幾つか工夫を凝らす。しかし、スウェーデンの攻撃陣には酷なことだったけれども、彼女達のこの押せ押せムードは悪い方に反転した。大野忍がピッチ中央を切り裂いて前進。その大野から左サイドの宮間あやにボールは渡り、宮間はペナルティーエリア内にクロスを入れる。そして、Oqvistの激しいマークを掻い潜った、川澄の練達の居合い抜きのような、しかし、あくまでも柔らかいタッチによって蝶の様に舞い上がったボールはHedvig Lindahlの横をすり抜けゴールネットに着地したのだから。
両雄の攻防が交互にしばらく繰り返された後、試合の均衡を破るチャンスを次に掴んだのは日本だった。川澄に対するCharlotte Rohlinのファールによって日本はペナルティーエリアのすぐ外側の位置でフリーキックを得たのだ。大方の予想通り、千両役者・宮間がここで登場。而して、宮間の放ったフリーキックはLindahlの意表をつくものであり、右手のゴールポストの脇にLindahlはなんとかボールをはじき出してことなきを得た。(中略)
後半は打って変わって激しい展開の中で始まった。しかし、味方のパスが地面に着くか着かないかのタイミングで大野が蹴り上げたボールがクロスバーをかする場面等々、試合の主導権はほぼこのアジアのチームに移ったと思われる。実際、この時間帯は<なでしこジャパン>がほぼゲームを支配していた。(中略)
【澤穂希が後半15分に得点した】4分後、優勢の日本はスウェーデンとの得点差を倍に拡げる。それは、ロングボールが安藤梢に渡りかねない危機を察知したLindahlがそのロングボールを処理するべくゴールを離れ前に出た時に起こった。Lindahl がクリアしたボールが真っ直ぐ川澄に渡り、川澄は35ヤード【約32メートル】のロングシュートを放ったのだ。自分が宙に舞い上がらせた<作品>が、スウェーデンのゴールキーパーと選手達の遥か頭上を自由落下の美しい放物線を描きながらゴールネットに向かい羽毛のようにゆっくりと舞い落ちる場面を見ている川澄の表情は、25歳の凛としたフォワードのそれというよりもむしろ日本人ファンのように喜びで輝いていた。
ゴール枠内に入ったシュートの数では日本の11対1と劣勢で推移していたこともあり、スウェーデンのThomas Dennerby監督は、形勢をなんとか挽回すべくLinda Forsberg、Marie Hammarstrom および Oqvistのそれぞれ代えてJessica Landstrom、Sofia JakobssonおよびAntonia Goranssonを投入する【この試合のシュート数の比は最終的に14対4になりました】。しかし、スウェーデンは地域的にはピッチの広い範囲を支配できていたものの、疲れを知らない子供のように運動量がさして衰えず、また、【日本の民主党政権の閣僚や幹部とは正反対で】自分がやるべき任務を各自が黙々と誠実に果たす日本の守備陣に急所を押さえられては、スウェーデンの反撃のチャンスは数えるほどしかなく、そのチャンスも厳密に言えばチャンスとはとても呼べないようなものだった。(後略)
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