英語と書評 de 海馬之玄関

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句動詞の落とし穴から見える英文法

2005年07月12日 21時50分48秒 | 英語の話題

 

昔懐かしの『TOEIC friends』でTOEIC模擬問題をチェックしていて「これ面白い、授業中の小話に使える!」と思ったセンテンスを見つけました。与えられた写真を最も的確に描写したセンテンスを聞き取る写真描写問題(パート1)にでてきたもの。現在の『TOEIC Testプラス・マガジン』(株式会社リント発行)の前身『TOEIC friends』の「休刊前」最終号:2004年3月号です。その問題は、屋外で椅子に座った女性が小さな丸テーブルの上で書き物している写真を題材にしたもの。「面白い」と思ったセンテンスはこんな感じです(著作権の問題があるので一部書き換えました)、

A woman is writing on the chair.


どこが面白いの、ですって? 「こんなん何も面白くないよ!」と感じる方には以下の記述は無意味というか私からは<糠に釘>でしょうか。しかし、ひっかけの選択肢(トラップ)として出題者はこのセンテンスを採用したと思います。実際、この不正解のセンテンスを聞いて<正解>にマークしてしまう方は少なくない。今の持ち点がTOEIC600点前後でそいでもって730点を目指すクラスに通われている方々の中でも少なくないと思います(実際、これの類題で25%以上の方が「ひっかかった」こともあります)。

「こんなん面白くなんかない」と感じる方にとっては間違いようがない問題。ケアレスミス以外でどうしたら落とせるわけ? 類題たって、こんな明らかな間違いの選択肢のどこに着目すれば類題が作れるわけ? と、全然ピントこない方もおられるでしょう。ピントこないから「面白くない」わけですからね。でも、びっくりしないでください。

このセンテンスを<正解>と判断された方にとって、
A woman is writing on the chair.
はおそらく「女性が椅子に座りながら書き物をしている」という意味に感じられたのです。

もちろん、”A woman is writing on the chair.”
の意味は「女性が椅子に(何か文字を)書いている」ですよね。そして、「女性が椅子に座りながら書き物をしている」と英語でいいたいのなら、多分、
A woman is writing while sitting on a chair.
とかになるでしょう。

”write on something”を「~(の表面)に書きつける」や ”write with something”を「~を(筆記用具に)使って書く」という句動詞(群動詞・動詞句)が身についていない方にとって、

A woman is writing on the chair.は「A woman is writing」と「on the chair」の間で切断されかねないのです。これはもちろん<慣れという名の英語力>の問題ではあります。実際、TOEIC470点前後の方の中でも、
“A woman is looking at the desk.”を「女性が席に掛けながら(何かを)見ている」と勘違いする方は極めて少ないでしょうし、この正解率の違いは、”write on”と”look at”に慣れ親しんでいる方の比率の差に収束するでしょうから。しかし、私はこの(あくまでも私が勝手に想定したにすぎませんが)正解率の差に、日本人が陥る英文法の落とし穴があるように思うのです。

句動詞に関連して日本人が陥る英文法の落とし穴とは何か? 結論いきます。

日本人は品詞としての動詞とセンテンスの要素としての述語動詞を混同しがちである

センテンスの中で述語動詞(S+V+・・・の「V」です!)は品詞としての動詞だけでなく、動詞+前置詞とかの句動詞の場合もある。ドイツ語では(実際のセンテンスの要素として採用される前の、まだ辞書に格納されている)品詞としての動詞の段階でも前置詞+動詞とかの形態が固定化した「分離動詞」とか「非分離の前綴りを持った動詞」とかの一種の句動詞が辞書の中でも一人前の(品詞としての)動詞の扱いを受けていますが、それに対して英語では(「英語教育では」でしょうか?)まだ、そこまで品詞としての動詞と述語動詞の区別が意識されていない気がします

英語教育ではせいぜい、「~を(どこかに送ってあげるために)ひろう」の”pick up~”は目的語が代名詞の場合には必ず、”pick ~ up”の形になりますというくらいしか――逆に言えば、この「up」くんは前置詞ではなくて副詞なのですよというくらいしか――説明されていないように思います。最近、ある句動詞が(それを構成する)動詞と前置詞等がサンドイッチよろしく間に目的語を挟むのかどうかを「分離可能」「分離不可能」とコメントする辞書も増えてきましたが、品詞としての動詞と述語動詞の区別という英文法理解の根本のところでどうもスッキリとしていないように私は感じる。


これは文型論と品詞論をどう関連づけて教えるかという英文法教育の大きな問題でしょうし、英語らしい英語を使えるようになるための<必修科目>:句動詞や動詞+副詞を自由に自然に使えるためのコツに関わるプラクティカルな英語教育の課題とも関連すると思います。大きな問題ではあるでしょうが、皆さんはいかがお考えでしょうか。

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・talking on the phone から考えるcollocation の奥深さ
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額田王

 

 

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